四月十二日出 書信
長州一条も下説区々取留事無之候
ニ付不申上候 諸色追々高價ニ付
必至と困窮途方ニ相暮痛心のミ
筆紙ニ難申上覚へ候
当地難波ヲ於て天保銭鋳立候事
夥敷事ニ御座候右ニ付銭相場ハ割合
より下直ニ御座候 来ル廿一日長州討入
の風説より金百匁ト引上申候
四月十六日 樋口
寅四月八日出 浪花信略
此程米價古今未曾有の事市中誠ニ以
騒々敷候処此頃ニ至リ少々下落に付先静ニ
相成申候依て困窮咄も不申出誠妙々の時節
西の噂も下々ニてとんと不相分事ニ候昨冬より
御下りの人々も今以其まま御帰り無之先達て
より広嶋侯薩州侯御登りの噂有之候
得共今以御登リ無之候併御両家ニ不限諸
侯の大御番士御越ニて専ら風説いたし候
是ハといふか実説の様相見へ申候何分