すぎ
杉の語源は、幹がまっすぐに直立していることから「すぐ木(真っすぐな木)」といわれている。幹はまっすぐで円錘状のシルエットになるが、成長の衰えたものは先が円くなって卵形に近くなる。日本で最も高く、樹齢も
千年を超えるものあり、長寿の木。しかし、公害には弱く、都市部には残念ながら見るべき大きなき木はあまりない。
昔から全国に群生していたようで、弥生時代には既に生活に必要な資材であったようだ。登呂遺跡から、住居、農具、土木資材などの木材が発見されてい
る。約8haの水田の畦や水路には何万枚もの矢板で土留めされていた。
昔から盛んにその地方に合う杉を開発し植林がされてきた。そのため品種も多い。量的に多いことと、木の性質がよいこと、そのためあらゆる用途に利用さ
れてきた。西欧の「石の文化」に対して、「木の文化」といわれる日本の文化を支えてきたからである。
日本森林面積は2515万ha、その中で1040万haが人工林、その中の58%が杉である。
国の天然記念物は49箇所もある。昭和63年の環境庁の調査によると、兵庫県八鹿町の妙見名草神社の杉が高さ72mで日本一の高さになる。また2000年
の同調査では全国での巨木といわれる樹木は550種、64479本あり、そのうち杉は14869本あり2位のケヤキの8538本を引き離している。
材質は木理通直、特有のいい香をもっている。気乾比重は平均0.45で、日本産の針葉樹としてはやや軽軟といえる。心材の耐久性、保存性はやや高いが
、辺材は低いので、この部分はエクステリアには使えない。加工は普通だか、家具、クラフトにはやや荒く感ずる。乾燥は比較的容易。
利用用途は他の木に比べると格段に多い。建築材が一番多く、その他家具、樽や桶、下駄、割箸、土木用材、ウッドデッキ、、枝葉は線香等。樹脂は薬用
にも利用する。心材に含まれる精油は、木香(キガ)といい、防腐効果もあり日本酒に加える。そのため日本酒には酒樽が欠かせず、それで植林が始ったといわれる。
杉の樽や桶は同じようだが木の利用の仕方が異なり、木の性質をうまく利用している。酒・醤油の樽は赤身の板目だけを使い、お櫃(ひつ)や桶などは柾目を使う。これは板目が水を遠さないのに対し、柾目は適度に水分を吸わせて外に出させるからである。鮨桶(すしおけ)やお櫃(ひつ)ではご飯の水分を適度に吸い取ることによって、しゃっきりとして、べとつかない。
酒樽は育った土地によって異なる杉の性質を利用している。樽の胴体部分は吉野杉が最適で香りも高い。しかし吉野杉ばかりだと、香りが強すぎて1週間
ももたない。そのため蓋と底は香りの薄い九州地区の杉を使って、香りの期限を延ばしている。
ウィスキーに杉を使った例もある。サントリーが発売しているウイスキー「座」は、熟成させる樽の鏡(蓋)の部分に杉を使った杉樽原酒をブレンドしている。
そのため杉の香りがほのかにあり、日本料理との相性がいいようだ。この世界でも初めての試みに対し、日本生理人類学会の認定する「PAデザイン賞」を
受賞している。
毎年春になると花粉症が発症する。杉花粉が原因のひとつであることは事実であろう。患者数は約1300万人で、今後も増加し続けると予想されている。杉
の花粉は、都会よりも山の中のほうが大量に飛んでいるのに、花粉症の患者は都会のほうが多いし、はるか昔から植林をしていたのに、このような問題は
なかった。そこで原因は、花粉単独ではなく、生活慣習や大気汚染も大きく関わっていると思われる。ディーゼル車の排気ガス規制が強化されれば、花粉
症も減るかも知れない。また、杉の間伐をきっちりとすることも、その対策になる。間伐をする事は山を生かし続ける事と、花粉症対策との2つの重要な仕事
である。
- 学名
- Cryptomeria japonica
- 科
- スギ科
- 属
- スギ属
- 英名
- Japanese Cedar
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