しなのき
(柀)、高さ15~20mになり日本特産。北海道から本州、四国、九州、対馬、中国東部等温帯に生育する。シナノキ属
のものは日本では造園に使われることが少ないがヨーロッパでは重要な並木、公園木の一つであり、世界四大並木樹種の一つである、ドイツでリンデン
というのはこの類の西洋種のセイヨウシナノキで、シューベルトの歌曲「冬の旅」の「菩提樹」や「若きウエルテルの悩み」にでてくる。シナノキの仲間に日本
では主に2つあり、シナノキとオオバボダイジュである。釈迦が悟りをひらいたことで知られているボダイジュはクワ科でまったくの別種で、ややこしくなってい
る。このようなことから木材関係者ではシナノキをアカジナ、オオバボダイジュをアオジナと材の色から呼ぶこともある。命名のときにオオバボダイジュは、オ
オバシナノキとしていたらわかりやすかったのだろう。
しなのきには「科」の字を当てる場合もあるが、木材、建築関係業界では、?と書くのが普通になっている。?合板は建築関係者ならみんな知っている。ラ
ワン合板や針葉樹合板にはない美しさがある。
?は国字で、こまいとよみ、軒のたるきに渡す材と、壁の下地に使う竹で編んだものの意味で、なぜ古くからこの文字がつかわれたのかわからない。
シナとつく地名の多い長野県に
は古くからシナノキが多くあって、信濃といういい方も、シナノキを多くある野という意味だったのだろう。
語源は皮がシナシナとするからとか、樹皮が白いからとか言われることもあるが、アイヌ語でシナノキのことをニペシニといい、縛ることをシナ、きつく縛るこ
とをシナシナという。シナノキはその樹皮が非常に有効に利用でき、山村の人々には生活に密接な関係がある樹であった。。防水性が高く、冬は保温性がよ
い。山中では尻敷きに使ったり、背中につけたり、とても使い心地がよい民具である。そのためきこり、炭焼き、畑作業などの男性のほとんどが使っていた。ま
た全国各地でこの繊維から布や縄、畳糸などを作ることが行われていた。現在でも船綱、布、酒・醤油の袋、蚊帳等に使用する。
夏に40個くらいの淡い黄緑色の花を葉のわきから垂れ下った集散花序につける。香りがあって、この花から採れた蜂蜜はとくにシナ蜜とよばれ、すぐれた香
りを持ちために良品である。材は軽軟であるが木理は緻密で、辺材は淡黄白色、心材は淡黄褐色で板にすると美しい波状紋が出来る。保存性、水湿に弱
いが、その他の欠点が少なく、家具材、建築材、、楽器材、彫刻材、箱材、鉛筆材、マッチ軸木、割箸、アイスキャンデーの棒やアイスクリームのへら、経木<
span bbb>(きょうぎ)、アイヌの熊彫など広い用途をもつ。また塗装の仕上がりが良いことからかつて音響家電などののキャビネットに利用される。。最近ではラン
バーコアー合板が人気ありシナノキは最も重要な用途。問題があるのは一部の接着剤の接着力不足やセメントや釘との相性はよくない。
シナノキの天然記念物の指定されている巨木は多くないがそれでも10本以上ある。シナノキの巨樹をたずねたことがある。軽井沢は夏の間は観光客でご
った返しているが、碓氷峠の頂上付近にある、熊野神社はひっそりしていた。社殿の左手、つまり信濃の側に、樹齢八百年の?の巨樹ががそびえている。
シナノキでは国内最大で長野県指定天然記念物。
- 学名
- Tilia japonica
- 科
- しなのき科
- 属
- シナノキ属
- 英名
- Japanese Linden
43/100 ページ