最近住宅産業界で話題を集めているのは、「健康住宅」である。
それは新築の家に引越したら、目がチカチカしたり、新建材や塗料、接着剤の匂いで不快な感じになり、ついに体調を崩したりするという話である。
つまり家そのものが病気の原因になるというので「シックハウス症候群」と呼ばれている。
これについてはたびたび報道されているので、すでにご承知の通りである。
シックハウスの意味は病気の家という事だが、これは一九七九年にデンマークの学会で、シックビルという題名で論文が発表され、建物に使われた材料から揮発する化学物質を吸い込むことで、住む人の健康を害する恐れがあるという警告であった。
わが国でこれが話題になり始めたのは二年ほど前のことである。
それ以来急速に関心が持たれるようになり、今では雑誌でも新聞でも、これが載っていない号はないほどに、広く話題の対象になっている。
さる専門の医学者によると、十人に一人の割合でこの新築病に悩まされているとのことだから、これだけ強い関心が持たれるのも当然ともいえよう。
考えてみると私たちの住む家が、農薬と同じ成分の化学物質で汚染されているとしたら、これはたいへんなことである。
苦労して無農薬、低農薬食品を手に入れながら、農薬の充満した家で暮らすとしたら笑い話では済まされない。
大気汚染や農薬の汚染は以前から大きな話題になっていたのに、一番身近で一番長い時間を過 ごす家の中の汚染が、これまで話題にならなかったのは手落ちであった。
本来ならもっと早い時期に、住宅業界なり、インテリア業界の中から、こうした弊害について警告が出されて然るべきで
あった。
それにもかかわらず今日に至って問題になったことは、怠慢のそしりを受けても止むを得ない一面がある。
室内空気汚染が
話題になり始めてから、私は遅ればせながら反省をこめて「インテリア湯の華論」なる拙文を書いた。
その論旨は次のようなもの
である。