v11.0
- ID:
- 34922
- 年:
- 2016
- 月日:
- 0226
- 見出し:
- ウッディジョー社長・常木則男さん
- 新聞名:
- 産経ニュース
- 元UR(アドレス):
- http://www.sankei.com/region/news/160226/rgn1602260073-n1.html
- 写真:
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- 記事
-
■新たな製品にもつながる木製 静岡の模型業界の歴史は誇り
模型といえばプラスチックによる「プラモデル」が主流となっていますが、これには経費が莫大(ばくだい)にかかるんです。
金型を作らなければなりませんからね。
何千万、何億というお金が必要になります。
従業員十数人というわが社ではそうはいきません。
そういう意味では「木製模型」は経費がかかりませ
ん。
とはいっても従来のままではいけないのです。
そこで若干の設備投資はしました。
レーザー加工機の導入です。
模型の精密度も一気に良くなりました。
これによって、これまでは端材となっていた部分も細かいパーツとして使えるようになり、材料の無駄がなくなりました。
また、午前中に設計した図面が午後には試作品ができます。
製品開発にもスピードアップ化がなされたと思っています。
レーザー技術については企業秘密ではありますが
レーザー技術によって、一つ一つの部品は「プチプチ」といった感じで取り外せます。
ファンの中には、「型紙に沿って自分で切り取っていくのが楽しかったんだよね」という方もいらっしゃいます。
それでも木製模型の昔から持っている特徴を損なうことはありません。
その技術は帆船だけではなく、城郭、社寺など多
くのジャンルにまで応用でき、新たな製品誕生にもつながっています。
復元されたかつてのJR東京駅を再現した模型も売り出しましたが人気は上々です
■ ■ ■
木製模型は精密さを“売り”にしています。
プラモデルだと10時間でできてしまうところが、木製だと50~60時間必要なものがほとんどです。
さらにそれ以上時間を要するキットもあります。
そのため比較的時間に余裕のあるシニアの方のファンが多いようです
中には1年以上かけて組み立てる方もいらっしゃいますし、「塗装をしないで生地のままだと木のぬくもりを感じられる」「年月を過ぎると置物としての風合いが増す」といった声も数多く届いています。
確かにプラモデルとは違ってキットの値段は高いです。
でも素材に愛着がわくという点では天然の木の魅力に勝る
ものはないと思っています
とはいっても、いい素材の木がふんだんに手に入るわけではありません。
どうやって手に入れるかに頭を悩ませている部分もあるのは事実です。
でもそれをいちいち言うと言い訳になってしまいます。
ファンの方々にとっては関係ないことです。
つまりわれわれの企業努力ということでしょう。
現在、設計者は60代です。
後継者問題にも不安を感じることもあります。
でも私はいつも考えるのです。
静岡の模型メーカーがさまざまな困難に立ち向かいながらプラモデルへ転換したという苦闘の歴史です。
うちはもともと、模型専門のメーカーではありませんでしたから、業界他社のこれまでの熱意と努力
には見習うべきことがたくさんあります。
難局に直面したときに立ち向かう意欲と努力も静岡の模型業界がいまでも誇るべきところなのでしょう。
◇
模型。
しかもプラスチックではない。
木製だ。
さらには細部にまでこだわったいる。
これほどまでに、こだわりのある人がいたのかと驚いた。
「これからも模型一筋で頑張っていきたい」と話す常木社長。
その熱意には、頭が下がる思いだ。
コアなファン、マニアが多いなか、そんな思いを日本だけでなく世界にも発信し
ていってもらいたい。
背中を押したい気持ちを覚えた。
(構成 島田清)
◇
【プロフィル】つねき・のりお
昭和15年、静岡市生まれ。
静岡市立高出身。
静岡市の模型業界が木製模型からプラスチックモデルに移行する時代から一貫して木製にこだわり、現在では木製モデルのトップメーカーの社長として手腕を振るう。
模型メーカーの社長業としてだけではなく、県青色申告会の会長など税申告の推進、保護
司として更生活動などにも努め、地域貢献にも尽力している。
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