5 |
ヤナギ |
柳行李 |
底の一、二枚は柳行李の編目が凸凹についた |
5 |
ヤマモモ |
楊梅 |
「来ました、十市の楊梅(やまもち)が」 |
5 |
行李 |
行李 |
去年は、行李の底の衣類についた |
6 |
行李 |
行李 |
行李のように |
6 |
樟脳 |
樟脳 |
風を通せば樟脳の匂いも散り、 |
6 |
樟脳 |
樟脳 |
薄くなった去年の樟脳を拾い上げた。 |
6 |
木 |
木の |
木の箱形で、 |
8 |
モモ |
桃 |
桃には黒い亀蔵と白桃とがあり、富田では岩伍がとくに黒桃の太いものを |
8 |
モモ |
白桃 |
桃には黒い亀蔵と白桃とがあり、富田では岩伍がとくに黒桃の太いものを |
8 |
モモ |
黒桃 |
桃には黒い亀蔵と白桃とがあり、富田では岩伍がとくに黒桃の太いものを |
8 |
モモ |
桃 |
その桃を、もう五、六年も前から富田では |
8 |
ヤマモモ |
楊梅( |
楊梅(やまもち)は、土佐の海岸地方に生る特有の果実で、思わず頬を絞るほどの美味(うま)さがある代わり、これほどに傷み易いものもないといわれている。 |
8 |
ヤマモモ |
楊梅 |
楊梅(やまもち)は夏病み除けとして大仰に喜ぶ。 |
8 |
ヤマモモ |
楊梅 |
味噌漉しの底の奉書が楊梅の汁でどっぷりと紫に染められ、 |
8 |
ヤマモモ |
楊梅の実 |
甘い汁をたっぶりと含んだやわらかな楊梅の実は、 |
8 |
ヤマモモ |
楊梅 |
楊梅はむろ蓋の中でころころと転がり、 |
8 |
ヤマモモ |
楊梅 |
「楊梅の選(よ)り食」が始まり、ときには |
8 |
果実 |
果実 |
楊梅(やまもち)は、土佐の海岸地方に生る特有の果実でも |
8 |
実 |
実 |
朝捥(も)いだ実は昼下がりにもう汁が滲んで饐え始め、 |
8 |
木 |
木 |
ぱっといちどきに木が黒むほど熟れ田と思うと、 |
8 |
木 |
木 |
十市の姐さんの家の木のものばかりを買うのであった。 |
9 |
ヤマモモ |
楊梅 |
「楊梅食うに、核(さね)を出す馬鹿があるか」という通もいるにはいるけれど、 |
9 |
ヤマモモ |
核 |
舌の先で核を弄(もてあそ)ぶようにしながら果肉だけを食べるのが安心なのであった。 |
10 |
ヤマモモ |
楊梅 |
姐さん、あの楊梅はえーえ、というのを一丁やってや。 |
10 |
ヤマモモ |
楊梅 |
ええーえ、楊梅はえーえ、、今朝採りの十市の楊梅、 |
10 |
ヤマモモ |
楊梅 |
ええーえ、楊梅はえーえ、、今朝採りの十市の楊梅、 |
10 |
ヤマモモ |
桃 |
潮風によう吹けた桃はえーえ、 |
10 |
木遣 |
木遣の名人 |
十市村の木遣の名人であることを知っていて、 |
11 |
ヤマモモ |
楊梅 |
十市の楊梅が入ると、岩伍は外に |
12 |
ヤマモモ |
楊梅 |
好物の楊梅をつまむのであった。 |
12 |
ヤマモモ |
楊梅 |
上町の吉沢医院の先生にもこの楊梅を届けてあげては |
12 |
ヤマモモ |
楊梅 |
楊梅も十市の亀蔵の走りなら |
12 |
ヤマモモ |
楊梅 |
上町の上品(じょうび)た暮らしの先生が楊梅など日になさるろうか、 |
15 |
櫛 |
櫛 |
序(つい)でに櫛も笄(こうがい)もよう拭いてから |
16 |
庇 |
庇 |
広くもない往来の庇から、盲(めくら)の茂八ちゃんの |
17 |
木杓子 |
木杓子 |
丸焼芋を木杓子で掻き出す、 |
18 |
カラタチ |
枳殻 |
右は枳殻の垣を廻らせた瓮屋の |
18 |
ヤマモモ |
楊梅に |
喜和は、楊梅に限らず町内に配り物を |
19 |
キリ |
桐油 |
上町の傘屋も桐油(とうゆ)が匂うけれど、 |
19 |
杓子 |
杓子 |
箒や炭籠や杓子や鍋まで思い出し放題に |
19 |
炭籠 |
炭籠 |
箒や炭籠や杓子や鍋まで思い出し放題に |
19 |
梁 |
梁 |
この店は雨合羽やら油紙など梁に吊してあるから、 |
20 |
イチョウ |
大銀杏 |
お稲荷さんの大銀杏が影を落としているだらだら坂を、 |
21 |
びんづけ |
びんづけ |
いつもの金蜘蛛印のびんづけと、 |
21 |
櫛 |
櫛 |
櫛を固く握り絞めている下梳きに向かって、 |
21 |
板 |
板の間 |
石水では、板の間を四角に落としてそこら客の足を入れ、 |
22 |
びんつけ |
びんつけ |
力入れるはびんつけ付けて梳き上げるときだけ」 |
22 |
櫛 |
櫛 |
櫛を立てて髪の根を掘ったら、 |
23 |
櫛 |
梳櫛 |
目の細かい両歯の梳櫛に毛たぶを挟んで丁寧に |
26 |
木戸 |
木戸札 |
たかが木戸札一枚の話に、 |
28 |
杉皮 |
杉皮 |
杉皮で葺いた一間限りの家にずっと住んでいたから、 |
29 |
えのき |
榎 |
古い榎の下で小枝を拾い、その小枝焚き付けに両手で掬った鋸屑を振りかければ、 |
29 |
鋸屑 |
鋸屑 |
濡れた鋸屑を踏んで家に出入りをするのであった。 |
29 |
鋸屑 |
鋸屑 |
鋸屑は土の肌を斑に見せて厚く薄くいちめんに撒かれていて、 |
29 |
鋸屑 |
鋸屑 |
鋸屑は扱いうにこつがあり、気短な手付きで一度にどっさりと振りかけると小枝の火は忽ち消えてしまう。 |
29 |
鋸屑 |
鋸屑 |
鋸屑は次第に短い炎となってちろちろと揺れ、やがては赤い粉の燠(おき)に変わり、 |
29 |
鋸屑 |
鋸屑 |
喜和は,鋸屑が早来赤い粉の燠を、とても綺麗だといつも思った。 |
29 |
小枝 |
小枝 |
