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- ID:
- 30901
- 年:
- 2014
- 月日:
- 0709
- 見出し:
- 木工家具の技と心、旭川に蓄積
- 新聞名:
- 朝日新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW20140710010860001.html
- 写真:
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- 記事
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「旭山動物園」は、今や全国的なブランドですが、「旭山」に勝るとも劣らない地域力を持つのが「旭川家具」です。
その力量を道民が深く理解しているかと言えば、残念ながらそうではありません
木材関連産業の裾野は、このエリアに大きく広がり、とりわけ木工家具の分野では、120を超える製作現場が存在しています。
危機的な状況を幾度も越え、先進的な北欧家具にも学びながら、今ではデザインや品質に優れた国内有数の家具産地として存在感を高めています。
先月開催された「国際家具
デザインフェア旭川」も、世界の木工家具関係者から注目されるコンペティションに成長しました。
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「旭川家具」で注目すべきは、エリア全体が深く身につけた技術を育む力、世代を超えて技を伝承していく力です。
技術の習得を目ざしてこの地に降り立った若者は、家具づくりの土壌や先達の息遣いに鍛えられ、技と眼力を磨きます。
それは一朝一夕に出来るものではありません。
そう思いながら、昨年、前
文化庁長官の近藤誠一さんから聞いた話を思い起こしました。
平安時代、書の達人と言われた嵯峨天皇と空海は、書の腕前を競っていました。
ある時、嵯峨天皇が長安から取り寄せた書を空海に見せ「長安の人の手になるもので誰かは知らぬが、到底真似(まね)出来るものではない」と称賛。
すると空海は「実は私の書いたもの」と言いますが、天皇は「書風がまるで
違う」と信じません。
空海は「ご不審はごもっとも」と言って軸を外すと、そこに「青龍寺にて 空海」とあり、「文化の大国、長安で書くと筆に勢いが出るのです」と答えました。
当時の長安が、世界から文人を受け入れ、人の持つ知的能力を刺激する文化の都だったことを物語る話です
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長安に計り知れない文化の力があったように、木工家具職人の技と心を育てる懐深いエネルギーが、旭川家具エリアに蓄積され続けているのです。
それを、この地の多くの人が認識していないのは、産業的にはもちろん、地域の誇りを育む上でも、あまりに惜しいと思えてなりません
地域の力は、時間を積み重ねることでしか形づくることの出来ないものです。
製造業の弱さが指摘される北海道にあって、「本物」をつくる木工家具技術の集積は、日本のみならず世界に誇っていい、かけがえのない地域の財産。
その宝を守り育むことは、私たちの「北海道」を磨き、未来を育むことでもありま
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