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- ID:
- 35585
- 年:
- 2016
- 月日:
- 0606
- 見出し:
- 県産材の利用推進、木の良さ広めて需要創出を
- 新聞名:
- 佐賀新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/319641
- 写真:
- -
- 記事
-
戦後に国策で植えられたスギやヒノキの人工林が伐採適期を迎える中、佐賀県が県産材の利用推進に本腰を入れている。
高性能機械の導入などによる生産拡大と、住宅や公共施設などへの需要拡大が2本柱で、地産地消につなげるのが狙いだ。
外国産材との価格差は大きく、簡単には成し遂げられ
ないが、県土の約半分を占める森林を守る取り組みでもある。
木の良さを広め、着実に前進させたい
「学校、公民館など公共施設で使えばモデルになる」「木の魅力をもっとアピールすべき」-。
5月中旬に開かれた県産木材利用推進プロジェクト会議。
学識経験者ら委員からはさまざまな意見が出され、事務局の県林業課が生産コスト低減や需要創出に向けた取り組み状況を説明した。
安い外国産材に押されて国産材価格が下落するなど、林業を取り巻く環境が厳しさを増す中、プロジェクトは森林資源の適切な循環利用を目指し、2007年度に10年計画で始動した。
10年度との比較で、木材(丸太)の生産量は約4割増の年間15万立方メートル、県内消費量については約6割増の8
万立方メートルを目標に据えている。
15年度実績は生産量が年間13万3000立方メートル、県内消費量が7万2000立方メートルで、県林業課は「おおむね計画通りに進んでいる」と話す。
丸太1立方メートル当たりの生産費がこの7年間で6割減の約7500円になるなど、関係者の頑張りが実を結びつつあるが、外国産材との価格差は
依然大きく、並大抵の努力ではその脅威をはね返せないのも事実である。
他県に比べて平たんな印象が強い佐賀県だが、県土の45%は森林が占める。
森林面積約11万ヘクタールのうちスギやヒノキの人工林が67%で、この比率は全国トップだ。
森林を5年刻みの齢級でみると、9齢級(41~45年生)を頂点とするピラミッド形で、8齢級(36~40年生)以上の伐採適期の木
が全体の約8割を占める。
裏を返せば1~5齢級(1~25年生)程度の木が極端に少ない状況で、森林資源を平準化し、均衡のとれた齢級構成にするため、適切な循環利用の仕組みづくりが求められている。
こうした状況の中、県は森林組合などと連携し、さまざまな改善策を打ち出してきた。
生産面では、作業集約化を目指した路網整備や高性能機械の導入を推進。
伐採直後に植えることができるコンテナ苗の普及に取り組んでいる。
需要拡大に向けては、公民館など公共施設への利用や内装木質化によるリ
フォームを補助事業などで促し、木の魅力を伝える各種イベントを開催。
間伐材をクリークの斜面補強に充てるなど、低級材の利用にも知恵を絞っている。
プロジェクト会議委員長の五十嵐勉佐賀大学教授は「森林の健全な循環構築に向け、まさに今が試練の時。
50年先を考えて進めなければならない」と力を込める。
人は古来、木と上手に付き合い、暮らしの中に取り入れてきた。
木に包まれると、気持ちが落ち着くのは人の精神性に深く関わっているからだろう。
経済面だけ考えれば外国産材優位の状況は変わらないが、ふるさとの森林を守り育てるという視点を強めたい。
九州には宮崎、大分など地産地消の先進地も
多く、そうした事例も参考に県産材の利用をさらに進めてほしい
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