69 |
ジンコウ |
伽羅 |
伽羅も及ばぬ微妙な香気が、ほのぼのと部屋にこめて、夜空へ流れた。 |
65 |
マツ |
松の大樹 |
折しも雨はごうごうと降りしぶいて、地軸を流すようだったので、大納言は松の大樹の蔭にかくれて、はれまを待たねばならなかった。 |
63 |
縁 |
縁にたたずみ |
ねもやらず、縁にたたずみ、朝景色に見惚れている女の姿を垣間見たりなどすることがあると、垣根のもとに忍び寄って、 |
63 |
垣根 |
垣根のもとに |
ねもやらず、縁にたたずみ、朝景色に見惚れている女の姿を垣間見たりなどすることがあると、垣根のもとに忍び寄って、 |
78 |
枝 |
枝をわり |
草をわけ、枝をわり、夢中に歩いた。 |
79 |
枝 |
枝にぶつかる |
頭上に蝉がとびたって、逃げまどい、枝にぶつかる音がきこえた。 |
84 |
枝 |
頭上の枝から |
頭上の枝から、また、耳もとから、げたげたひびいた。 |
0 |
森 |
森も |
四方の山も、森も、闇も、踏む足も、忘れた。 |
72 |
森 |
森をくぐり |
彼は走った。夢のうちに、森をくぐり、谷を越えた。 |
65 |
大樹 |
松の大樹 |
折しも雨はごうごうと降りしぶいて、地軸を流すようだったので、大納言は松の大樹の蔭にかくれて、はれまを待たねばならなかった。 |
84 |
木 |
木のま |
木のまを通してふりそそぐ小さな陽射しが、地に伏した彼のからだにもこぼれていた。 |
82 |
木の根 |
木の根 |
大納言は、木の根に縋って這い起きたが、歩く力はまったくなかった。 |
82 |
木の根 |
木の根に腰を下して |
彼は木の根に腰を下して、てのひらに顔を掩(おお )うた。 |
84 |
木の根 |
木の根に起り |
笑いは忽ち身近にせまり、木の根に起り、また、足もとの叢に起った。 |
84 |
木の根 |
木の根に伏して |
再び意識を失って、冷めたい木の根に伏していた。 |
73 |
木蔭 |
木蔭から月光の下へ |
木蔭から月光の下へ躍りでて、行くてをふさいだものがある。 |
79 |
木蔭 |
木蔭まで忍びよって |
大納言は最も近い木蔭まで忍びよって、さしのぞいた。 |
81 |
木立 |
木立の蔭へ |
大納言を木立の蔭へ蹴ころがした。 |
80 |
榾柮 |
榾柮 |
彼等は手に手に榾柮(ほだ)をとり、ところかまわず大納言を打ちのめした。 |
80 |
榾柮 |
榾柮をなげた |
ひとり、ふたり、彼等は自然に榾柮をなげた。 |
80 |
榾柮 |
榾柮をすてずに |
そうして、いちばん最後まで榾柮をすてずにいたひとりが、 |
80 |
榾柮 |
榾柮の先に火をつけて |
榾柮の先に火をつけて、大納言のあらわな股にさしつけた。 |