古い榎の下で小枝を拾い、その小枝焚き付けに両手で掬った鋸屑を振りかければ、 |
29 |
小枝 |
小枝 |
古い榎の下で小枝を拾い、その小枝焚き付けに両手で掬った鋸屑を振りかければ、 |
29 |
小枝 |
小枝 |
鋸屑は扱いうにこつがあり、気短な手付きで一度にどっさりと振りかけると小枝の火は忽ち消えてしまう。 |
29 |
薪 |
薪 |
薪の切れたときの重宝な燃料となった。 |
29 |
燠 |
燠 |
鋸屑は次第に短い炎となってちろちろと揺れ、やがては赤い粉の燠(おき)に変わり、 |
29 |
燠 |
燠 |
燠は風の加減できらきらと呼吸し、 |
31 |
せんだん |
栴檀 |
一文橋の袂の栴檀の木の下にまで行けば、 |
31 |
木 |
木の下 |
一文橋の袂の栴檀の木の下にまで行けば、 |
32 |
シュロ |
棕櫚縄 |
太い丸太が棕櫚縄に繋がれて水面いっぱいに |
32 |
センダン |
栴檀 |
秋は黄色く萎んだ栴檀のまるい実を前掛けいっぱい拾うことも出来る |
32 |
センダン |
栴檀 |
栴檀の小蔭には葦簀(よしず)囲いの店を |
32 |
丸太 |
丸太 |
太い丸太が棕櫚縄に繋がれて水面いっぱいに |
32 |
実 |
まるい実 |
秋は黄色く萎んだ栴檀のまるい実を前掛けいっぱい拾うことも出来る |
32 |
製材所 |
製材所 |
この頃では川向かいに製材所が出来、 |
32 |
木蔭 |
小蔭 |
栴檀の木蔭には葦簀(よしず)囲いの店を |
33 |
丸太 |
丸太 |
さっきまで丸太を浮かべていた青い水面も余すところなく |
39 |
丸太 |
丸太 |
喜和の足もとから丸太を浮かべてある水際まで、 |
39 |
木 |
丸い木 |
丸い木の編機の底から少しずつ編み出される紐が、 |
46 |
木 |
木 |
木で鼻を括ったようなものいいは客に対して無愛想だから |
54 |
つつじ |
つつじ |
丹精したつつじの庭園が自慢だということを |
54 |
梅鉢 |
梅鉢 |
沢山の梅鉢が見事で、 |
57 |
材木 |
材木商 |
材木商であった父祖の財を |
57 |
植込 |
植込み |
中庭の植込みまで |
59 |
飯櫃 |
飯櫃 |
飯櫃の蓋までも取られてしもうたそうな。 |
66 |
カシ |
赤樫 |
赤樫の一寸五分板に挽いた大きな吊看板で、 |
66 |
木肌 |
木肌 |
木肌の上には名の通った |
67 |
格子 |
格子戸 |
素通しの格子戸で、その格子戸と土間を |
68 |
木戸 |
裏木戸 |
離室(はなれ)の裏木戸を通してお巻さんは |
69 |
下駄 |
駒下駄 |
藤表に鰐皮(わにがわ)横緒の駒下駄を再び穿き、 |
69 |
木戸 |
裏木戸 |
また裏木戸から二人して帰って行った。 |
72 |
灰吹 |
灰吹 |
寒餅と灰吹は溜まるほど汚い。 |
72 |
戸袋 |
戸袋 |
それを門口の戸袋に飯粒で貼り付けた。 |
77 |
溝板 |
溝板 |
半ば腐った溝板を越してじゅくじゅくと |
80 |
小枝 |
小枝 |
その下には枯れた小枝が白く枝なりに灰を残して |
81 |
小枝 |
小枝 |
老婆がそのままの手で小枝を籠の奥へ |
81 |
木蓋 |
木蓋 |
散りかかった鍋の木蓋を摘まんで、 |
83 |
スギ |
杉皮 |
屋根の杉皮が朽ちて黒い蔓草のように軒に垂れている |
90 |
妻楊枝 |
妻楊枝 |
妻楊枝を削って細々と暮らしを立てている |
98 |
梯子 |
梯子段 |
灯りの届かない梯子段下の土間に、 |
105 |
柄 |
柄 |
柄杓など柄のうげ替え、薪割り、 |
106 |
ウツギ |
卯の花 |
卯の花を燻ってまるめ青魚を |
106 |
下駄 |
下駄 |
下駄の歯替えまで、 |
106 |
薪割 |
薪割り |
柄杓など柄のうげ替え、薪割り、 |
107 |
ナンテン |
南天 |
中庭の南天の木の脇に張板を立掛け、 |
107 |
格子 |
格子戸 |
表の格子戸の開く音がしたと思うと、 |
107 |
木 |
木の脇 |
中庭の南天の木の脇に張板を立掛け、 |
113 |
薪 |
薪 |
男衆相手に柄杓しゃもじから薪、箒まで |
123 |
櫂 |
櫂 |
舟でいえば、漕ぎ抜けて北あとの櫂を、 |
123 |
櫂 |
櫂 |
櫂は三年艪(ろ)は三月、操りかたをやっと憶えた櫂も、 |
123 |
艪 |
艪 |
櫂は三年艪(ろ)は三月、操りかたをやっと憶えた櫂も |
125 |
ミカン |
蜜柑 |
底豆の皮を剥いたり紅蜜柑や薄皮蜜柑に爪を立てて、 |
126 |
太棹 |
太棹 |
太棹に乗るような声は出来ないが、 |
126 |
木戸 |
木戸銭 |
木戸銭の段違いに安いせいもあって客は |
133 |
キンカン |
金柑 |
「金柑の目」と皆が綽名(あだな)を付けており |
133 |
みかん |
蜜柑 |
「蜜柑金柑こちゃ好かん」と茶化しているのを |
136 |
ちゃ |
茶の香り |
あの山吹色の、甘い茶の香りで秋の茶漬飯はつい"手盛り八杯"という按配(あんばい)になって来る。 |
136 |
梶棒 |
梶棒 |
その梶棒に下っている真鍮の鉦の音を聞くと、 |
141 |
植込 |
植込 |
中庭の植込みを隔てた奥にあり、 |
143 |
つばき |
椿 |
蜥蜴は悠々と椿の根元に逃げ込んでしまったが、 |
143 |
つばき |
椿の木 |
許せぬ思いで椿の木の暗がりに向かって、 |
155 |
チャ |
茶の葉 |
競走馬が茶の葉の食べさせすぎで死に、 |
155 |
梁 |
梁 |
釜屋から梁を伝ってやってきたものと見える。 |
