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新・木偏百樹

たらのき

惚木、タラッポ、タランボ、トゲウド、ウドモドキ、マンシュウダラ、オニノカナボウ、トリトマラズ、ヘビノボラズなどの方言がある
幹は直立し、逆傘形の樹形で高さ2~6m。日本全土、サハリン、朝鮮半島、中国東北部、アムール、ウスリーに分布。荒れ地や、工事、がけ崩れ、山火事な どの跡地、伐採あとで隙間がてきた場所などに真っ先に生える先駆樹木である。日当たりが悪くなると枯れ死する、典型的な陽樹である。実を結んでから の寿命は短く、四五年で枯れる。
和名抄に「和名太良」とでているが、語源について書かれたものは非常に少なく、現在いくつかの説がある。樹皮が魚の鱈(たら)の皮膚に似ている、ウドの古名がツチダラと呼び、ここからタラノキに転化した、インドの仏教樹木の多羅樹(たらのき)にあやかってというのもある。一番可能が高いのは古い朝鮮語の「タッウルプ」からの転化というものである。
赤く紅葉したあと、落葉すると実だけが残り目立つ、熟して黒くなっている。この実はあまり知られていないが、甘く食べることができる。
たらのきの新芽は「?の芽」といい山菜の王者と呼ばれるほどうまい。ウドに似た独特の風味がある、少しほろ苦い、深みのある味だ。同じウコギ科のウドも 山菜の王者と呼ばれていて、大きくなると「ウドの大木」などといわれるが、樹木ではなく多年草の草である。
「?の芽」は舌触り、歯ごたえ、香りの三拍子揃った山菜の中でも最も美味しいもののひとつである。そのため、争って山菜採りが行われ、自分が採りに言っ たときには既に誰かに先に採られてしまっている経験をした人も多いだろう。アク抜きは必要なく、そのためさまざまな食べ方ができる。ちょうど親指ぐらいが よく、頭がほぐれかかっているようなものが一番美味しい。天ぷら、おひたし、胡麻(ごま)あえ、胡桃(くるみ)あえ、塩漬け、醤油焼、アルミホイルで包み焼きにして、トマトソース、生姜じょうゆでも食べる。近年は、ハウスの人工栽培もされている。全国 のスーパーにも出荷されていて、寒いうちからあるものはそれである。テンプラなどの商品になっていて、私たち家族も時々食べている。しかし味はやはり自 然のものの方がよいようだ。 アイヌの人たちは、トゲが悪魔もこわがるだろうと、魔よけに利用し、悪疫が流行ったりしたときには、集落の入り口の戸口、窓、水汲み場の近くにタラノキを 立ていたという。同様の事が各地でもある。
材は桐によく似ている。用途として箱、机、手鉤の柄、木魚、将棋の駒、盆、径木,マッチの軸、下駄、杓子(しゃくし)、擂粉木(すりこぎ)。燃えにくいこともあり、川魚や田楽の串焼き用の串材としても重宝された。 私が子供の頃、父がよく人に話していたことを思いだす。「ヤキモチ焼きの妻には、たらの芽を食べさせたらいい」と冗談めかして話してした。「?の芽を食う とシカの角が落ちる」と各地でいわれるからたらの芽のおいしさで妻の怒りの角を落とそうというオチである。
諺には「たらの木にもかかるはよいぞ」というのがあるが、これはとげのあるたらの木でも、ないよりましで、頼りに出来ないことはない、あるいは窮すれば何 にでもすがるのが人情だというの意味。
学名
Aralia elata
ウコギ科
タラノキ属
英名
Angelica Tree

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