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- ID:
- 32935
- 年:
- 2015
- 月日:
- 0420
- 見出し:
- 高津川ウッディ・クラフト デザインの力で高津川材のブランド化に挑む|木のある暮らしーLife with Woodー
- 新聞名:
- T-SITEニュース
- 元UR(アドレス):
- http://top.tsite.jp/news/o/23197190/
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高津川ウッディ・クラフトからつながる島根の森のはなし
島根県は県土のうち約78%が森林という、全国4位を誇る森林県。
スギ・ヒノキの人工林は約14万ヘクタールを誇り、そのうち約4割が9齢級以上の利用期となっている。
木材の生産量は、平成2年に比べると半減しているが、近年は増加傾向。
スギ・ヒノキに加えて、マツの生産量が全国上位であることも特徴
だ。
間伐材の利用材積も平成24年に飛躍的に伸びており、6万立方メートル以上で推移している。
また、〈島根CO2吸収・固定量認証制度〉を設けている。
“吸収”は、森林整備のための労力や資金を提供して、企業活動をオフセットするもの。
“固定量”は、県産材を利用した木製品によるCO2固定を目的とし
たものだ
県では、原木増産の促進、伐採跡地の再生促進、県産原木による高品質・高付加価値な木材製品などを中心に、木を「伐って、使って、植えて、育てる」循環型林業の実現を目指している
裏目に出てしまった島根の良質な木
東西に長い島根県。
松江や出雲があるのはかなり鳥取県に近い東部、一方、山口県と接している西部は豊かな自然が残っている。
針葉樹も広葉樹も多く、良質の木材がたくさん出ていた。
しかしいま、島根の木工業は衰退しつつある。
ライフスタイルの変容や、外国産材の流入という全国的な問題はもちろん
、もうひとつ理由があった
「営林署が3つもあるのは島根だけでしたし、相当いい木が出ていました。
だから丸太を右から左に流すだけでも、いい暮らしができたんです」そう説明してくれたのは、昭和21年創業以来、西部にある高津川流域材を扱ってきた老舗木工所、〈平和木工〉代表取締役社長の洗川武史さん
しかし、良質な木材があったおかげで、その上にあぐらをかいてしまった
「ある地域の話ですが、そこはいい木材が育たない地域なので、製材所や加工業者が努力して、ものづくりやデザインで付加価値を高めて、成長したという例があります。
この地域は、そういう努力をしてきませんでした」
こうして島根の木工が衰退してきたことで、結果的に、林業従事者が減り、後継者もいなくなり、木の枝打ちや間伐などがされなくなってきた。
年々、木材の質が落ちてきているという
「現状では、まだいい木が立っています。
いまはそれで食べていけるかもしれないけど、近い将来、絶対にダメになるでしょう。
しかも、木材を燃料チップにしてしまうだけで、生産者が山を育てようという気持ちになっていないと思います」
だからといって嘆いてばかりいられない。
かつて栄えた木工業者も、まだ100軒近くあるので、技能者はまだ残っている。
そこでまずは自分たちが構える西部の高津川流域で〈高津川流域の家具・建具づくり協議会〉を立ち上げ、1年後に平和木工を中心とした〈高津川ウッディ・クラフトLLP〉に発展した
「付加価値をつけて売り出すことができるのならば、生産者のみなさんも、山を守り、木を育てようという気持ちになるのではないかと思ったんです」
いい製品をつくり、それが売れて、山に手が入り、森が守られ、よい木材が育つ。
そんなサイクルを目指した。
もちろん、木工業者としても、いい木があればいい製品がつくっていける
デザインという活路
さて、どんな付加価値をつけるのか。
高津川ウッディ・クラフトLLPでは、それをデザイン性に求めた