156 |
床 |
籠(こばん)の床 |
籠(こばん)の床も毎日取り替えて可愛勝手いた物であった。 |
157 |
シュロ |
棕櫚縄 |
棕櫚縄梯子を高いながら下りて行ったが、 |
157 |
下駄 |
下駄 |
誰かが下駄の先で、 |
157 |
桃色 |
桃色 |
桃色の地肌は妙に鮮やかに |
158 |
サカキ |
榊生け |
神棚の榊生けの奥に隠し、釣り銭の五厘一銭を |
161 |
猫板 |
|
長火鉢の猫板の上に暫く封書を載せて |
162 |
クスノキ |
楠木 |
梢が時計台の先端に届くほどの巨大な、梢が時計台の先端に届くほどの巨大な、由緒ありげな楠木が幾株も根を張っている。 |
162 |
根 |
根 |
由緒ありげな楠木が幾株も根を張っている。 |
162 |
梢 |
梢 |
梢が時計台の先端に届くほどの巨大な、 |
164 |
拍子木 |
拍子木 |
兄に代わって拍子木を持ち、 |
164 |
櫓 |
櫓 |
父親の釣りにはいつも艫(とも)に座って櫓を漕ぎ、 |
166 |
上り端 |
上り端 |
上り端(はな)に腰掛けたりたったりの |
166 |
飯櫃 |
飯櫃 |
一人で飯櫃(めしびつ)から飯をよそい、 |
167 |
箸 |
箸 |
箸を置いて二人を窺うと、 |
168 |
下駄 |
下駄 |
健太郎は下駄を穿いて何処かへ出て |
168 |
蓋 |
蓋 |
「風呂桶の蓋」 |
168 |
風呂桶 |
風呂桶 |
「風呂桶の蓋」 |
176 |
格子戸 |
格子戸 |
表の格子戸が開くと |
176 |
梯子 |
梯子段 |
梯子段の下の暗がりで |
176 |
梯子 |
梯子段 |
梯子段を一段上り、 |
177 |
板の間 |
板の間 |
その両足をすっくりと下ろして板の間に立ち、 |
178 |
行李 |
行李 |
行李ひとつ舁(か)くにもふらふらしていた子が、 |
184 |
ろうそく |
蝋燭 |
風呂場の棚に揺れている蝋燭の儚(はか)ない炎に向かってさえも、 |
187 |
イチョウ |
銀杏 |
銀杏の並木を植え揃えた道の両替には、 |
187 |
並木 |
並木 |
銀杏の並木を植え揃えた道の両替には、 |
188 |
サザンカ |
山茶花 |
庭の山茶花の蔭から見える棟の建物はとうやら |
194 |
クチナシ |
梔子 |
梔子(くちなし)などとりどりに一色の㟦(ぼ)かしか、 |
200 |
大工 |
大工 |
本人は名のある棟梁について大工の見習いをしていると触れているけれど、 |
200 |
梯子 |
梯子段 |
誰かがゆっくりと梯子段を上がって来て襖の前で止まった。 |
200 |
棟梁 |
棟梁 |
本人は名のある棟梁について大工の見習いをしていると触れているけれど、 |
209 |
ビワ |
枇杷 |
じっとり揺れた大粒の枇杷の実のような裸電燈が |
209 |
看板 |
庵看板 |
傍ら庵看板を手の腹でぴたびたと叩きながら、 |
209 |
木戸 |
|
豊栄堂の木戸口が見える。 |
209 |
木戸 |
木戸口 |
高く巻きつけて木戸口に進み寄り、拾銭の木戸銭を払う |
209 |
木戸 |
木戸銭 |
高く巻きつけて木戸口に進み寄り、拾銭の木戸銭を払う |
210 |
ボタン |
牡丹 |
咲き盛りの牡丹が一輪、 |
212 |
ボタン |
牡丹 |
舞台の牡丹には忽(たちま)ち呼吸が通い始め玉虫色の |
215 |
ミカン |
蜜柑 |
蜜柑から手拭、 |
217 |
櫛 |
櫛 |
櫛には垢を溜めず、 |
217 |
木履 |
雨木履 |
雨木履の泥、 |
220 |
材木 |
材木置場 |
宝栄座からさして遠くない材木町の材木置場に腰を下ろしているのであった。 |
220 |
材木 |
材木 |
生臭いほど木の香の立つ新しい材木の上には、 |
220 |
木 |
木の香 |
生臭いほど木の香の立つ新しい材木の上には、 |
222 |
木仏 |
木仏金仏 |
木仏金仏になれというのではないけれど、 |
223 |
縁側 |
縁側 |
嵌め込んである縁側に喜和を座らせて |
223 |
撞木 |
撞木 |
鐘も撞木の当たり柄、いい、妻は夫につれ、 |
226 |
-- |
鉄漿 |
鉄漿(かね)をつける習慣 |
226 |
チャ |
割木 |
土瓶の茶の葉を毎回換えず二、三度 |
227 |
マツ |
松 |
松の割木を気前よく籠に投げ込めば、 |
227 |
ヤマモモ |
楊梅 |
夏の楊梅、春の花見寿司と |
227 |
割木 |
割木 |
松の割木を気前よく籠に投げ込めば、 |
239 |
木履 |
木履 |
歯替えしたばかりの木履の歯を不器用に泥濘みに取られ取られ後を |
240 |
梯子 |
梯子段 |
梯子段の暗い隅に葛綿のような埃が丸く溜まっているのを |
241 |
カシ |
樫炭 |
固い樫炭を山に盛ったのを差し出す。 |
241 |
炭 |
樫炭 |
固い樫炭を山に盛ったのを差し出す。 |
241 |
燠 |
燠 |
「燠(おき)も埋けてえへん。仕様もないなあ」 |
242 |
盆栽 |
盆栽棚 |
盆栽棚の鉢も悉く乾いていて、 |
242 |
葉 |
一葉 |
短く切り揃えた筆で一葉一葉、 |
249 |
板 |
板 |
自分で板を打ち合わせた棺に入れて葬り、 |
252 |
格子 |
格子戸 |
階下の格子戸が荒々しく開き、 |
252 |
梯子 |
梯子段 |
梯子段が軋んだと思うと、 |
260 |
イチョウ |
大銀杏 |
お稲荷様の大銀杏の梢は闇の中に溶け込んでいるほどに辺りは暗く、 |
260 |
イチョウ |
大銀杏 |
大銀杏に棲む夥(おびただ)しい五位鷺の群れも |
260 |
スギ |
杉の柾目 |
杉の柾目の弁当を胸に抱えて、 |
260 |
梢 |
梢 |
お稲荷様の大銀杏の梢は闇の中に溶け込んでいるほどに辺りは暗く、 |
261 |
下駄 |
下駄 |
ひくひくと動かしていなければ下駄もろ共、 |
261 |
舟板 |
舟板 |
力を入れて舟板を填(は)めるたびに鈍い音が |
261 |
柾目 |
杉の柾目 |
杉の柾目の弁当を胸に抱えて、 |
261 |
門松 |
門松の支度を終えており、 |
もう残らず門松の支度を終えており、 |
262 |
櫓舟 |
櫓舟 |
櫓舟で素人は少々無理であった。 |
263 |
橙色 |
橙いろ |
カンタラの灯も橙いろにまるく滲んで見える。 |
264 |
寄木細工 |
寄木細工 |
寄木細工の思い箱が一瞬砕ける濁った音が |
264 |
木片 |
木片 |
バラバラに散った木片に混じって、 |
266 |
下駄 |
下駄 |
下駄を脱いで舟へ移ろうとするのへ |
267 |
胴板 |
胴板 |
朱の組紐を留めた胴板が目の前に漂って |
274 |
薪 |
薪 |
風呂の薪としている、傍の製材所の挽割線香を膝で二つ折っては、 |
274 |
製材所 |
製材所 |
風呂の薪としている、傍の製材所の挽割線香を膝で二つ折っては、 |
274 |
挽割線香 |
挽割線香 |
風呂の薪としている、傍の製材所の挽割線香を膝で二つ折っては、 |
279 |
根太 |
根太 |
足許の根太が抜け落ちたような心地であった。 |
279 |
障子 |
障子 |
これでこの家の障子の破れもまた一つ増えたばかりかますます大きくなると思うと、 |
282 |
下駄 |
下駄屋 |
花園町の下駄屋の職人なら世話が出来る |
282 |
下駄 |
下駄職 |
立ち会わせて下駄職の話をしたところ、 |
283 |
楊行李 |
楊行李 |
楊行李も支那鞄も嫌だという健太郎の為に |
286 |
サクラ |
夜桜 |
高知公園二の丸の夜桜のもとでそいつの鏡を |
286 |
薦樽 |
薦樽 |
岩伍の自腹で薦樽(こもだる)を買い、 |
289 |
木戸 |
裏木戸 |
裏木戸を押して絹が慌ただしく、 |
289 |
緑 |
緑の香 |
中庭はもういちめん繁って蒸せるほどの緑の香りが立っており、 |
290 |
サクラ |
小米桜 |
花も盛りを過ぎた小米桜の枝の蔭に盥(たらい)を出して |
290 |
サクラ |
小米桜 |
小米桜の下枝越しに離れを透かし、 |
290 |
枝 |
下枝 |
小米桜の下枝越しに離れを透かし、 |
290 |
巴旦杏 |
巴旦杏 |
菊も凍傷(しもやけ)痕の見える巴旦杏(はたんきょう)のような |
290 |
葉 |
葉の間 |
葉の間から溢(こぼ)れ落ちた陽の光が盥(たらい)の中の洗濯物に斑(ふ)を作っている上に、 |
292 |
下駄 |
下駄 |
天鳶絨(びろんど)横緒の下駄一足買って貰うたぐらいで、 |
292 |
木戸 |
裏木戸 |
裏木戸から駈け出して行った。 |
296 |
障子 |
戸障子 |
大貞ま前に立って戸障子を開け放ち、 |
298 |
桶 |
桶 |
桶の中に重ねていた。 |
300 |
膳 |
膳 |
龍太郎は殆(ほとん)ど箸をつけていない膳を敷居際に押しやり、 |
300 |
箸 |
箸 |
龍太郎は殆(ほとん)ど箸をつけていない膳を敷居際に押しやり、 |
300 |
敷居 |
敷居際 |
龍太郎は殆(ほとん)ど箸をつけていない膳を敷居際に押しやり、 |
306 |
梯子 |
梯子段 |
梯子段を上る手間を省いてこんな所に、 |
308 |
サクラ |
桜 |
赤の地に観世水と桜を描いた友禅模様の産着は |
315 |
桟橋 |
桟橋 |
桟橋でひとりでに泣けて来てん」 |
321 |
ツバキ |
椿の木 |
椿の木の根元を振返って砂糖のように細かく光った |
321 |
根元 |
根元 |
椿の木の根元を振返って砂糖のように細かく光った |
321 |
植込 |
植込み |
喜和は思わずよろめいて植込みの中に踏込み、 |
334 |
イチョウ |
銀杏 |
裏の原っぱの虫採りからお稲荷さんの銀杏拾い、 |
335 |
板 |
花の板 |
敷いて作る平らな花の板を、 |
335 |
柳行李 |
柳行李に |
今は用の無くなった柳行李に詰めてある |
336 |
板 |
丸板 |
芯に赤を入れた白菊ま丸板や、 |
337 |
棒 |
棒 |
引扱(ひきしご)けて棒のようになる、 |
338 |
バラ |
天鳶絨(びろんど) |
綾子は薔薇の造花で飾った天鳶絨(びろんど)の帽子を被り、 |
345 |
敷居 |
敷居 |
家の敷居も跨がない筈が、 |
346 |
下駄 |
下駄 |
くじりで下駄の台に穴開ける事だけや。 |
346 |
下駄 |
下駄 |
一人前に下駄すげせれるようになるには |
350 |
裁板 |
裁板 |
店の隅に裁板(たちいた)を置いて針を |
355 |
枳棘 |
枳棘 |
全身枳棘(いばら)で指されているような苛立(いらだち)たしさから |
361 |
ナシ |
新高梨 |
何よりの好物の朝倉針木の新高梨を最後に口に入れてやりたい事で、 |
361 |
ナシ |
新高梨 |
その新高梨は秋も十月に入らなければ |
361 |
ナシ |
新高梨 |
新高梨は土佐針木の今村梨と越後の天の川の高配によって |
361 |
ナシ |
今村梨 |
新高梨は土佐針木の今村梨と越後の天の川の高配によって |
361 |
ナシ |
梨 |
梨も桃も皮ごとかぶりついた子供の頃を、 |
361 |
モモ |
桃 |
梨も桃も皮ごとかぶりついた子供の頃を、 |
361 |
木屑 |
木屑 |
それに鉋で削った木屑のように軽い鰹節も添え、 |
361 |
楊枝 |
楊枝 |
皿に盛って楊枝で食べる行儀よさより、 |
369 |
ナシ |
新高梨 |
やっと出廻って来た新高梨を擦り卸し、 |
376 |
ヤマモモ |
楊梅の木 |
今はもう実の生らない古い大きな楊梅の木の下に葬ったが、 |
376 |
桟敷 |
桟敷 |
もう田圃の桟敷にも電気を点け、 |
376 |
木 |
楊梅の木 |
今はもう実の生らない古い大きな楊梅の木の下に葬ったが、 |
378 |
ヤマモモ |
楊梅 |
十市の楊梅も味噌漉しのまま入り、 |
379 |
飯櫃 |
飯櫃 |
夏の飯は飯櫃(めしびつ)でなく籠に移すのが慣いだけど、 |
379 |
敷居 |
敷居 |
敷居のスベりも滑らかで、 |
379 |
物干台 |
物干台 |
物干台(やぎり)から取込んだばかりの、 |
381 |
箸揃 |
箸揃 |
宮詣り、箸揃え、節句、 |
382 |
藤棚 |
藤棚 |
豊かに蔓延った藤棚があり、 |
387 |
バラ |
薔薇 |
その衿元の淡い薔薇だけがいつまでも |
390 |
広蓋 |
広蓋 |
予て志願の大工の腕を揮って大きな広蓋を拵えそれを上から |
390 |
大工 |
大工 |
予て志願の大工の腕を揮って大きな広蓋を拵えそれを上から |
390 |
梯子 |
梯子 |
屋根への段梯子は狭い上に背抜きの急勾配と来ており、 |
391 |
ユズ |
柚子 |
柚子(ゆのす)を卸した冷やしそうめんのガラス鉢を並べなから、 |
391 |
箸 |
箸 |
何となく箸が進まないのであった。 |
396 |
イチジク |
無花果 |
無花果を潰したような褐色の贓物を岩伍に見せて、 |
399 |
ヤナギ |
柳 |
褒められた柳の黒髪が、 |
400 |
櫛 |
櫛 |
やっと一人で櫛を使えるようになった頃、 |
400 |
櫛 |
櫛 |
暫くは櫛を手控えてはみたけれど、 |
400 |
桃割れ |
桃割れ |
初めて桃割れ結った十三の年、 |
401 |
サンゴジュ |
珊瑚樹の簪 |
叮嚀に使い込んだ黄楊の櫛、笄(こうがい)、珊瑚樹の簪、大貞の遺品(かたみ)一切を添え、 |
401 |
ツゲ |
黄楊の櫛 |
叮嚀に使い込んだ黄楊の櫛、笄(こうがい)、珊瑚樹の簪、大貞の遺品(かたみ)一切を添え、 |
401 |
櫛 |
黄楊の櫛 |
叮嚀に使い込んだ黄楊の櫛、笄(こうがい)、珊瑚樹の簪、大貞の遺品(かたみ)一切を添え、 |
403 |
ネーブル |
ネーブル |
ネーブルという臍(へそ)蜜柑を食べやすいよう切って置いてくれたり、 |
403 |
ミカン |
臍(へそ)蜜柑 |
ネーブルという臍(へそ)蜜柑を食べやすいよう切って置いてくれたり、 |
404 |
枷 |
枷 |
「枷(かせ)となるか杖となるか」の駈けがあったけれど、 |
409 |
スギ |
達磨杉 |
両側にモダンな達磨杉の植えてある敷石の道 |
410 |
桐箱 |
桐箱 |
特製最中を桐箱に入れて誂え、 |
410 |
薦樽 |
薦樽 |
床前に据え薦樽(こまだる)の鏡を抜いて |
410 |
庭樹 |
庭樹 |
墨絵のような庭樹の影を映し出す。 |
412 |
木 |
木の箱 |
木の箱へ入れられて桃太郎みたいに、 |
413 |
樫炭 |
樫炭 |
火鉢には樫炭の火種も埋けておかねばならない。 |
413 |
箸 |
移り箸 |
食べかたは移り箸迷い箸突っつき箸を戒められ、 |
413 |
箸 |
迷い箸 |
食べかたは移り箸迷い箸突っつき箸を戒められ、 |
413 |
箸 |
突っつき箸 |
食べかたは移り箸迷い箸突っつき箸を戒められ、 |
415 |
大工 |
大工 |
連日家へ大工を呼んでは注文をつけているのを |
416 |
マキ |
薪屋 |
東条の将棋屋、入り口も見えぬばかりに大束小束を積み上げてある薪屋、 |
416 |
将棋 |
将棋屋 |
東条の将棋屋、入り口も見えぬばかりに大束小束を積み上げてある薪屋、 |
417 |
㮰 |
㮰 |
住み慣れた身にはその㮰(のき)の高さは |
417 |
サクラ |
桜の大木 |
一抱え以上もある桜の大木を奥へずうーっと運び |
417 |
サクラ |
桜の枝 |
隙間なく巻いた桜の枝を痛めぬよう、 |
417 |
サクラ |
桜 |
桜もその内の一本ででもあろうかと |
417 |
雨戸 |
雨戸 |
雨戸を閉めてある筈が開口いっぱい |
417 |
枝 |
桜の枝 |
隙間なく巻いた桜の枝を痛めぬよう、 |
417 |
大工 |
大工 |
大工の散らしたままの鉋屑を踏みしだいて法被の男たちが |
417 |
大木 |
桜の大木 |
一抱え以上もある桜の大木を奥へずうーっと運び |
417 |
鉋屑 |
鉋屑 |
大工の散らしたままの鉋屑を踏みしだいて法被の男たちが |
418 |
サクラ |
桜 |
「この桜は、陽暉桜(ようきろう)の大将がお家へ御祝儀じゃそうに御座いやして」 |
418 |
サクラ |
鬱金桜 |
本店別館の庭にある鬱金桜と同じものを贈りたいといい、 |
418 |
サクラ |
鬱金桜 |
鬱金桜の大木がそう滅多とあるものではなく、やっと吉野に落ち着いたという。 |
418 |
サクラ |
吉野 |
鬱金桜の大木がそう滅多とあるものではなく、やっと吉野に落ち着いたという。 |
418 |
太い木 |
太い木 |
