v11.0
- ID:
- 28788
- 年:
- 2013
- 月日:
- 1014
- 見出し:
- 紀要35号(4)伎楽面 木彫第120号の笑顔は
- 新聞名:
- 読売新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.yomiuri.co.jp/shosoin/2013/treasure/kataru/20131009-OYT8T00707.htm?cx_thumbnail=09&from=yolsp
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
新たに修理を終えた伎楽面のうち、木彫第120号は、目も口も曲線で表現された笑顔の童子面である。
修理の過程で、その笑顔の秘密がわかってきた。
伎楽面 木彫 第120号 正面(修理前)=宮内庁正倉院事務所提供
伎楽面 木彫 第120号 正面(修理後)=宮内庁正倉院事務所提供
桐製。
縦24センチ、横18センチ、奥行き約18センチ。
重さ150グラム。
担当した宮内庁正倉院事務所保存課調査室員の山片唯華子さんは「小さくて、子供しかかぶれない。
それに、かなり薄い」と話す。
右側面の、こめかみのすぐ下あたりに穴が開いているのも、ほおの膨らみが始まる部分で、「面が薄か
ったので開いてしまったのでしょう」と推測する。
頭部には毛が貼られていたと考えられている。
左右の側頭部には小さな穴が開けられているため、布をつけて頭部の裏側に垂らしていたとみられる。
ひもを通す穴もあった。
頭部に割れた跡があり、後頭部が失われていた。
修理ではまず、全体にかぶっていたほこりを慎重に払った。
白っぽかった顔が、赤みを取り戻した。
はがれかけていた絵の具層を保護するため、極めて薄い膠にかわの水溶液を塗った。
また、過去に「伎楽面残片」として別保存されていた2つの小さな破片が、頭部の断面と一致したため、少量の木粉を混ぜ
た麦漆を接着剤にして、接合した。
これと合わせて、面を詳細に観察し、エックス線分析や可視分光分析などを行った。
三日月状の両目は、すべてくり抜かれて穴になっている。
正倉院の伎楽面では、白目部分は白く残して黒目部分だけ穴を開けることが多く、「穴だけの目」は少ないという。
顔の彩色は、まず白の下地を施し、その上に赤みを帯びた色を塗っている。
唇には赤色を塗り、眉は、まず薄墨で下書きをし、墨で描く
。
さらに、眉の下に緑色の線を重ねていた。
銅を含む顔料らしい。
こうすることで眉をより際立たせていた。
山片さんによると、仏画にも用いられる手法だという。
歯は、現状ではわかりにくいが、まず全体を白く塗り、歯の1本1本を銀泥で塗っていた。
銀色と歯列の白いラインで輝く歯を表現していたようだ
fff: