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- ID:
- 24541
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0614
- 見出し:
- タイの奥地で「トウモロコシバブル」に踊る村を取材しました
- 新聞名:
- FNN
- 元UR(アドレス):
- http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00225349.html
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- 【動画】
- 記事
-
世界の首脳クラスが集まり、環境と開発の両立を話し合う国連・持続可能な開発会議「リオ+20」が、来週、ブラジル・リオデジャネイロで行われます
同じリオで1992年に開かれた「地球環境サミット」から20年の節目にあたるため、「+20」となっていますが、この間、世界人口の急増と開発の拡大で、環境への負荷は、ますます重くなっています
それを森林の減少で見てみると、この20年で、南米・アフリカ大陸を中心に、日本の国土の3.5倍の森林が減少しています
タイの奥地で、「トウモロコシバブル」に踊る村を取材しました
小さな村に、にわか景気をもたらしたのは、「遺伝子組み換え種子」、「グローバル化」、そして、「森林の違法伐採」です
タイ北部、ラオスとの国境に近い山岳地帯、パヤオ県の小さな村
この村は、350人ほどの少数民族が住んでいる集落で、周りの木は伐採されたため、山肌が黒くなっているのがわかる
この地に住む少数民族「モン族」は、コメや野菜を作り、自給自足の生活をしていた
しかし現在、村長の自宅には、衛星アンテナが設置されていた
村長は「この衛星アンテナは、2007年に設置しました。
村のみんなが集まって、テレビ鑑賞します」と話した
10年前には、この村にほとんどなかったという車やバイク
それが今や、30台の車に、90台近いバイクが、人口およそ350人の村を走っている
急激に生活が潤い始めた山あいの小さな村
住民は、「トウモロコシのおかげで、生活は豊かになりました」、「トウモロコシの種を植えれば、植えた分だけもうかるんだよ」と話した
この村では、6年ほど前から、遺伝子組み換えのトウモロコシの種が手に入るようになった
遺伝子組み換えで農薬に強いため、大量に作ることができ、さらに今、世界では、トウモロコシの需要が急増し、価格が高騰していることが、村人のトウモロコシ熱に拍車をかけている
需要急増の背景にあるのは、経済発展を続ける中国
国民の生活が豊かになり、肉の消費が増え、それを支えるために、家畜の餌の需要も増加
これまで、トウモロコシの輸出国だった中国は、2010年から輸入超過に転じた
13億人の胃袋を満足させるための「爆買い」圧力は、マーケットにも大きな影響を与え、トウモロコシの国際価格は、2006年秋の2.7倍になっている
一方、輸出国であるアメリカのアイオワ州では、巨大な工場に、絶え間なくトウモロコシが運び込まれていた
この工場では、トウモロコシからエタノールを生産している
そのバイオエタノールの生産量も右肩上がりで、これも価格高騰の一因となっている
ホームランド・エナジー・ソリューションズのウォルト・ウェンドランドCEO(最高経営責任者)は「トウモロコシの生産でもうかるかぎり、農家はもっと作り続けるだろう」と話した
世界的なトウモロコシの需要増加と価格高騰は、タイの小さな山村の人々にも、多額の収入をもたらした
しかし、トウモロコシがこの村にもたらしたのは、豊かな暮らしだけではない
もともと、森林が生い茂る緑豊かだった村は、地元住民による木の伐採で、広範囲にわたり、山肌の土が見えている
トウモロコシを栽培するために、伐採される森林
さらに、農薬で土地がやせ、収穫が少なくなってきたために、新たに畑を拡大する
NPO(民間非営利団体)法人「シャンティ山口」の佐伯昭夫事務局長は「去年(2011年)5月の豪雨で、上がトウモロコシ畑で、ほとんど水が止まることができなくて。
一気に水が出てきて、あそこがえぐれて…」と話した
現地で活動する日本のNPOスタッフは、森林伐採で山の保水力が落ち、土砂崩れが増えたと指摘する
すると、養分が多い表面の土が流されるため、人々は、また新たに森を伐採し、畑を作るという、まさに「負の連鎖」
郡の職員は「これ以上、畑を拡大できません。
トウモロコシを植えた翌年は、コメやピーナツを植えるなど、ほかの作物に変える必要があります」と話した
行政側は、この連鎖を食い止めるための指導を行っているが、トウモロコシから得られる収入の魅力は衰えず、違法伐採が増えているのが現状となっている
経済発展か環境保全か、この選択は、モン族の人々だけではなく、世界中の全ての人に突きつけられた大きな課題といえる
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