「けんど植仙さん、こんな太い木が無事ありつきますやろうか?」 |
418 |
大木 |
鬱金桜の大木 |
鬱金桜の大木がそう滅多とあるものではなく、やっと吉野に落ち着いたという。 |
418 |
鉋屑 |
鉋屑 |
喜和は鉋屑を足に纏いつけながら家の中を見廻った。 |
419 |
サクラ |
桜 |
桜は宿替え後、植え痛みも極く少なく、すぐ葉を拡げ始めたのであった。 |
419 |
根 |
根 |
家の勢いがよけりゃ、こら放(ほ)っちょいてもすんぐ根を下ろします」 |
419 |
生木 |
生木 |
生木というなあ不思議なもんでがしてね。家の運が傾いたら必ず一緒に立木も枯れる。 |
419 |
葉 |
葉 |
桜は宿替え後、植え痛みも極く少なく、すぐ葉を拡げ始めたのであった。 |
419 |
立木 |
立木 |
生木というなあ不思議なもんでがしてね。家の運が傾いたら必ず一緒に立木も枯れる。 |
420 |
大工 |
大工 |
米は最初から大工志望の事とてこれは本丁筋の |
421 |
行李 |
行李 |
親のようにこまごまと行李に詰めてやり、 |
423 |
イチョウ |
|
お稲荷さんの大銀杏を仰いだ。 |
423 |
若葉 |
浅緑の若葉 |
あの透通るような浅緑の若葉にはまだ遠いものの、 |
423 |
梢 |
梢 |
それでも気のせいかほつほつと膨らんで見える梢は春霞の空にぐっと肩を張って見える。 |
423 |
柱 |
柱 |
この家のものは柱の傷ひとつ思いの染みていないものはない。 |
428 |
サクラ |
吉野桜 |
陽暉桜(ようきろう)から贈られた中央の吉野桜を取巻いて築山、 |
428 |
チシャ |
青萵苣 |
手遊びがてら果樹の脇に青萵苣(ちしゃ)など植えていると |
428 |
マツ |
松 |
東に法師ケ鼻の松が藹々(あいあい)と煙り、西に中之島の柳が嫋々(じょうじょう)と風を受け流している中に、 |
428 |
ヤナギ |
柳 |
東に法師ケ鼻の松が藹々(あいあい)と煙り、西に中之島の柳が嫋々(じょうじょう)と風を受け流している中に、 |
428 |
果樹 |
果樹 |
手遊びがてら果樹の脇に青萵苣(ちしゃ)など植えていると |
428 |
盆栽 |
盆栽棚 |
盆栽棚がほど良く配置されてある中下り立ち、 |
432 |
敷居 |
敷居 |
表の敷居も硝子戸も真白に |
432 |
柄 |
柄 |
長い柄の柄杓(ひしゃく)で海水を掬ってはたっぷりと道に湿(しつ)を打つ。 |
434 |
ウメ |
松竹梅 |
築山の松竹梅と吉野桜が程よい配置となって風情を添える。 |
434 |
グミ |
茱萸 |
鉢植の五葉の松を剪定し、植込みの桃、茱萸、梅桃(ゆすらうめ)などの果樹についた虫獲(むしとり)りなどもする。 |
434 |
サクラ |
吉野桜 |
築山の松竹梅と吉野桜が程よい配置となって風情を添える。 |
434 |
マツ |
松竹梅 |
築山の松竹梅と吉野桜が程よい配置となって風情を添える。 |
434 |
マツ |
五葉の松 |
鉢植の五葉の松を剪定し、植込みの桃、茱萸、梅桃(ゆすらうめ)などの果樹についた虫獲(むしとり)りなどもする。 |
434 |
ヤマモモ |
梅桃 |
鉢植の五葉の松を剪定し、植込みの桃、茱萸、梅桃(ゆすらうめ)などの果樹についた虫獲(むしとり)りなどもする。 |
434 |
果樹 |
果樹 |
鉢植の五葉の松を剪定し、植込みの桃、茱萸、梅桃(ゆすらうめ)などの果樹についた虫獲(むしとり)りなどもする。 |
434 |
五葉 |
五葉の松 |
鉢植の五葉の松を剪定し、植込みの桃、茱萸、梅桃(ゆすらうめ)などの果樹についた虫獲(むしとり)りなどもする。 |
434 |
造作 |
造作 |
しょっちゅう大工を招(よ)んで小普請や造作をさせては心からこちらの暮らしを |
434 |
大工 |
大工 |
しょっちゅう大工を招(よ)んで小普請や造作をさせては心からこちらの暮らしを |
434 |
庭木 |
庭木 |
気晴らしには庭木の手入れに立ち、 |
434 |
普請 |
小普請 |
しょっちゅう大工を招(よ)んで小普請や造作をさせては心からこちらの暮らしを |
434 |
楊枝 |
楊枝 |
こちらでは上衿(うわえり)の掛け目に楊枝など差して |
442 |
カリン |
かりんの胴 |
今は店の書類棚脇にこうきの棹(さお)にかりんの胴 |
442 |
棹 |
棹 |
今は店の書類棚脇にこうきの棹(さお)にかりんの胴 |
446 |
センダン |
堅い栴檀台 |
少々重いけれど堅い栴檀台の下駄を穿かせているだけれど、 |
446 |
フジ |
藤の蔓 |
子に対する情は岩伍と喜和では松の木と藤の蔓ほどに違い、 |
446 |
マツ |
松の木 |
子に対する情は岩伍と喜和では松の木と藤の蔓ほどに違い、 |
446 |
下駄 |
下駄 |
下駄のちびかたで自分の心得としたものであった。 |
446 |
板 |
板 |
真直ぐに穿いて板のよに減らせて行く。 |
450 |
楣 |
楣 |
浦戸待ち周辺に楣(のき)を並べる料亭 |
452 |
垣 |
垣 |
わざと身の廻りに垣を作っているせいかとも、 |
454 |
塵箱 |
塵箱 |
芥(ごみ)を捨てに往来へ出て塵箱の並んでいる場所 |
456 |
格子 |
小格子 |
机の前の小格子も細かに指図して建具師に拵(こちらえ)えさせ、 |
456 |
建具 |
建具師 |
机の前の小格子も細かに指図して建具師に拵(こちらえ)えさせ、 |
456 |
箸 |
塗り箸 |
剥げた塗り箸で菜を摘まむような、 |
456 |
欄干 |
欄干 |
