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新・木偏百樹

からたち

唐橘・枸橘(カラタチバナ)、枳穀(キコク)、臭橘(クウキツ)、枸橘(クキツ)、下酢(ゲス)、 中国揚子江上流が原産。日本への渡来は古く1646年渡来、万葉集にすでにその名がある。「カラタチ」は唐橘、すなわち唐から来た橘との意である。北海 道から沖縄まで見ることができる。柑橘類のなかでは、最も耐寒性があり、病気にも強いため生け垣によく用いられる。枝は緑色1~7cmの長いとげは人だ けでなく、犬や猫も潜り抜けは不可能。ホームページ用の写真を撮影した時にトゲにささったが、蟻酸が含まれていているため、刺されるとヒリヒリと結構痛む 。
春の終り葉に先立って五弁の小白花を開き、秋に3~4cmの球形の実となり、熟すると黄金色にかがやき、はずむような感触がある。かすかに香るが、酸 味強くタネも多く、食用にはならない。アゲハチョウが卵を産み、幼虫が葉を食い尽くしてしまっうことがあるのが悩み。
果実は乾燥し、薬用に珍重される。未熟果を輪切りにして干したもの枳穀(きこく)、丸のまま干したものを枳実(きじつ)といって健胃、利尿、去痰(きょたん)、に利用される。わが国への渡来は、やはりもとは、この薬用であったと思う。
日本の栽培甘橘類は大部分カラタチを台木として接ぎ木され繁殖されている。親和性があり、接いだ木の結果が早く、品質も良く、中国では800年前にすで に接ぎ木の記録がある。子供のころ、学校への往復にいつも見て通った垣根の枳を懐かしんで詠んだ北原白秋の「からたちの花」は、山田耕筰の曲と相ま って日本歌曲の代表的名作となった。
また、私の中学時代に島倉千代子さんの「カラタチ日記」が大ヒットし、ラジオからいつも流れていて、クラシック好きの私には、たまらく日本的で嫌だった。そ して大学四年の時、千里万博でお祭り広場の楽屋で働いていたが、その本人に何度もインスタントヒコーヒーを差し上げる機会があった。
その時以来、彼女の人間性に惹かれファンになっている。
四字熟語に南橘北枳(なんきつほくき)というのがあるが、これは「晏子(あんし)春秋の中のことわざで、揚子江の南ではおいしい実をつけるみかんも、それを揚子江の北に移植すると、食べられない枳(からたち)になってしまう。
風土の違いが、人の気質などを左右すると、また環境によって人間は変わるという譬えである。
また、日本では和漢三才図絵に「東北地方に蜜柑を植えるとカタラチになる」という記載もある。
学名
Poncirus trifoliata
ミカン科
カラタチ
英名
Trifoliate Orange

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