v11.0
- ID:
- 34528
- 年:
- 2015
- 月日:
- 1222
- 見出し:
- 新国立競技場デザイン 木材多用と緑が特徴
- 新聞名:
- NHK
- 元UR(アドレス):
- http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151222/k10010349341000.html
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- 【写真】
- 記事
-
東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場を巡って、政府は関係閣僚会議を開き、先に公表された2案のうちA案を採用することを決めました。
A案は、建築家の隈研吾氏がデザインした「大成建設」などでつくるグループの案で、「木と緑のスタジアム」をテーマに、木材を多く使った
伝統的な日本建築と壁面を彩る緑が特徴のスタジアムとなっています
A案はスタンドは3層式で、延べ床面積は19万2000平方メートル余り、高さは49.2メートル、収容人数は通常6万8000人、オリンピック後には8万人となります
スタジアムを取り囲む階層式のテラスは、法隆寺五重塔の垂木のように木製の格子が水平に連なり、屋根にも多くの木材を用いることで木の空間でスタンドを包む込むような作りとなっていて、いずれも日本の伝統的なデザインをアピールしています
コスト削減や工期の短縮に対する工夫では、シンプルな構造を打ち出しています。
例えば、3層式のスタンドは、同じ形のフレームを連続して組み合わせるため、作業の効率化を図っているということです。
総工費は1489億円余り、工期は2019年11月30日の完成としています
バリアフリーの面では、すべての階に車いす席を設け、車いす席と前の席の段差を従来より高くすることで、前の人が立っても視界を遮らないように計画しました。
環境への配慮では、屋根と客席の間からスタジアム内に風を取り込める構造になっています。
風の量を調節することもでき、夏の暑さや冬の寒さに対応できるとしています。
また、建物の高さを50メートル以下に抑えたり、周囲に小川を設けたり木々を植えたりして、神宮外苑の景観との調和を図っています。
さ
らに、将来を見据え、維持管理費を抑えるために、屋根の下に移動式のゴンドラを設置し、屋根を修理しやすくするなどしています
隈研吾さんとは
A案をデザインした建築家の隈研吾さんは、国内だけでなく、世界各地で建築のプロジェクトに携わるなど国際的に活躍しています
隈研吾さんは横浜市出身で61歳。
前回の東京オリンピックで作られた建物を見て建築家になることを志し、東京大学で学んだあと建設会社での勤務をへて独立しました。
現在は母校である東京大学の教授も務めています。
国内では、宮城県登米市にある「伝統芸能伝承館」や、東京・港区の「根津美術館」
などを設計し、海外でもさまざまな建築プロジェクトに携わっています
建築に関する著書も多く、コンクリートなどによる強く合理的な「大きな建築」に対し、身近な材料を使うなどした「小さな建築」という考えを提唱しています。
また、東日本大震災のあとは、津波で大きな被害を受けた宮城県南三陸町の復興に向け、町のグランドデザインの検討などにも携わっています
今後の日程
新国立競技場について、公表されたA案の技術提案書に基づく今後のスケジュールです
年明けの1月には設計の契約が結ばれ、2月から10か月かけて基本設計と実施設計が行われます。
そして、工事の請負契約が結ばれたあと、12月から本体工事の着工に移ります
完成時期については、当初は、遅くとも2020年4月末までとなっていて、IOC=国際オリンピック委員会から、2020年1月に前倒しするよう求められていましたが、A案ではそれよりも早い2019年11月30日としています
これまでの経緯
白紙撤回になる前のデザインは、2012年11月、イラク出身の女性建築家、ザハ・ハディドさんの作品が採用されました。
競技場は、観客席を8万人規模に増やし、開閉式の屋根をつける構想で、費用はデザインの国際コンペの募集要項で1300億円程度とされました。
ところが、その後、金額は乱高下を繰り返します。
ことしに入り、施行予定の建設会社から3000億円を超える見積もりがJSC=日本スポーツ振興センターに示されました。
このため、開閉式の屋根の設置を大会後に先延ばしし、フィールドにせり出す1万5000席の可動席を自動ではなく、手動で仮設に変更
することで、6月に当初の2倍近い2520億円にいったんは決まりました。
しかし、巨額の費用と不透明性に国民の批判が相次ぎ、7月、安倍総理大臣が計画を白紙に戻して、ゼロベースで見直す考えを表明しました。
JSCと文部科学省が中心となってきた態勢を改め、遠藤オリンピック・パラリンピック担当大臣を議長とする関係閣僚会議を発足させて、新たな整備計画の取りまとめ作業を進め、8月に総工費の上限を1550億円とすることが決まりました。
一方、整備計画が白紙撤回された経緯については、8月に文部科学省が検証のための第三者委員会を設置し、9月にまとまった報告書では、難しいプロジェクトに求められる適切な組織体制を整備することができなかったなどとして、JSCや文部科学省、そして、それぞれのトップである、当時の河野一郎理事
長や下村文部科学大臣らの結果責任を指摘しました
これを受けて、下村文部科学大臣は、6か月分の給与などを自主返納し辞任の意向を安倍総理大臣に伝えて慰留され、河野理事長は1期目の任期満了をもって退任しました。
新たな国立競技場建設に向けた業者の選定は、JSCが設けた専門の審査委員会が行うことになり、設計から施工を一貫して発注する「公募型プロポーザル方式」で9月に公募を開始し、2つのグループが参加しました。
今月14日には、2つのグループの「技術提案書」が公表され、翌日から3日間、JSCの
大東和美理事長が競技関係者から聞き取りを行っていました。
そして、19日にはJSCが専門家による審査委員会を開き、2つのグループから聞き取りをしたうえで、2つの案の技術提案書を採点して審査を終えました。
一方、整備に必要な財源については、今月はじめ、総工費の上限に関連経費を加えるなどした1581億円程度のうち、ほぼ半額の791億円程度を国が負担し、395億円程度を東京都が負担することで国と都が合意しました
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