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- ID:
- 28199
- 年:
- 2013
- 月日:
- 0729
- 見出し:
- 木の文明と水源:第1部・大切に長く使う/11 割り箸/下 /奈良
- 新聞名:
- 毎日新聞
- 元UR(アドレス):
- http://mainichi.jp/area/nara/news/20130728ddlk29040279000c.html
- 写真:
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- 記事
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吉野、山づくりの一環
吉野のもう一つの割り箸(ばし)産地、吉野町は戦前、下市町から技術を習い、戦後に拡大した。
木は下市が杉、吉野町はヒノキが主だ。
材は丸太から樽(たる)丸を作った残りから、建築用角材を取った外側の背板に変わったが、端材を使う伝統は両産地とも受け継ぐ。
2011年度、国内生産の約7割が
奈良県製で、ほとんどが吉野地域だ
00年1月、「ノーわりばし運動」を始めていた塗り箸産地の石川県輪島市に、吉野町の業界は公開質問状を送った。
環境保護のため再利用できる塗り箸の使用を呼びかけている、とのニュースが通信社から全国に流されたのだ。
割り箸製造業で当時、吉野製箸工業協同組合専務理事だった住吉雅彦さ
ん(67)=吉野町南国栖=は輪島市との交渉役。
「運動が広がったら我々には死活問題だった」と振り返る。
輪島市は「国内産地を対象にしたものではない」と説明し、運動の名称を変えると約束して幕に
住吉さんは「建築材を取った端材を使い切るのが吉野の割り箸。
一つの木を無駄なく全部使う。
木を切り、その跡には必ず植樹して良い木を育てる吉野の山づくりの一環だ。
使い切らんといかんやろう。
我々の使命」と言う。
若手の「吉野製箸」代表、小林直樹さん(40)=同町菜摘=も思いを引き継ぐ。
「端材を使い切るのが吉野の一番のポイント。
全て、林業の流れの中でつながりがある。
割り箸は端材の目が通った良い部分を選ぶ。
(林業不況で)木を切らないので集めにくくなっている」
明治後、使い捨ての手軽さ、衛生面から飲食業とともに成長した割り箸。
使い捨てについて「資源の無駄使い」との議論が、産地の説明で収まっても、時を置いては出てくる。
住吉さんは「(吉野の事情が)理解されていない点は、今も基本的には同じ」と見る。
下市発祥の割り箸だが、11年度の国内消費197億膳の内、国産は4億膳だけ。
98%が輸入で中国製だけで消費の92%を占める。
中国は人件費が安い上、シラカバを丸ごと加工し、吉野のような選別コストを省ける。
木材需要が増えている中国では「森林の浪費」との批判も出て、政府は輸出税の引
き上げもした。
中国の事情が吉野と混同されている面があるようだ。
小林さんは「そんな話も言われたことがあるが、説明したら納得してもらえた。
国産と中国製を一緒くたにされている。
議論する人は区別が面倒なのか」と言う
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