【57】とち
栃と杉の苗植ゑをへて山鳥を はなちたりけり矢板の岡に
(今上天皇陛下御製 昭和57年5月23日第33回全国植樹祭 栃木縣矢板市長井県民の森)
しづかなる若葉のひまに立房の とちの花さきて心つゝまし
(佐藤佐太郎)
木曽のとちを浮世の人のみやげかな
(芭蕉)
落葉高木。
高さ30m、直径2mにも達する。
北海道南部、本州、四国、九州に分布する。
東北地方に多く九州は少ない。
庭園樹、街路樹にも植えられるが、渓谷に沿った適湿の肥沃地を好む。
5~6月頃に枝頂に多数の黄白色の花をつけ、果実は倒円錐形で三裂する。
種子は光沢のある赤褐色の種皮をもち苦味があるので堅い皮をむいてから細かく刻み毎日水を換え10~15日間水にさらし、木灰を入れた温湯につけて苦味をのぞきさらに水にさらす。
これをすりつぶしもち米と一緒に練りだんごにして蒸したものがトチ餅で野趣があり美味しい。
材は淡黄褐色で板目が美しく柔らかで加工し易い。
漆器木地、机、家具、盆、板の間の地板、彫刻材、刳り物に使用し、パリの並木で有名なマロニエはこの木の仲間である。
県の木として栃木県が指定しており、県庁前の街路樹に植えられている。