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新・木偏百樹

しゅろ

シュロの名は中国名の棕櫚を音読みにしたもの。
古くは棕櫚(すろ)、須呂乃岐(すろのきといっていた。別名 に棕櫚(しうろ)、和棕櫚(わじゅろ)、種路(しゅろ)があり、『枕草子』などの古典文学や『本草和名』、『大和本草』、『和漢三才図会』などにもみられる。 高さ10メートルぐらいに伸びた幹には、暗褐色の繊維でおおわれている。枝は全くなく、頂上に一ヶ所にかたまり、四方に出た葉は80センチ以上にも伸び る。本来は南九州の原産である。日本国内広く暖地に植栽され、ヤシ類の中では耐寒性が最も強く北は東北地方まで栽培されている。鳥がシュロの実を 食べてその実をばらまくので和歌山県、四国、九州に自生する。5月頃、葉の間に下を向いた太い肉質の円錐花序を出し、下部には、黄色の大きな包葉が あり、寿司ネタのウニ(卵巣)のように見える小さな粒状の黄白色の花を無数に開く。果実は直径1cmぐらいのいびつな球形で、穂の上に群がってつける、10月には熟し黒 色になる。この実は鳥の好物である。
現代のように化学繊維のなかった頃は、この繊維を棕梠縄としてよく使われた。棕梠縄は湿気に強いため、屋外で利用する垣根などを結ぶ縄、井戸の釣 瓶や船舶の係留には欠かせない物であった。新しく植えた木とそれを支える支柱を結ぶのにこのシュロ縄を使うが、これが腐る頃には木の根は充分に張っ て再度くくる必要がない。
シュロ皮で敷物等を編み、ほうき、みのを作る。若い葉は漂白して帽子、敷物、下駄やぞうり用の表を編む。
よく似たものに、中国原産のトウジュロがあり、日本でも広く栽培され、特に関西地方に多い。葉はシュロより小型で、葉も小さく葉柄も短く、葉先はシュロが 垂れているのに対し、上に向いている。中国から渡来したのでトウジュロの名がついたが、中国名の棕櫚の本物はこれである。トウジュロに対しシュロをワジ ュロと呼ぶこともある。
材は年輪がなく、繊維の集まった状態となる。床柱、欄干(らんかん)、鉢、盆、鐘楼(しゅろう)の撞木(しゅもく)などに用いられる。
キリスト教のカレンダーでは「しゅろの日曜日」という特別な日があり、世界中で行事がある。この日曜日は、キリストが最後にエルサレムを訪れた日である 。受難がここから始まる。民衆にしゅろの葉をもって迎えられたが、翌木曜日は最後の晩餐になり、翌々日の金曜日に十字架にかけかけられて処刑された。
聖書に出て来るシュロは口語訳と新共同訳とで出てくる箇所が異なっている。前者は2箇所、後者11箇所でてくる。またなつめやしは前者が34箇所、後者 が32箇所ある。説教や書物にも、しばしばなつめやしを日本のシュロとなっているが、同じ箇所でも訳本によってなつめやしとシュロとがあり、どうも混同して いる。同科異属
であきらかな別物であり、日本のシュロを見て、聖地のナツメヤシを想像するのはどうかと思う。
学名
Trachycarpus fortunei
ヤシ科
シュロ属

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