しきみ
宮城、石川県以西の日本各地、台湾、中国に分布する。書籍によってはモクレン科に含まれているが、最近はシキミ科になっている。
漢字では櫁をあてるが、?と書くこともある。菩提樹が、釈迦ゆかりのインド由来であるのに対して、シキミは日本独自の仏教木。しきみの切花をお墓に備
えるのは全国的な風習である。別名や方言はこれらの意味や枝や葉を切ると香りがすることから、香の木(こうのき)、香の花、香柴、抹香木(マッコウノキ)、墓花(ハカバナ)、、花榊(ハナサカキ)、花木(はなのき)、仏花(ほとけばな)、仏前草(ブツゼンサウ)、多香木(タカボク)と呼ばれている。
シキミは枝・葉・果実のいずれにも有毒成分を含んでいて、特に果実に含有量が多く毒性が強い。果実が裂けてこぼれ落ちた種子は鮮やかな紅色で、光
沢があって美しく、甘いが、食しての死亡例もある。シキミの葉をもんで小川の中に入れると、魚が死んで浮いてくるほどの毒性をもっている。シカなどはこ
れを絶対に食べない。昔は墓地に土葬で埋葬したが、これをオオカミが掘りかえすのを防ぐため動物の好まない臭気あるものを廻りに植えた。死臭に敏感
なカラスでも、シキミのにおいを嫌い寄りつかない。同様にシキミの葉を棺に入れる風習があるのは屍臭を消すためとも、屍体を狼などから保護する意味が
あったと思われる。
シキミは昔から神事用のサカキの一つであって、神仏両用に使われていた。、平安時代以降はもっぱら仏事に使用されるようになったが、京都の愛宕神社
ではシキミを神木としており、伊勢神宮では、シキミをハナサカキと呼んで神事に使用している。
東京などでは彼岸の墓参ころになるとシキミが不足することからアセビの枝がよく代用されている。
和名の「シキミ」は重実(しげみ)の意であるとか、葉の繁みからきているとかも言われるが、実が有毒なので、悪しき実の意味から“ア”が略され「シキミ」になったという貝原益
軒の『大和本草』の説が一般に受けいれられている。
樹が小さいので利用は限られるが、清楚で美しい味を持つ材である。木理はやや粗い。比重は0.67。心材は淡紅褐色、辺材は黄白色。心辺材の境界は
あまり明瞭ではない。強度は中ぐらいで比較的硬い。箱根細工の茶色・桃色用の木象嵌、寄木細工、棒などの旋作物、珠数、小さな彫刻材、薪炭材などに
使われ、かって傘の柄、鉛筆材に用いられたこともあった。
3月から4月にかけ、直径3cm前後の淡黄色の花を葉のつけ根につける。果実は袋果で扁平で2~2.5cmになる。外部は柔かく秋に熟してそれぞれ内側か
ら裂開し黄褐色で光沢のある種子を勢いよくはじき出す。
どこまで根拠があるかわからないが、いぼや眼病にはシキミを浸した水をつけるとよいといい、船酔い除けにはシキミの葉をへそにのせるとよいという、また
病人の布団の下にシキミの枝を入れておくと早く治るともいう。行商にシキミの木で作った天秤棒で担ぐと肩が痛まないとも、商売繁昌するもいわれた。
- 学名
- IIIicium religiosum
- 科
- シキミ科
- 属
- シキミ属
- 英名
- Japanese Anise-Tree
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