v11.0
- ID:
- 36549
- 年:
- 2016
- 月日:
- 1012
- 見出し:
- 新国立競技場に違法木材? どうした日本の環境政策
- 新聞名:
- BLOGOS
- 元UR(アドレス):
- http://blogos.com/article/193367/
- 写真:
- -
- 記事
-
昨年末、すったもんだの末に決定した東京オリンピック・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設
私は、このデザインに基づく建設で重要となる木材の調達が、なかなか難物であることを記した。
なぜならば、オリンピックのレガシーとして森林認証材を使うことが求められるが、それを国産材で調達するのは簡単ではないからだ
一方で、すでに森林認証を取得している林業地域では、チャンス到来と沸き立っていたのも事実である。
競技場だけでなくオリンピック関連の施設で使われる木材全般に、認証材が採用される期待が高まったからだ
ところが、このほど事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が大会組織委員会の調達基準を適用しないと決めた。
これは、国際基準に従わないということを意味する。
組織委では、今年6月に調達すべき木材は、合法性の証明書に加え、
・計画的な森林経営・森林生態系の保全
・先住民族や地域住民の権利保護
・労働者の安全対策
などについて事業者側が確認することと、書面の記録を求める調達基準を定めている。
これを無視するというのだ
JSCは、来年度より施行する「グリーン購入法」によって原産地で発行された木材の合法性証明書を揃えたらよいとしたが、この法令では合法的に伐採された木材かどうかの確認義務を課していない。
罰則もない。
そのため現実には、違法か合法かわからないグレーな木材が出回っている。
このままでは新国
立競技場にも違法木材が紛れ込む可能性は高い
ようするに、調達に手間のかかる木材は使いたくないのだろう。
ロンドン、そしてリオと続いた調達基準を反故にしようというわけだ
一部で、林業団体が認証を取得していない林業地に配慮して基準をゆるめるように陳情したという話が伝わっていたが、あっさりそれを呑んだということか
国立競技場の施工を担当する大成建設は、「認証機関が認めた木材を使用する」としている。
認証材なら組織委の基準を満たすが、全ての木材を認証材にするかどうかは確定していないという。
ここでは公の論理よりも、“企業の倫理”を発揮してもらいたいものだ
このところ日本では、国際社会の目を無視して内向きの政治判断が横行している。
たとえばウナギは、ワシントン条約締約国会議で絶滅の恐れがある動物に指定され、ウナギ取引の実態調査を行うことが決まった。
調査の結果を受けて次回会合で輸出入規制が議題に上がることになる。
ところが日本は調査に消極的だ。
すでに養殖に必要な稚魚シラスウナギは、密猟や密輸なくして日本のウナギ市場が成り立たない状況だからだろう。
さらに象牙問題でも、日本は世界から批判の目を向けられている。
年間3万頭ものアフリカ象が密猟されており、絶滅危機にあるからだ
ケニアを始めとするアフリカ諸国は、各国に象牙の国内市場を閉鎖するよう求めており、アメリカは象牙の取引を禁止すると宣言。
象牙の最大の消費国である中国も、国内市場を閉鎖することを決めた。
ところが日本は反対し、国内の売買禁止には踏み切らないつもりだ
そして地球温暖化対策を定めたパリ協定は、11月4日に発効することになったが、日本は批准が遅れ間に合わなくなった。
そのため発効後に開かれる具体的なルール作りの会議に参加できず、日本抜きで決まってしまう可能性がある。
EUは特例で異例の早さで批准し、以前京都議定書から離脱した米国や、排出削減義務が課されなかった中国、インドも、今回は次々と批准したというのに。
もともと日本の温暖化ガス削減目標は低すぎることが指摘されてきたが、本気度を疑われかねないだろう。
そして、オリンピックで使われる木材までも国際基準からそっぽを向いてしまった。
つまり日本は、環境を巡る国際政治の場で孤立しているのだ
マスコミも、そんな状況を批判するどころか「それではウナギが高値になる」「象牙の印鑑が手に入らなくなる」と内向きな報道を続けている。
目先の損得にしか眼を向けていない
これまで日本人は外の評価を気にする国民だとされてきた。
よくも悪くも、それが日本人のたたずまいを作ってきた気がする。
しかし、今や日本を褒める言動以外は聞かない・読まないようになったのだろうか
いつか痛い目に遇うように思える
fff: