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- ID:
- 32879
- 年:
- 2015
- 月日:
- 0410
- 見出し:
- どんな木材か、消費者も関心を 佐藤宣子氏
- 新聞名:
- 西日本新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.nishinippon.co.jp/nnp/opinion_view/article/161832
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
森林の「若返り」を考える
「若返り」という言葉が、最近、森林・林業の行政用語として盛んに使われるようになった。
アンチエージング流行の中で、「若返り」の響きはとてもいい
その「若返り」とは、戦後に造林して利用できるようになったスギやヒノキを伐採・再植林して若い森林の割合を高めるということである。
この主張に呼応するように、九州各地で森をすべて伐採する皆伐(主伐)が進んでいる。
円安による輸入木材価格の上昇、木質バイオマス発電所の稼働、好調な木材輸出
なども、主伐を促進している。
2002年に18%まで落ち込んだ木材自給率が10ポイント以上も回復するなど、林業復興の兆しも見られる
最新の「森林・林業白書」では、「若返り」の必要性は、二酸化炭素を旺盛に吸収する若齢林分を増やすこと、そして、あまりに偏っている樹齢50~60年の人工林資源の構成をならすことで説明されている。
しかし、それでは伐採方法についての議論が抜け落ちる危険性を感じる
日本の森林は、二酸化炭素を吸収するだけではなく、その土壌中に吸収量以上の炭素を固定していることが分かっている。
また、森林土壌は雨が降った時に水をいったんためて徐々に河川に供給する機能がある。
土壌が流失すると、次に植えた樹木の成長量、つまり二酸化炭素を吸収する力も弱まること
になりかねない
林業は、植えて伐採するまでの長い時間のなかで時々の市場に対応することが求められる。
しかし、樹木は光合成によって1年に年輪一つ分しか成長しないのである。
伐採を促進するには、慎重であらねばならない。
間伐を繰り返して主伐時期を延ばし、多様性に富んだ森にすべきところもある。
主伐をする
場合は、伐採面積を小さくし、河川の近くまでは伐採しない、渓流を横切るような荒い道は作らないなど環境面に配慮し、土壌の保全に努めることが必要である
今年は国連が定めた「国際土壌年」である。
短期的な収益を追い求める土地利用によって、土が痩せてしまうことが国際的にも問題になっている
私たちの生活は紙を毎日消費し、住宅に木を使うなど森林とつながっている。
健康的な住まいづくり、再生可能なエネルギーへの転換という点でも、木材利用の拡大は期待されている。
要は、次世代のために、森林を賢く使うことが求められているのである。
そのためには、どこの森林から、どのように伐採さ
れた木材なのかについて、消費者が関心を寄せることが求められる。
森の「若返り」が主張される中で、考えたことである
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