しいのき
椎(シイ)、小樵(コジイ)、ツブラジイ、タイコジイ、マルジイ
高さ20~30mに及ぶ。日本は東南アジアに生育する椎の中では北限であり照葉林をつくる重要な樹種である。庭園樹、生垣、防火樹にも良い。樹皮は黒の
染料となる。
単にシイノキと言えばイタジイ類かツブラジイ(コジイ)
類かどちらを指すのか非常にあいまいで専門書によっても変わっている。そのうえ名前の通った別名があるのでさらに、ややこしい。関東ではシイノキとい
えばイタジイを指す場合が多いが、学術的にはツブラジイの方がシイノキの本家という人もいる。ここではツブラジイとしておく。
シイノキの語源はいろいろあって、はっきりしない。その中でも説得力あるものは、椎の歴史仮名はシヒで、強制する、無理に押して曲げる等の意味がある。
しいのきは刑具に利用されていて、刑具の木の意味があったと思われる。そう考えると、有馬皇子の歌はよりもの悲しさが強くなる。
家にあらば筍に盛る飯を草枕 旅にしあれば椎の葉に盛る
当時では普通はコノテガシワなどの大きい葉に盛るのであるが、単にそれがなくてシイの葉にしたのではなく、強制されて流されて行く意味をかけているの
だろう。
シーボルトはこの2つを区別していなかった。1830年に種子を鉄分を含んだ粘土に包んで、湿り気を失わないようにして、オランダに送った。この方法は当時
の日本人がクリの実を夏まで保存する方法だった。またこの方法は今でもぶな科の種子の保存や輸送に利用されている。
伊勢外宮の山は全部マルジイである。
堅果は開花の翌年の秋熟す。渋味が少なく火を通すと甘味が栗に似て佳味である。
材は水湿に強いから建築物の土台に、また鉄道の枕木に使われ、木理が美しいので机、盆、文箱等にも使用されている。また堅固なので器具、機械の部
材または薪炭材にもよい。
花の季節には山全体が黄色っぽく見える
高知県の西南部に生育するのはほとんんどがツブラジイで、昭和40年代から50年代半ばまで、床柱が多数生産された。すぎの人工絞丸太が大量に供
給されるようになってから、競争に負けてしまい、市場から消えてしまい、今は幻の銘木となってしまった。
高知県の人はこのシイノキの実をよく食べる。県内では不足するので、九州からも入れている。味はコジイの方がイタジイより勝る。
岐阜市は、昭和47年に市民から公募し「つぶらじい」を市の木に選定した。
千葉県松戸市は平成14年にスダジイ、ツブラジイの総称としてのしいの木を市の木に制定した。松戸では昔から風除けとして農家の屋敷周りにも植えられ
ており、保護樹木の指定が最も多く巨木に生長している。
シイノキの枯れ木をそのまま放置していると。他のどの木よりも早く椎茸が生える。シイタケの名前はここからと思われる。しかし不思議なことに、商業的に
行うシイノキの榾木(ほだぎ)に菌を埋め込む方法ではうまくゆかなく、クヌギ、クリやアベマキの方がうまくゆくそうだ。
- 学名
- Castanopsis cuspidata
- 科
- ブナ科
- 属
- シイ属
- 英名
- Japanese chinquapin
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