二階の欄干(てすり)に靠(もた)れて、 |
457 |
ヒノキ |
檜 |
新湯のせいなのか桶の檜の匂いなのかは判らないが、 |
457 |
桶 |
桶 |
新湯のせいなのか桶の檜の匂いなのかは判らないが、 |
458 |
羽目板 |
羽目板 |
湯殿の羽目板に突っ張り、 |
460 |
薪 |
薪小屋 |
庭の隅の薪小屋から束を抱えて風呂の焚口へ歩いて |
460 |
束 |
束 |
庭の隅の薪小屋から束を抱えて風呂の焚口へ歩いて |
460 |
庭木 |
庭木 |
庭木の縞目に重なって呆(ぼ)んやりとその刷り硝子に |
462 |
拍子木 |
拍子木 |
遊郭の火の用心の拍子木の音にもすぐ目をさますほど、 |
463 |
鉛筆 |
鉛筆 |
宵に喜和の削ってやった鉛筆の頭を揃えて入ったまま、 |
463 |
鉛筆 |
鉛筆 |
夜の鉛筆削りは喜和の物思いの時間となり、 |
463 |
襖 |
襖 |
襖を開けて茶の間へ出ると長火鉢の前に躙(にじ)り寄って |
463 |
長火鉢 |
長火鉢 |
襖を開けて茶の間へ出ると長火鉢の前に躙(にじ)り寄って |
463 |
梯子段 |
梯子段 |
梯子段の下の三畳へごそごそと引っ込んでしまうのを |
463 |
猫板 |
猫板 |
長火鉢の猫板の上には、火に炙られて |
463 |
猫板 |
長火鉢 |
長火鉢の猫板の上には、火に炙られて |
463 |
熱灰 |
熱灰 |
つい考え込んで筆入れの縁を熱灰で焼いてしまつたりする。 |
463 |
箸 |
箸 |
喜和は箸でなおその薬袋を幾度も押しつけて |
468 |
梯子段 |
梯子段 |
跫音を忍ばせて暗い梯子段を登って行った。 |
468 |
木の実 |
木の実 |
喜和は薬袋の木の実を幾粒となく噛んでいるうち |
472 |
襖 |
襖 |
子供達の部屋の襖を開けると。 |
477 |
さくら |
桜の大樹 |
一際(ひときわ)抽(ぬき)んでて枝ぱかりの桜の大樹が天に向かって伸びているのが見え、 |
477 |
さくら |
吉野桜 |
それが家の庭のあの吉野桜なのだとすぐ判る。 |
477 |
さくら |
あの桜 |
うちのあの桜、学校の帰り道の何処からでもちゃんと見えるよ。 |
477 |
さくら |
桜の下 |
今思い返せばこの桜の下に茣蓙(ござ)を拡げ、 |
477 |
ヤナギ |
大柳 |
新地遊郭の入口には葉の落ち尽くした枝ぶりのよい大柳があり、 |
477 |
ヤナギ |
大柳 |
大柳の脇から遊郭を斜交いに突っ切って田の畦道へ出ると |
477 |
枝 |
枝ぶり |
新地遊郭の入口には葉の落ち尽くした枝ぶりのよい大柳があり、 |
477 |
枝 |
枝ぱかりの |
一際(ひときわ)抽(ぬき)んでて枝ぱかりの桜の大樹が天に向かって伸びているのが見え、 |
477 |
大樹 |
桜の大樹 |
一際(ひときわ)抽(ぬき)んでて枝ぱかりの桜の大樹が天に向かって伸びているのが見え、 |
477 |
葉 |
葉 |
新地遊郭の入口には葉の落ち尽くした枝ぶりのよい大柳があり、 |
477 |
凩 |
凩 |
もう凩(こがらし)めいた野分が、 |
478 |
さくら |
桜 |
風の中に枝を張る桜は喜和の目に如何にもしょんばりと淋しげに見えた。 |
478 |
花見 |
花見 |
花見をしたのは植えた翌年だったから花も極く少なく |
478 |
根 |
根を下ろして |
今の時期の移植だったら果たして根を下ろしていたであろうか。 |
478 |
木 |
木の幹 |
この木の幹に繋ぐだけになっている此の頃を喜和は思うのであった。 |
481 |
普請 |
普請 |
梅田橋に妾宅の普請が出来上がるまでの間、 |
483 |
衣桁 |
衣桁 |
衣桁(いこう)に駈け廻しては皆で賑やかに |
483 |
縁側 |
縁側 |
縁側で叮嚀に梳いて肩に垂らしながら |
483 |
普請 |
普請 |
梅田橋の普請も出来上がって富田を引揚げるとき、 |
515 |
櫛 |
櫛の歯 |
こうして櫛の歯を引くように富田の古馴染みも散り散りになって行く、 |
515 |
桟 |
桟 |
雨戸の桟を見に行ったりする。 |
517 |
枝 |
枝 |
あちこちの枝を折られた植木の蔭には、 |
517 |
障子 |
障子 |
障子や襖は繕う端からいつも破られていて、 |
517 |
植木 |
植木 |
あちこちの枝を折られた植木の蔭には、 |
518 |
欄干 |
欄干 |
北窓の欄干(てすり)に肘を凭(もた)せて庭に目をやると、 |
519 |
サクラ |
吉野 |
また一層背が高くなったように思える吉野はもう黒々と濃い葉桜で、 |
519 |
ヤナギ |
大柳 |
新地遊郭の入口の大柳には以前藁で拵(こしら)えた人形が |
519 |
ヤナギ |
柳の梢 |
今柳の梢を眺めて藁人形をすぐお照に置き換えて |
519 |
芽 |
花の芽 |
今年はこの花の芽も盛りも一切目に映らずに |
519 |
梢 |
柳の梢 |
今柳の梢を眺めて藁人形をすぐお照に置き換えて |
519 |
葉桜 |
葉桜 |
また一層背が高くなったように思える吉野はもう黒々と濃い葉桜で、 |
520 |
葉桜 |
葉桜 |
庭の葉桜は濃い蔭を作り、 |
522 |
妻楊枝 |
妻楊枝 |
軍手の指先縢(かが)りから妻楊枝削り、 |
524 |
卓袱台 |
卓袱台 |
勉強机にしていた卓袱台(しっぽくだい)を北の部屋に据え、 |
527 |
サクラ |
桜の花吹雪 |
毎年春には庭の桜の花吹雪を猪口(ちょこ)に掬(すく)って飯事(ままごと)し、 |
527 |
挿木 |
挿木して |
