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健康住宅

過保護の弊害

身体障害者の環境はあまり便利に作りすぎるのはだめで、本人が努力しなければならないようにしないと、リハビリの目的には合わないという。
医療機器の進歩による検査漬け、薬漬けが疑問視されてきたように、住宅もまた設備漬け、電化漬けへの傾向をチェックしなくても良いのか、という意見もある。

室内気温に ついていえば、最近は設備機器の発達によって、どんな状態にでも望みのままにコントロールできるようになった。
だが、それが果たして真の幸福につながるかどうかに疑問を持つ人もある。

快適な温度・湿度で空気が清浄であることは確かに必要だが、健康はただそれだけでは保証されないのである。
さらに実験の方法についても疑問がないわけではない。
普通は短い時間の中で測った快適さの温度・湿度の条件を、正しいものとみなして、室内気温をコントロールしているようだが、果たしてそれで良いのだろうか。

生物を相手にした実験は、もっと長い時間にわたる多面的な検討を加えないと、将来に悔いを残すことになるのではないか。

最近はエレクトロニクスの発達によって、すぐに目の前で数値を読み取ることができるようになった。
私たちはそれを正しい答えと信ずるが、それで良いのだろうか。
人間の知恵の方は短期間のうちに技術革新に対応できるけれども、肉体のほうは何十年もかかって、自然の環境条件に合うように、少しずつ少しずつ変化して作られたものだから、一年や二年で体が新しい環境条件に合うように変わると考えることは危険ではないか。
今適応しているのは、そう見えているだけで、実は内部に目に見えない無理が蓄積しているかもしれない。
公害を例にしていうなら、ある日気がついたら、全国到るところが公害だらけになっていたという苦い体験がある。

それと同じように、ある日ある時どっと弊害 が現れることがないだろうか、という疑問もある。
空気汚染が問題になったのを機会に、もう少し広い立場から、本当の健康住宅とは何かということを、じっくり考えてみる必要があるように思う。
さらにもう一歩踏み込むと、基準の作り方にもむずかしい問題がある。
従来はある一つの数値を基準に決めてそれ以上のレベルは合格、以下のレベルは不合格とする方法が採られていた。

もし空気汚染の値を弱い人のレベルに合わせれば、多くの人には過剰品質の効果な家を買わせてしまうことになろう。
それは資源的に見ても無駄が多く、地球環境を破壊することにつながりかねない。

一方強い人にあわせれば、弱い人が犠牲になってしまう。
こうした困難な問題をどのように解決したらよいのであろうか。
これは一つの思いつきに過ぎないが、私は次のような考え方もあるように思う。

もし家の性能のかなりの部分が、数量的に表示できるようになれば、ユーザーはそれを見て、自分の責任で、その中から、家族の実情に適したものを選べばよい。
弁当には松、竹、梅のレベル分けがあるが、あのやり方も参考になるのではないだろうか。
今や住宅産業界は難問山積といってよい状態にある。
いずれ明春にはガイドラインが示されることになろうが、それは弾力性を持ったものであることを望みたいと思う。
次のような理由があるからである。
先日私はガラスレンズのメガネを買おうと思って眼鏡屋へいった。

ところがレンズはすべてプラスチックになったと言う。
PL法が施行されたので、メーカーはレンズが割れた時のトラブルを避けて、ガラスのレンズの製造を中止したためだとの事であった。
法律とか規制とかは、しばしばそういう結果をもたらすものだと知った。
そこで思い出したのは、以前に洗面化粧台のJISを作ったときの話しである。
ある委員は試験項目の中に「鉄の玉を落として割れないこと」を入れるべきだと主張した。
だがそれを採用すると陶器製の洗面器は使えなくなってしまう。

一方別の委員は、「私は弱くても陶器の洗面器を使いたい。

ガラスのコップは割れるが酒がうまい。
いかに丈夫でもプラスチックのコップでは酒は飲めない」と反論した。
それによって陶器製の洗面器が残ることになった。
生活の中の道具と言うものは、われさえしなければ良いとか、試験結果の数値が高ければ良い、 と言うものばかりではない。
人間くさい不合理さや、弱さの好まれるものもある。
ましてや家については、そうした考慮が一層必要なように思う。
時には隙間風さえも懐かしくなることもある。
それを選べるゆとりも必要ではないかと、私は考える。
以上は私が健康住宅の実験の手伝いをしている間に、肌で感じた疑問のいくつかである。
ご参考になれば幸いである。


AIによる画像生成した健康住宅イメージです。COPILOT利用。
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