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宮尾登美子の小説「櫂」に出てくる樹木や木製品

この小説の初出は1972年、文庫本におけるページ数は585ページ

ページ 元樹種 掲載樹種 掲載言葉
5 ヤナギ 柳行李 底の一、二枚は柳行李の編目が凸凹についた
5 ヤマモモ 楊梅 「来ました、十市の楊梅(やまもち)が」
5 行李 行李 去年は、行李の底の衣類についた
6 行李 行李 行李のように
6 樟脳 樟脳 風を通せば樟脳の匂いも散り、
6 樟脳 樟脳 薄くなった去年の樟脳を拾い上げた。
6 木の 木の箱形で、
8 モモ 桃には黒い亀蔵と白桃とがあり、富田では岩伍がとくに黒桃の太いものを
8 モモ 白桃 桃には黒い亀蔵と白桃とがあり、富田では岩伍がとくに黒桃の太いものを
8 モモ 黒桃 桃には黒い亀蔵と白桃とがあり、富田では岩伍がとくに黒桃の太いものを
8 モモ その桃を、もう五、六年も前から富田では
8 ヤマモモ 楊梅( 楊梅(やまもち)は、土佐の海岸地方に生る特有の果実で、思わず頬を絞るほどの美味(うま)さがある代わり、これほどに傷み易いものもないといわれている。
8 ヤマモモ 楊梅 楊梅(やまもち)は夏病み除けとして大仰に喜ぶ。
8 ヤマモモ 楊梅 味噌漉しの底の奉書が楊梅の汁でどっぷりと紫に染められ、
8 ヤマモモ 楊梅の実 甘い汁をたっぶりと含んだやわらかな楊梅の実は、
8 ヤマモモ 楊梅 楊梅はむろ蓋の中でころころと転がり、
8 ヤマモモ 楊梅 「楊梅の選(よ)り食」が始まり、ときには
8 果実 果実 楊梅(やまもち)は、土佐の海岸地方に生る特有の果実でも
8 朝捥(も)いだ実は昼下がりにもう汁が滲んで饐え始め、
8 ぱっといちどきに木が黒むほど熟れ田と思うと、
8 十市の姐さんの家の木のものばかりを買うのであった。
9 ヤマモモ 楊梅 「楊梅食うに、核(さね)を出す馬鹿があるか」という通もいるにはいるけれど、
9 ヤマモモ 舌の先で核を弄(もてあそ)ぶようにしながら果肉だけを食べるのが安心なのであった。
10 ヤマモモ 楊梅 姐さん、あの楊梅はえーえ、というのを一丁やってや。
10 ヤマモモ 楊梅 ええーえ、楊梅はえーえ、、今朝採りの十市の楊梅、
10 ヤマモモ 楊梅 ええーえ、楊梅はえーえ、、今朝採りの十市の楊梅、
10 ヤマモモ 潮風によう吹けた桃はえーえ、
10 木遣 木遣の名人 十市村の木遣の名人であることを知っていて、
11 ヤマモモ 楊梅 十市の楊梅が入ると、岩伍は外に
12 ヤマモモ 楊梅 好物の楊梅をつまむのであった。
12 ヤマモモ 楊梅 上町の吉沢医院の先生にもこの楊梅を届けてあげては
12 ヤマモモ 楊梅 楊梅も十市の亀蔵の走りなら
12 ヤマモモ 楊梅 上町の上品(じょうび)た暮らしの先生が楊梅など日になさるろうか、
15 序(つい)でに櫛も笄(こうがい)もよう拭いてから
16 広くもない往来の庇から、盲(めくら)の茂八ちゃんの
17 木杓子 木杓子 丸焼芋を木杓子で掻き出す、
18 カラタチ 枳殻 右は枳殻の垣を廻らせた瓮屋の
18 ヤマモモ 楊梅に 喜和は、楊梅に限らず町内に配り物を
19 キリ 桐油 上町の傘屋も桐油(とうゆ)が匂うけれど、