一人の手で挿木して花壇いっぱい咲かせた菊の花を取り、 |
527 |
落葉 |
落葉 |
いまは障子を擽(くすぐ)って通る落葉の音が終日さやさやと鳴り、 |
527 |
落葉 |
落葉 |
秋になれば、庭に堆(うずたか)くなる落葉を竹箒で掻き寄せ燐寸で火をつけると |
528 |
サクラ |
吉野 |
それは庭の吉野の倒れる音かも知れん、 |
528 |
サクラ |
吉野 |
この吉野を植えた植仙の言葉の、 |
528 |
枝 |
枝を |
木は枯れるどころか益々枝を拡げるところだけれど、 |
528 |
生木 |
生木 |
「生木というなあ、不思議なもんでがしてね」 |
528 |
木 |
木 |
丁々(とうとう)と木を伐るような音が枕に聞こえ、 |
528 |
木 |
木 |
木は枯れるどころか益々枝を拡げるところだけれど、 |
528 |
木目 |
木目 |
地の木目は風雨に曝(さら)され幾分摩滅して見える。 |
529 |
サクラ |
吉野 |
運命の手によって庭の吉野が伐り倒されてゆくのはさらに此の上の悲運に見舞われるかも知れぬと |
529 |
マツ |
五葉の松 |
この蘭と五葉の松だけは二階に上げて |
529 |
盆栽 |
盆栽棚 |
庭の盆栽棚の中から、 |
540 |
卓袱台 |
卓袱台 |
袋貼りしている卓袱台の脇に座り、 |
541 |
横板 |
板に雨垂れ |
立て板に水、とまではいかんが、横板に雨垂れぐらいには行く。 |
541 |
板 |
立て板 |
立て板に水、とまではいかんが、横板に雨垂れぐらいには行く。 |
541 |
板挟 |
板挟み |
岩さんと姐さんの板挟みになって辛がっちょる。 |
545 |
杖 |
杖 |
愛宕不動に杖をついて毎日詣っている。 |
551 |
木登 |
木登り |
女のすまじきものに、「抗(あら)がい木登り川渡り」といいそれを綾子にも教えて来たけれど、 |
552 |
ミカン |
蜜柑 |
「その蜜柑、うちの」とか「ラジオつけよか」とか |
552 |
下駄 |
下駄 |
硝子戸の外にその下駄の音は次第に遠ざかって行くようであった。 |
556 |
漆 |
黒漆 |
まだつやつやと照りのよい黒漆、 |
556 |
卓袱台 |
卓袱台 |
綾子の勉強机の卓袱台と青い紗(しゃ)を張ってある本屋など、 |
557 |
イチジク |
無花果 |
梅桃(ゆすらうめ)、桃、無花果の木々は健在だけれどこれも根元は枯葉と草で埋まり来年つける実はおぼつかない。 |
557 |
サクラ |
吉野の幹 |
最後に吉野の幹に手を掛けて空を仰いだ。 |
557 |
ボタン |
牡丹の老木 |
もう芽もつけなくなっている牡丹の老木の廻りの草を㭞ってやった。 |
557 |
マモモ |
梅桃 |
梅桃(ゆすらうめ)、桃、無花果の木々は健在だけれどこれも根元は枯葉と草で埋まり来年つける実はおぼつかない。 |
557 |
モモ |
桃 |
梅桃(ゆすらうめ)、桃、無花果の木々は健在だけれどこれも根元は枯葉と草で埋まり来年つける実はおぼつかない。 |
557 |
幹 |
吉野の幹 |
最後に吉野の幹に手を掛けて空を仰いだ。 |
557 |
枯葉 |
枯葉 |
梅桃(ゆすらうめ)、桃、無花果の木々は健在だけれどこれも根元は枯葉と草で埋まり来年つける実はおぼつかない。 |
557 |
根元 |
根元 |
梅桃(ゆすらうめ)、桃、無花果の木々は健在だけれどこれも根元は枯葉と草で埋まり来年つける実はおぼつかない。 |
557 |
梢 |
梢 |
もうすっかり葉を振い尽した梢は気持ちよく透けて色紙のように濃い青の空が見える。 |
557 |
薪 |
薪小屋 |
薪小屋への道を残して花壇との |
557 |
盆栽 |
盆栽棚 |
盆栽棚の鉢はすっかり乾上(ひあが)り、 |
557 |
木々 |
木々 |
梅桃(ゆすらうめ)、桃、無花果の木々は健在だけれどこれも根元は枯葉と草で埋まり来年つける実はおぼつかない。 |
557 |
老木 |
牡丹の老木 |
もう芽もつけなくなっている牡丹の老木の廻りの草を㭞ってやった。 |
558 |
サクラ |
桜 |
夜毎聞えて来た木を伐る音はこの桜ではなく、 |
558 |
サクラ |
桜同様 |
と最後まで頼っていたのにこれも桜同様、 |
558 |
炭 |
炭 |
炭籠から絶えず炭を継いでいる喜和の向こうに |
558 |
炭籠 |
炭籠 |
炭籠から絶えず炭を継いでいる喜和の向こうに |
558 |
木 |
木を伐る |
夜毎聞えて来た木を伐る音はこの桜ではなく、 |
564 |
柱 |
柱 |
敷居と柱らしい手触りが襤褸(ぼろ)の奥から |
564 |
敷居 |
敷居 |
敷居と柱らしい手触りが襤褸(ぼろ)の奥から |
569 |
襖 |
襖 |
吹き込む寒空には襖、障子の代わりに襤褸(ぼろ)の山ょ積み上げて |
569 |
障子 |
障子 |
吹き込む寒空には襖、障子の代わりに襤褸(ぼろ)の山ょ積み上げて |
573 |
鋸屑 |
鋸屑 |
うどんの大釜の燃料は安くて長保ちする鋸屑を使い、 |
573 |
鋸屑 |
鋸屑 |
鋸屑は昔常盤町の頃の氷会社の脇にいつも沢山こぼれていたのを想い出し、 |
573 |
鋸屑 |
鋸屑 |
勝手口の入口には鋸屑の山を囲う為の簡単な庇が取付けてある。 |
573 |
庇 |
庇 |
勝手口の入口には鋸屑の山を囲う為の簡単な庇が取付けてある。 |
574 |
木履 |
木履 |
水の流れる料理場に木履(ぼくり)を穿いて立っているのにさして冷え込みもしないのは |
576 |
鋸屑 |
鋸屑 |
鋸屑の山を廻って裏口から戻って来る。 |