学校教科書に採用された、唯一の木の話です。 情報提供者 小原二郎先生 |
バイオリソは、古くなるほど音がさえるというが、それもこの材質の変化で説明できる。用材の剛性が増すとともに、音色がよくなるのである。したがって、音色がよくなるのはある時期までで、その後はしだいに元に戻っていくだろうことも想像に難くない。
さる有名なバイオリン作りの名人は、ヒノキは世界に誇る優秀な材だから、それで名器を作ろうと苦心していた。私はそのお手伝いをして、バイオリンの用材を人工的に老化させてみたことがある。まず木曾ヒノキの同じ部分から四枚の板を取り、一つを残し、それぞれ五十年、百年、二百年を目標に老化の処理(3)をした。それを使ってバイオリンを作り試してみたところ、古いものほど音色がよく、二百年処理のものがいちはん優れていることが分かった。
ところでその名人によると、ヒノキで作ったバイオリンは、どうしても和風の響きがするというのである。もともとバイオリソは、トウヒ(4)とカエデ(5)を組み合わせてできたものである。使用する樹種も形も、十六世紀後半に定まり、それ以後、近代科学の改良案もほとんど寄せ付けないほどに完成した、手工芸の結晶である。ほかの樹種に置き換えるのが難しいことはよく分かる。だが、ヒノキのバイオリソは和風の響きがするというのはおもしろい。
ところでその名人によると、ヒノキで作ったバイオリンは、どうしても和風の響きがするというのである。もともとバイオリソは、トウヒ(4)とカエデ(5)を組み合わせてできたものである。使用する樹種も形も、十六世紀後半に定まり、それ以後、近代科学の改良案もほとんど寄せ付けないほどに完成した、手工芸の結晶である。ほかの樹種に置き換えるのが難しいことはよく分かる。だが、ヒノキのバイオリソは和風の響きがするというのはおもしろい。
【学習の手引き】
1.「本文は大きく三つの段落に分けられている。それぞれの段落ごとに、筆者が述べていることを整理してみょう。
2、筆者は「木の魅力|」とはいったいどのようなものだと述べているのか、一で整理したことをもとにして考えてみょう。
3、「二十世紀は機械文明の時代だが二十一世紀は生物文明に移る。」という意見について、各自の考えをまとめ、話し合ってみよう。