19 杓子 杓子 箒や炭籠や杓子や鍋まで思い出し放題に
19 炭籠 炭籠 箒や炭籠や杓子や鍋まで思い出し放題に
19 この店は雨合羽やら油紙など梁に吊してあるから、
20 イチョウ 大銀杏 お稲荷さんの大銀杏が影を落としているだらだら坂を、
21 びんづけ びんづけ いつもの金蜘蛛印のびんづけと、
21 櫛を固く握り絞めている下梳きに向かって、
21 板の間 石水では、板の間を四角に落としてそこら客の足を入れ、
22 びんつけ びんつけ 力入れるはびんつけ付けて梳き上げるときだけ」
22 櫛を立てて髪の根を掘ったら、
23 梳櫛 目の細かい両歯の梳櫛に毛たぶを挟んで丁寧に
26 木戸 木戸札 たかが木戸札一枚の話に、
28 杉皮 杉皮 杉皮で葺いた一間限りの家にずっと住んでいたから、
29 えのき 古い榎の下で小枝を拾い、その小枝焚き付けに両手で掬った鋸屑を振りかければ、
29 鋸屑 鋸屑 濡れた鋸屑を踏んで家に出入りをするのであった。
29 鋸屑 鋸屑 鋸屑は土の肌を斑に見せて厚く薄くいちめんに撒かれていて、
29 鋸屑 鋸屑 鋸屑は扱いうにこつがあり、気短な手付きで一度にどっさりと振りかけると小枝の火は忽ち消えてしまう。
29 鋸屑 鋸屑 鋸屑は次第に短い炎となってちろちろと揺れ、やがては赤い粉の燠(おき)に変わり、
29 鋸屑 鋸屑 喜和は,鋸屑が早来赤い粉の燠を、とても綺麗だといつも思った。
29 小枝 小枝 古い榎の下で小枝を拾い、その小枝焚き付けに両手で掬った鋸屑を振りかければ、
29 小枝 小枝 古い榎の下で小枝を拾い、その小枝焚き付けに両手で掬った鋸屑を振りかければ、
29 小枝 小枝 鋸屑は扱いうにこつがあり、気短な手付きで一度にどっさりと振りかけると小枝の火は忽ち消えてしまう。
29 薪の切れたときの重宝な燃料となった。
29 鋸屑は次第に短い炎となってちろちろと揺れ、やがては赤い粉の燠(おき)に変わり、
29 燠は風の加減できらきらと呼吸し、
31 せんだん 栴檀 一文橋の袂の栴檀の木の下にまで行けば、
31 木の下 一文橋の袂の栴檀の木の下にまで行けば、
32 シュロ 棕櫚縄 太い丸太が棕櫚縄に繋がれて水面いっぱいに
32 センダン 栴檀 秋は黄色く萎んだ栴檀のまるい実を前掛けいっぱい拾うことも出来る
32 センダン 栴檀 栴檀の小蔭には葦簀(よしず)囲いの店を
32 丸太 丸太 太い丸太が棕櫚縄に繋がれて水面いっぱいに
32 まるい実 秋は黄色く萎んだ栴檀のまるい実を前掛けいっぱい拾うことも出来る
32 製材所 製材所 この頃では川向かいに製材所が出来、
32 木蔭 小蔭 栴檀の木蔭には葦簀(よしず)囲いの店を
33 丸太 丸太 さっきまで丸太を浮かべていた青い水面も余すところなく
39 丸太 丸太 喜和の足もとから丸太を浮かべてある水際まで、
39 丸い木 丸い木の編機の底から少しずつ編み出される紐が、
46 木で鼻を括ったようなものいいは客に対して無愛想だから
54 つつじ つつじ 丹精したつつじの庭園が自慢だということを
54 梅鉢 梅鉢 沢山の梅鉢が見事で、
57 材木 材木商 材木商であった父祖の財を
57 植込 植込み 中庭の植込みまで
59 飯櫃 飯櫃 飯櫃の蓋までも取られてしもうたそうな。
