【41】しいのき
酒ふくむさびしさにほふ椎の花
(水原秋桜子)
家にあらば筍に盛る飯を草枕 旅にしあれば椎の葉に盛る
(有馬皇子 万葉集)
(柯)、(シイ・ツブラジイ・コジイ)、常緑高木。
高さ20~30mに及ぶ。日本は東南アジアに生育する椎の中では北限であり照葉林をつくる重要な樹種である。
庭園樹、生垣、防火樹にも良い。樹皮は黒の染料となる。堅果は開花の翌年の秋熟す。渋味が少なく火を通すと甘味が栗に似て佳味である。
私の生家から6kmばかり離れたお宮に大きな椎の木があって、実のなる頃を覚えていて子供の足では往復12kmは大変であるのに出かけ、どっさり拾って帰り、ほうろくで炒り翌日小学校へ持参し得意になって皆と取り合って食べた事を思い出す。
材は水湿に強いから建築物の土台に、また鉄道の枕木に使われ、木理が美しいので机、盆、文箱等にも使用されている。また堅固なので器具、機械または薪炭材にもよい。
花の季節には山全体が黄色っぽく見えるので“椎の花心にもせよ木曽の旅”“旅人の心にも似よ椎の花”等、芭蕉の句がある。