そもそも木工所は、かつては婚礼家具や家のつくりつけ家具をつくっていたので、注文する人といろいろな話をして、“ああしてほしい”
“こうしてほしい”というオーダーに応えてきた。
ある意味、デザインをしていたようなものだ。
しかしそのような需要自体が減り、しかもそれらは設計士や建築家の仕事になった。
木工所からデザインという概念が薄れていった
そこで、まずは京都精華大学の井上斌策教授を招き、“デザインとはなにか”という講義からスタート
「はじめはボケッと話を聞くだけでしたね(笑)」とプロジェクトが始まった5年前を振り返る洗川さん。
いまでは毎月1回、井上教授を交えて、デザイン会議が行われている。
井上先生の教え子である学生の、卒業制作の作品をつくってみるなど、実際に手を動かし試作することで、木工技術者の頭をやわらかくデ
ザイン的にしていく
「つくり手とデザイナーとでは、完全に方向性が違いました。
つくり手は固定観念にとらわれています。
それを壊す作業でした」
こうしてまずできたのが〈ウッドリバー〉。
小口径の木材を使用して柾目の集成材にした。
すると大口径の木材のような、美しい柾目板ができた。
素材はヒノキとスギがある。
これがグッドデザイン賞を受賞。
翌年も「いい勉強だから」と、新作の〈シェルフィー〉を出展してみると、これまた2年連続の受賞
シェルフィーは、ウッドリバーを6ミリにまで薄く加工し、曲げ加工を施した。
金具と合板は使わずに、無垢のヒノキが美しい曲線を描いている。
6ミリという薄さに仕上げてデザイン性を高めながら、すべてをホゾで組んでいるあたりに、木工職人のプライドが感じられる
県内でのデザインのさらなる発展を目指して、〈高津川デザインフォーラム〉も開催。
島根県内には、デザイン系の学校がなく、建築系も島根大学にひとつあるだけ。
デザイナーが育つ素地がない
「いままでは都会的なところへ発信して、外から地域を見てもらう作業でした。
それで地元の人がどう反応するのか。
外から刺激を与えたくて、フォーラムのようなかたちにして開催したんです」
今年1月に開催された第2回高津川デザインフォーラムでは、前述の井上教授のほか、デザイナーの黒川雅之さん、左合ひとみさんを招いて講演やパネルディスカッションが行われ、デザインマインドの普及に一役買った。
さらに、別途行われていた木製品に限定したデザインコンペ〈高津川学生デザインコ
ンペティション〉の表彰式と、その受賞作が展示された。
受賞作は、高津川ウッディ・クラフトの各社が試作し、商品化が検討される
しかしこのコンペへの応募者は、関西圏と広島からがほとんど。
島根県からのエントリーが少ないのは寂しい限り
「1回目のデザインフォーラムは、なかなか関心を持ってもらえませんでした」と洗川さん。
自分たち木工業者、学生、そしてそれをめぐる地元の人たちに、“デザインのデ”から植えつけていく地道な作業だ。
それが将来的には素晴らしい木工作品につながるはず
みんなで森を守るための自伐型林業
これから積極的に取り組もうとしている取り組みに、自伐型林業がある。
日本の林業では、森の所有者や地域ではなく、業者に森の管理や伐採を任せている現状があった。
この状況下で、所有者が自分の森を間伐したいと思っていても、伐採業者に頼む予算もなく、結果的に放置してしまうことになる
そこで自伐型林業は、所有者自らや、地域の小規模グループでも、伐採していこうというカタチだ。
大量に伐らなくてもいい。
1本でもいい。
業者は1本では動きづらいが、個人ならば可能となる。
そして平和木工が、その買い手となることができる
「私たちもいい木がほしいですし、大量に出てくるものとは違う木材が出てくるのでありがたいです」
結果的に差別化にもつながるし、家具であれば、建材のような長くて立派な木材でなくても使える。
地元で売り先が確保されていれば、自伐する人も安心して木を伐ってくることができる。
地域ぐるみの6次産業ともいえる取り組みだ
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