ID : 13576
公開日 : 2009年 10月15日
タイトル
柔らかかった伎楽面 鼻が動いた
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://osaka.yomiuri.co.jp/shosoin/kataru/st91014c.htm?from=ichioshi
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元urltop:
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写真:
写真が掲載されていました
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宮内庁正倉院事務所による平成19年度の修理で、伎楽面「乾漆第16号」(酔胡従面)を修理した。これまで例のない修理となった。ぐにゃりと曲がっていた鼻と、へこんでいた下あごを、元に戻せたのだ。作ら
れて1200年以上経ったにもかかわらず、面が柔らかさを保っていたためだ。それはなぜだろうか。
正倉院宝物の修理は、現状維持を原則にしている。通常、形を元に戻したり、欠けているところを補ったり、色を塗り直したりはしない。心がけるのは、これ以上傷みが進まないようにということだけだ。順次進めてきた
伎楽面の修理でも、柔らかい毛の筆でほこりを取り除き、膠(にかわ)などを用いた水溶液で表面の絵の具層がはがれ落ちないようにするなどの措置を施してきた。「乾漆第16号」についても修復技術者らが同様の処置
を行った。
「ところが、補強をしようとそっとさわってみたら、大きく曲がった鼻が少し動いた」と、同事務所の成瀬正和保存課長が明かす。そこで、発泡材で作った棒状のものを面の裏側から鼻の内側に入れて支えとし、外側から
樹脂フィルムとシリコン樹脂チューブを巻いて少しずつ元の形に戻していった。そのうえで、漆を用いて補強した。へこんでいた頬や後頭部も、布海苔(ふのり)を少し混ぜた水溶液で柔軟性を持たせ、可能な範囲で形を
元に戻した。
少なかった漆
伎楽面のうち、木彫面は、桐などを彫るなどして造形する。これに対して乾漆面は、麻布を麦漆(小麦の粉と漆を混ぜたもの)で張り重ねて成形し、漆と木の粉をペースト状にしたものを表面に盛るなどして細部を造形
、顔の表情を表現している。普通はそのまま硬化する。
ところがこの「乾漆第16号」を観察すると、用いられた漆の量が少ないことがわかった。このため漆が麻布にじゅうぶん染み込まず、さほど硬くはならなかった。これによって完成当時から、やや柔らかい面となった。ま
さにその特質により、長い年月のうちに変形もしたが、今回、元の形に近づけることもできた。
成瀬課長は「当時の制作者が、意図的に柔らかく作ったかどうかはわからない」と話す。ただ、乾漆でできた宝物を今後修理する際に応用されることは間違いない。
「乾漆第16号」は縦28・4センチ、横22・8センチ。重さは300グラムで木彫面の半分ほどしかない。軽く、少し柔らかい伎楽面は、演じる者の顔によくなじんだのかもしれない。
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