環境問題で最も進んでいる国はドイツだとされている。先ごろ私は壁装材料協会の調査団としてその実情を見学する機会があった。 短期間の視察であったが私の受けた印象は、わが国で手本にしなければならない教訓が沢山ある、ということであった。日本は国土が狭くて人口が多いうえに、平地が少なくてドイツと比べると、一人当たりの平地面積は四分の一くらいである。そのうえ資源小国だから多量の原材料を海外から輸入する。
それを数字で示すと、その中の二割を製品にして輸出し、残りの八割はゴミとし残ることになるという。こうした悪条件のもとにあるから、ゴミ処理については日本は余計に神経を使わなくてはならないのである。
これはスチール家具工業会から聞いた話だが、この業界ではすでに製品を構成するすべての部品に材料名を示すマークを刻むことに決めたという。これは家具を廃棄するとき、すぐに材料ごとに分別できる準備が整った、ということである。インテリアの分野でもこのような対策を研究する必要があると思う。
今やゴミをめぐる法制化や法律改正の動きが大きな話題になっている。来るべき通常国会に向けて、関係各省は法律の改正や個別のりサイクルの法律化を検討しているという。 従来の法律は処理とリサイクルだけを重視し、その川上に当たる生産者や排出者の責任はあいまいにされていた。そのためゴミを減量する効果は少なかった。
「循環社会法」では生産者の責任を明確にし、それによって先に政府が公表した減量化目標と共に、法律の中にそれを明確に位置づけることが要求されているという。
産業廃棄物処理で大切なことは、排出者にきちんと責任を負わせることである。現状ではゴミを排出する業者は処理業者に委託してしまえば、その後は不法投棄があっても責任を問われることはない。
そこに問題があった のである。 排出段階の規制強化だけでは減量化は大きく進まないであろう。必要なのは生産段階からゴミにならない製品を作ることである。建材には特にそれが要求される。
ヨーロッパでは処理責任を製品の製造業者に負わせることや、ゴミになりにくい製品の開発を促して、ゴミの発生を抑制する「拡大生産者責任」の考え方が広まっているという。 ゴミを税金で処理することをやめ、生産者が処理費用を価格に転嫁して、消費者が負担するのが原則であろう。これを循環経済廃棄物法に導入したドイツではその効果があがっているとのことである。
終わりに付け加えたいことがある。それは平成十一年七月に環境庁、通産省から発表された「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」 についてである。
それによると、「有害性が判明している化学物質について、人体等への悪影響との因果関係の判明の程度に係わらず、事業者による管理活動を改善・強化し環境の保全を図るための、新たな枠組みの整備を図る」と書かれている。
これまでは公害の人体への影響の有無を証明するために、ずいぶん長い期間をかけた裁判の例が多くあった。しかし今後はその結論を待たずに、対策が取られることになろう。これは産業界に大きな影響を及ぼすことが予想される。
いずれにせよこれからは、インテリア産業にたずさわる者は、家具・寝具・生活用品のいずれであるを問わず、環境汚染に深いかかわりを持つことに思いをいたし、汚染を防ぐ心掛けを持つことが必要である。今こそ環境倫理の確立が強く望まれているのである。