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新・木偏百樹

やなぎ

糸柳(イトヤナギ)枝剰柳、枝垂柳、垂柳。柳はヤナギ科ヤナギ属に属する樹木の総称だが、普通はシダレ柳をさすことが多い。 シダレ柳に代表されるヤナギ科ヤナギ属
のものを柳、ハコヤナギ、ネコヤナギなどを楊と区別して使われことが多い。柳の名の由来はいくつかあるが、魚を捕る「梁(やな]に使った木」からの転化というのが有力。
中国原産で、日本には奈良時代に伝わり、現在でも広く植栽されている。水辺を好んで生育する。日本では約90種以上と非常に多くの種類がある。雌雄 異株だが日本では雌株は少ない。 枝は下垂し、先は細長く伸びて、地面や水面に接するほど垂れ下がる。枝が垂れ下がる形からマユダマを付けて飾るのに使われており、マユダマヤナギと も呼ばれる。
平成12年のふるさと切手(愛知県]「柳とカエル」には、柳に飛びつくカエルを見つめる小野道風が描かれている。「幾度も失敗するが、ついに柳の枝に飛びついたカエル を見て、努力の大切さを悟った」の話は有名で、成し遂げることができる教訓として、戦前の国定教科書にも載せられていた。この話も、ヤナギの枝がたれて いなかったならこの話は生まれなかっただろう。
材は軽く、軟らかくて粘りのある性質のため、変わった用途がある。古来、義足や義手に用いられている。柳の炭は漆器、うるしのとぎ出しや、絵画用に適し ている。摩擦を受けて発火しにくいでトンネルでの巻揚げギアのブレーキブロックに使われる。
強度があるわけではないが、エネルギーを吸収する性質があるため、クリケットのバットには最良の材とされている。また卓球のラケット用としてもこの性質 を生かしている。卓球のラケットはヒノキが有名だが、利用者は少ないが柳のラケットは存在感がある。私も一本購入したことがあるが、相手からの圧力を 上手に避けることを言う「柳に風」と言う諺どおりのラケットだった。柳は合板の芯に入っているが、相手の強打を吸収するところがある。したがって攻撃には 向かず、必然的に守備のカットマンタイプのラケットとなる。 ヤナギは古代欧州で偉大なる母の木として尊敬されたが、キリスト教化のあとは魔女の木とされたようだ。ヤナギの下には、魔女とその仲間がいると信じら れていた。なぜなら彼女の魔法の箒はヤナギの長い枝で作ると知られていたからだ。
ヤナギには不思議なことに日本とヨーロッパ共に同じ感覚があり、共に二重のイメージが重なり合っている。生命の発生や物事のスタートなどのめでたさを 表す事と、悲嘆(ひたん]や死後の世界の両方のシンボルとなっている。おそらく、その形とヤナギ自身が持っている性質によるものだろう。英名のウィーピング ・ウイロウは悲しい涙を流すという意味だか、なるほどよくいったものと思う。
昔は、旅たつ人に、ヤナギの枝で丸い輪を作って手渡し惜別の情を表わした。柳には霊力があり、道中の安全と、ヤナギの生命力にあやかったものだろう。 また輪は還る(かえる]と同じ発音なので、いつか戻る事を願っていたのであろう。
コリヤナギの茎を編んで作った柳行季は、かっては旅行用としても、収納用としても大変重要な道具の一つだった。今ではあまり見かけないが、私の子供の 頃は自宅が会社の寮を兼ねていたので、社員の入出寮のたびに子供心でどんな人かという期待と田舎くさいトランクだという目で柳行李を見た。また、小学 校の1-2年の遠足には柳のバスケットに牛乳と食パンを入れて持っていったなつかしい記憶がある。1393
学名
Salix babylonica(シダレヤナギ)
ヤナギ科
ヤナギ属

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