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- ID:
- 39351
- 年:
- 2017
- 月日:
- 0821
- 見出し:
- コンクリート製構造体が木から作られる日
- 新聞名:
- 環境ビジネスオンライン
- 元UR(アドレス):
- https://www.kankyo-business.jp/column/015411.php
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
ヨーロッパ内でも建築業界で特にサスティナビリティを重要視しているのは、ドイツ、スイス、オーストリアと言われています。
これらの国では林業が盛んであることや省エネブームを背景に、持続可能である建材『木』が積極的に開発・改良され、市場でも注目を浴びています。
近年ではRCと木造を組み合わせた
混構造も、木材を活用する手段の一つとして普及してきていますが、このコンクリートと木を併用するという発想に、従来の構造として組み合わせるのではなく、素材として混ぜるという発想にも新たなものが誕生しています
写真 1:8mの長さを持つ木製コンクリートパネル曲げ強度試験(写真:Daia Zwicky)
写真1:8mの長さを持つ木製コンクリートパネル曲げ強度試験(写真:Daia Zwicky)
木製コンクリートという発想
従来から建築物というのは木、鉄筋コンクリート、鉄骨、ブロックといった建材の何れかをメインとして建てられてきました。
近年注目を浴びている新たな構造としては、高層も可能とする新型木造や、RC(鉄筋コンクリート)と木の混構造といったものがあげられます
セメントと木を混ぜるという発想自体は決して新しいものではなく、100年以上の歴史を持ちます。
しかし、これまでに存在したものは、構造体として建物自体を支える、あるいは床等で人間からの負荷に耐えられるものではなく、主に断熱材等のように非構造部材でした。
写真 2:非構造部材の代表例とも言える木毛セメント板 難燃性と耐久性の高い断熱材として使用される(写真:永井宏治)
写真2:非構造部材の代表例とも言える木毛セメント板 難燃性と耐久性の高い断熱材として使用される(写真:永井宏治)
今回スイスで開発されたのは、こうした非構造部材ではなく、セメントと木を溶かし、構造部材として成り立つコンクリートパネルになります。
使用箇所とそれに合わせた配合にもよりますが、木の割合は最大で体積の50%に及びます
従来型コンクリートとの違い
フリブール大学の建築・環境研究所で開発された木製コンクリートと従来型コンクリートの決定的な違いは、当然のことながらその構成要素にあります。
通常、コンクリートに混入されるのは砂や小石になりますが、これらの代用として木、具体的に言うと大鋸屑が使用されるわけです
コンクリートの一部が木で作られることにより、断熱性能は通常よりも向上するほか、軽量化を図ることもできます。
また、コンクリートであるため、高い難燃性を持つことも利点となります。
木製コンクリートの開発者によると、最大でも従来型コンクリートの半分程度の重量ですむだけでなく、最も軽量なものは水に
浮くとも言われています
素材としての特性の他には、原料自体が再生可能、かつ大鋸屑ですからリサイクルにより取得できるものであるという利点も挙げられます。
解体後は木の部分をコジェネレーションの燃料としても利用できる反面、木製コンクリートパネルとして使用されている間はあらゆる難燃性も満たすことができます
実用化までの課題
木製コンクリートが構造部材として壁や床に使用可能かという点については、繰り返し試験を通したことですでに証明されています。
実用化には木製コンクリートを工場で事前生産して組み立てるプレキャストが適切ですが、それまでにはまだ課題が残っていると言われます
フリブール大学の研究チームは数年後に商品化できると考えていますが、木製コンクリートの使用箇所に応じてそれぞれ最適の配合を見つけ出すこと、さらには製造効率をあげることをそれまでの目標としています
建材自体の一部でも再生可能なリサイクル原料で製造することができるというのは、一つの魅力的なステータスと言えます。
構造用部材を軽量化する場合、その下に使用される構造自体をさらにシンプルにすることができますので、建築物全体に必要な部材の削減にもつながります。
その点、コンクリートが使
用される建築物でのサスティナビリティ向上にはポテンシャルを持っていると言えます
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