ウルグアイの森林面積は152万5千㌶(2008年、国土面積の8.6%)で、この内、家畜避難林、防風林、渓谷林、河畔林、ヤシ林等の天然林が約81万㌶(森林面積の53%に相当)あるが、自然環境の保全及び天然資源の保護の観点から、基本的に伐採が禁止されている。人工林は、上記したように約71万㌶(2008年)に達しているが、この内、マツ類を主とした針葉樹が24%、
ユーカリ類が76%を占めている。針葉樹はP. taeda (13万㌶)とP. elliottii (5万4千㌶)、広葉樹はE. globulus (26万9千㌶)とE. grandis (15万9千㌶)が主要なものである(21)。
この国の植林事業が他国のそれと大きく異なる点は、天然林や原生林を伐採しての植林ではないことである。1987年に農牧省が行った土壌調査で羊毛、羊肉、牛肉の生産力を基準とする土地生産力指数が決定され、これに基づいて林業適地としての「植林奨励地」が指定された。すなわち、植林奨励地は主に牧畜の生産力の低い場所、農業に適さない場所であり、その面積は現在357万㌶(国土面積の約20%)となっている。このような土地生産性の低い荒地を緑化するために大規模な植林を行い、そこから産出される木材を輸出することを目標としている。しかし、2008年の時点での植林面積は植林奨励地の約20%程度に過ぎない。また、国が管理する森林は海岸砂防林と丘陵地の環境保全林程度で小さく、その他の森林の大部分が民有林である。
ウルグアイの地形は平坦であるので、植林や伐出作業、機械化等が容易であり、放牧のために植林地を開放するので下刈り等の保育コストがかからないこと、また気候が温暖で植林木の年間平均成長量が大きいこと(ユーカリ類:27~30 m3/ha、マツ類:16~23 m3/ha)等の林業にとって有利な面をもっている。マツ類の場合の植林本数は通常3m×3m植栽(約1,200本/ha)で、2年後に3m高まで枝打ち、3年目に700~800本/haまで間伐、6年後に6m高まで枝打ち、9年後に10mまで枝打ち、11年後には約500本/ha、15~16年後には250本/haまで間伐、21~24年で伐採され、製材品とされる。また間伐材は合板やPB、MDFの原料とされる。ユーカリ類の場合は実生苗、あるいは若芽を用いた挿し木苗を作り、70cm程度に育った苗を植林する。植栽本数は上記と同じであるが、パルプ用は植栽後8~10年で全て伐採する(1回目の収穫)。切り株から数十本程度萌芽するので、その内の2・3本を残して育てる(萌芽更新)。約20年後の2回目の収穫時には、1回目の収穫後に萌芽更新で仕立てられた立木を全て伐採する。30年後の3回目の収穫時も全て伐採するが、この時の更新は新規植栽する方法が採られる。したがって、同じ植栽木からパルプ用原木として3~4回収穫することになる。一方、製材や合板用の場合は、枝打ちや間伐作業を数回行い、15年後には200本/haにまで間伐し、約25~30年後に全木が伐採される。
2002年の隣国アルゼンチンの経済危機の影響を受け、ウルグアイは未曾有の経済危機に直面したが、2003年の後半にはプラス成長となり、以後年間5~8%の経済成長を続けている。これは海外からの投資誘致と輸出の拡大によるところが大きい。ちなみに、海外からの投資額は2002~2004年には年平均約3億㌦程度であったが、2005年には前年比2.3倍の7億1,500万㌦、2006年には同1.6倍の11億6,400万㌦となっている。また、輸出も2006年は前年比の16.2%増、2006年15.7%増と2桁成長が続いている。従来輸出先はメルコスール諸国に偏っていたが、ブラジルやアルゼンチンの通貨切下げを機に多角化路線に転換し、欧州や米国への販路拡大を行ったことが功を奏している。
一方、ウルグアイは木材関連製品の供給基地として注目されつつある。同国の林産物輸出額は、2002年までは1億㌦を下回っていたが、2004年には約1億5千万㌦、2006年には2億5千万㌦、2010年には7億㌦に達すると見られている。
ユーカリ材は木材チップやパルプとして輸出されている。木材チップは2004年から日本向けに輸出されており、2006年にはウルグアイの対日輸出額の約8割を占めた。これまで木材チップの輸出先は日本とスペインの2カ国であったが、2007年からは北欧が新規に参入し、同国産チップの争奪競争が始まっている。
植林事業、合板やMDF等の林産工業及びパルプの製造に対しては外国企業の大型投資が行われている。まずフィンランドのBotonia社が2007年に西部地区にパルプ工場(10億㌦、年産100万トン)を建設、操業を開始し、12月から2万トンを欧州向けに輸出、本年から毎月30万トンを欧州、中国向けに輸出、またスペイン系のEnce社がパルプ工場建設(年産100万トン、12億㌦)を開始、フィンランド・スウェーデン系のStora Enso社が土地購入を完了(10億㌦)、その他、ポルトガルやアルゼンチンがそれぞれ10億㌦規模の投資を検討中といわれている。また日本製紙が土地や森林の購入を始めているとの現地の新聞報道がされている。
一方、Urupanel社(チリ資本)は2005年に合板工場を建設し、マツやユーカリの間伐材を原料として厚物合板(年産10万m3、チリ、メキシコ及び米国向け輸出)を製造し、また残廃材を有効利用するためのMDF繊維板工場(年産7万m3)を建設中である。さらに、米国資本のWeyerhaeuser社は、1996年に当地の林業会社とジョイントベンチャーでColonvade S.A社を設立、2006年にはWeyerhaeuser Uruguayと改称、2008年までに植林地11.4万㌶を取得、E. grandisとP. taedaを中心に5万5千㌶植林を完了、2007年には15万m3、2012年には250万m3の収穫を予想している。また2006年には間伐材を原料とする合板工場を建設し、厚物合板の製造が始まっている。
地元の製材を中心とした木材企業の活動も活発になってきているが、GDPが120億㌦(2006年)程度のウルグアイにとっては、これら木材産業への外資導入政策は国の経済発展に大きな影響を及ぼすとともに、農村地域の雇用の創出、貧困対策の面に重要な社会経済的インパクトを与えている。
ブラジル、アルゼンチン、チリといった近隣の大国に比べて資源もこれといった産業もない小国で、在来産業である農業や牧畜業も小規模で生産性が低い。このような状況下で、人工林資源が唯一の国内資源であり、発展の可能性を秘めている。特に、同国の林業・林産業の今日の発展にJICAの技術援助が基礎になっており、日本の支援が成功した例の一つであろう。