66 カシ 赤樫 赤樫の一寸五分板に挽いた大きな吊看板で、
66 木肌 木肌 木肌の上には名の通った
67 格子 格子戸 素通しの格子戸で、その格子戸と土間を
68 木戸 裏木戸 離室(はなれ)の裏木戸を通してお巻さんは
69 下駄 駒下駄 藤表に鰐皮(わにがわ)横緒の駒下駄を再び穿き、
69 木戸 裏木戸 また裏木戸から二人して帰って行った。
72 灰吹 灰吹 寒餅と灰吹は溜まるほど汚い。
72 戸袋 戸袋 それを門口の戸袋に飯粒で貼り付けた。
77 溝板 溝板 半ば腐った溝板を越してじゅくじゅくと
80 小枝 小枝 その下には枯れた小枝が白く枝なりに灰を残して
81 小枝 小枝 老婆がそのままの手で小枝を籠の奥へ
81 木蓋 木蓋 散りかかった鍋の木蓋を摘まんで、
83 スギ 杉皮 屋根の杉皮が朽ちて黒い蔓草のように軒に垂れている
90 妻楊枝 妻楊枝 妻楊枝を削って細々と暮らしを立てている
98 梯子 梯子段 灯りの届かない梯子段下の土間に、
105 柄杓など柄のうげ替え、薪割り、
106 ウツギ 卯の花 卯の花を燻ってまるめ青魚を
106 下駄 下駄 下駄の歯替えまで、
106 薪割 薪割り 柄杓など柄のうげ替え、薪割り、
107 ナンテン 南天 中庭の南天の木の脇に張板を立掛け、
107 格子 格子戸 表の格子戸の開く音がしたと思うと、
107 木の脇 中庭の南天の木の脇に張板を立掛け、
113 男衆相手に柄杓しゃもじから薪、箒まで
123 舟でいえば、漕ぎ抜けて北あとの櫂を、
123 櫂は三年艪(ろ)は三月、操りかたをやっと憶えた櫂も、
123 櫂は三年艪(ろ)は三月、操りかたをやっと憶えた櫂も
125 ミカン 蜜柑 底豆の皮を剥いたり紅蜜柑や薄皮蜜柑に爪を立てて、
126 太棹 太棹 太棹に乗るような声は出来ないが、
126 木戸 木戸銭 木戸銭の段違いに安いせいもあって客は
133 キンカン 金柑 「金柑の目」と皆が綽名(あだな)を付けており
133 みかん 蜜柑 「蜜柑金柑こちゃ好かん」と茶化しているのを
136 ちゃ 茶の香り あの山吹色の、甘い茶の香りで秋の茶漬飯はつい"手盛り八杯"という按配(あんばい)になって来る。
136 梶棒 梶棒 その梶棒に下っている真鍮の鉦の音を聞くと、
141 植込 植込 中庭の植込みを隔てた奥にあり、
143 つばき 椿 蜥蜴は悠々と椿の根元に逃げ込んでしまったが、
143 つばき 椿の木 許せぬ思いで椿の木の暗がりに向かって、
155 チャ 茶の葉 競走馬が茶の葉の食べさせすぎで死に、
155 釜屋から梁を伝ってやってきたものと見える。
156 籠(こばん)の床 籠(こばん)の床も毎日取り替えて可愛勝手いた物であった。
157 シュロ 棕櫚縄 棕櫚縄梯子を高いながら下りて行ったが、
157 下駄 下駄 誰かが下駄の先で、
157 桃色 桃色 桃色の地肌は妙に鮮やかに
158 サカキ 榊生け 神棚の榊生けの奥に隠し、釣り銭の五厘一銭を
161 猫板
長火鉢の猫板の上に暫く封書を載せて
162 クスノキ 楠木 梢が時計台の先端に届くほどの巨大な、梢が時計台の先端に届くほどの巨大な、由緒ありげな楠木が幾株も根を張っている。
162 由緒ありげな楠木が幾株も根を張っている。
