ID : 6425
公開日 : 2008年 2月20日
タイトル
木製振動板ならではの濃密な音色 日本ビクター
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新聞名
ASCII.jp
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元URL.
http://ascii.jp/elem/000/000/107/107371/
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元urltop:
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写真:
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振動板に木材を使った「ウッドコーンスピーカー」は、もはやビクターブランドのスピーカーの象徴と言ってもいいだろう。それだけ個性的かつ画期的な技術である。
その木製振動板技術をカナル型イヤホンに投入したのが、日本ビクター(株)の「HP-
FX500」だ。ハウジングにも木材を採用し、見た目にも他製品との違いをアピールする。現時点での同社イヤホンのフラグシップモデルである。
日本ビクター「HP-FX500」。見ての通りハウジングも木製で、落ち着いた雰囲気
Point 1 ウッドドームユニット
最大の特徴は、もちろん木製振動板「ウッドドームユニット」の採用にある。振動板はスピーカーやイヤホンの内部にあり、入力された電気信号を音(空気振動)に変換する最後のキーパーツである。その形状や素材が
音質にもたらす影響は極めて大きい。
そこでビクターが着目したのが木材だ。木材は振動の伝達速度が速く、それでいて振動を適度に吸収するという振動板に理想的な特性を持つ。一方で成形加工が難しく、しかも変形しやすく割れやすいという弱点があり
、振動板としての実用化は困難を極めたという。最終的には日本酒をしみ込ませて軟化させるという手法でそこをクリアして、同社はウッドコーンスピーカーを完成させた。
木製振動板「ウッドドームユニット」(報道資料より引用)。イヤホン用に開発された木製振動板は、独自の薄膜加工技術により髪の毛1本の太さよりも薄く整形されている
本機に搭載されているウッドドーム振動板もその技術によるものである。前述のような木材の優れた音響特性により、全音域で美しい響きと自然な広がりが得られるとのことだ。
Point 2 音質向上のための細部の工夫
本機の音質はウッドドーム振動板のみで成り立っているわけではない。振動板を最大限活かすために、他にも様々な技術が投入されている。
外観からすぐに分かるところでは、木製の筐体がある。キャビネットの振動を抑え込むことでクリアな音質を目指すという手法もあるが、本機は“キャビネットもきれいに響かせる”という方向性でウッドハウジングを採用
したのだろう。外観や手触りに落ち着きを与え、モノとしての魅力を高めているのもポイントだ。
HP-FX500の内部図解(製品情報ページより引用)。異種素材を組み合わせることで振動を最適化するのは、オーディオではよくある手法。本機ではユニット後方のブラスリングの役割が大きい
ウッドユニットの背面にはブラス(真鍮)製のリングを搭載。比重の高い素材を用いることで、ユニットの振動を確実に受け止めて伝える狙いだ。ハウジング内部の「制振ジェル」はコードのタッチノイズを抑えるための
工夫だ。ちなみに、ブラスリングと制振ジェルは下位モデルの「HP-
FX300」にも採用されている。全体の構造は、カナル型ではあるが密閉構造ではないようで、背面にメッシュでカバーされたポートがある。そのため音漏れはカナル型としては大きめだ。
ケーブルの長さは0.8m、ストレート型プラグもコンパクトで、プレーヤーに差したときにも邪魔にならない。
イヤーチップは柔らかいシリコン製のものが3サイズと、低反発素材のもの(写真右下)が1サイズ付属する 本体と同梱する付属品(イヤーチップのぞく)。左からキャリングケース、本体、0.7mの延長コード
装着は普通に耳の下にコードを垂らすスタイルなので、違和感なく身につけられる
Audio Check!
連載で常用している再生環境(第3世代iPod nanoもしくはAirMac Express+DAC/ヘッドフォンアンプ izo iHA-1A)で、Appleロスレス形式の音楽ファイルを試聴を行なった。
女性ジャズボーカル、Jacinthaのアルバム「Lush
Life」から聴き始めた。実に陳腐な表現であるが、冒頭からウッドベースが実に“ウッド”ベースらしく響く。実際はそう単純なことではないのだろうが、“木材だからこそ出せる響きなのかもしれない”と思わされた。響きに加
えて重量感も適度。しかも緩い太さではなく、低域の締まりも備える。
ウッドハウジングの響きと構造のおかげか、音場の広がりもハイレベル。シンバルは空間に心地よく柔らかに配置される。ボーカルやサックスの輪郭はふわっとしていながらも明瞭と、理想的だ。
音場の傾向は「濃密」と表すのが適切だろう。女性ボーカルとギターのデュオ、FAKiEのアルバム「To The
Limit」は清涼な音場感を持つソースだが、これにも濃密さが加わる。しかし、この点は好みが分かれるかもしれない。いわゆるモニター調のドライな正確さを持つイヤホンではないと言える。
JUDY AND
MARYのアルバム「WARP」で確認してみると、音の分離や解像度も文句なしのレベルだ。エレクトリックベースのラインのドライブ感もよい。また、鋭く歪ませたエレクトリックギターの音色は突き刺さるでもなく鈍らせるでも
なく、美味しい耳あたりにしてくれている。ヒラリー・ハーンの「バッハ:ヴァイオリン協奏曲」でも同様で、解像度の高さと楽器個々の音色の豊かさが印象的だった。
総合評価
ソース音源の音声信号を忠実に再現するという方向性ではなく、どのようなソースもアコースティックな響きを感じさせる再生音となるイヤホンといえる。しかし、ソースを台無しにするような厚化粧ではなく、あくまでも
ソースを活かすための響きという範疇だ。
モニター志向の製品を求める方には合わないだろうが、忠実さにこだわらず、とにかく良い音、美しい音を聴きたいという人にはピタリとハマる製品ではないだろうか。
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