162 梢が時計台の先端に届くほどの巨大な、
164 拍子木 拍子木 兄に代わって拍子木を持ち、
164 父親の釣りにはいつも艫(とも)に座って櫓を漕ぎ、
166 上り端 上り端 上り端(はな)に腰掛けたりたったりの
166 飯櫃 飯櫃 一人で飯櫃(めしびつ)から飯をよそい、
167 箸を置いて二人を窺うと、
168 下駄 下駄 健太郎は下駄を穿いて何処かへ出て
168 「風呂桶の蓋」
168 風呂桶 風呂桶 「風呂桶の蓋」
176 格子戸 格子戸 表の格子戸が開くと
176 梯子 梯子段 梯子段の下の暗がりで
176 梯子 梯子段 梯子段を一段上り、
177 板の間 板の間 その両足をすっくりと下ろして板の間に立ち、
178 行李 行李 行李ひとつ舁(か)くにもふらふらしていた子が、
184 ろうそく 蝋燭 風呂場の棚に揺れている蝋燭の儚(はか)ない炎に向かってさえも、
187 イチョウ 銀杏 銀杏の並木を植え揃えた道の両替には、
187 並木 並木 銀杏の並木を植え揃えた道の両替には、
188 サザンカ 山茶花 庭の山茶花の蔭から見える棟の建物はとうやら
194 クチナシ 梔子 梔子(くちなし)などとりどりに一色の㟦(ぼ)かしか、
200 大工 大工 本人は名のある棟梁について大工の見習いをしていると触れているけれど、
200 梯子 梯子段 誰かがゆっくりと梯子段を上がって来て襖の前で止まった。
200 棟梁 棟梁 本人は名のある棟梁について大工の見習いをしていると触れているけれど、
209 ビワ 枇杷 じっとり揺れた大粒の枇杷の実のような裸電燈が
209 看板 庵看板 傍ら庵看板を手の腹でぴたびたと叩きながら、
209 木戸
豊栄堂の木戸口が見える。
209 木戸 木戸口 高く巻きつけて木戸口に進み寄り、拾銭の木戸銭を払う
209 木戸 木戸銭 高く巻きつけて木戸口に進み寄り、拾銭の木戸銭を払う
210 ボタン 牡丹 咲き盛りの牡丹が一輪、
212 ボタン 牡丹 舞台の牡丹には忽(たちま)ち呼吸が通い始め玉虫色の
215 ミカン 蜜柑 蜜柑から手拭、
217 櫛には垢を溜めず、
217 木履 雨木履 雨木履の泥、
220 材木 材木置場 宝栄座からさして遠くない材木町の材木置場に腰を下ろしているのであった。
220 材木 材木 生臭いほど木の香の立つ新しい材木の上には、
220 木の香 生臭いほど木の香の立つ新しい材木の上には、
222 木仏 木仏金仏 木仏金仏になれというのではないけれど、
223 縁側 縁側 嵌め込んである縁側に喜和を座らせて
223 撞木 撞木 鐘も撞木の当たり柄、いい、妻は夫につれ、
226 -- 鉄漿 鉄漿(かね)をつける習慣
226 チャ 割木 土瓶の茶の葉を毎回換えず二、三度
227 マツ 松の割木を気前よく籠に投げ込めば、
227 ヤマモモ 楊梅 夏の楊梅、春の花見寿司と
227 割木 割木 松の割木を気前よく籠に投げ込めば、
239 木履 木履 歯替えしたばかりの木履の歯を不器用に泥濘みに取られ取られ後を
240 梯子 梯子段 梯子段の暗い隅に葛綿のような埃が丸く溜まっているのを
241 カシ 樫炭 固い樫炭を山に盛ったのを差し出す。
241 樫炭 固い樫炭を山に盛ったのを差し出す。
241 「燠(おき)も埋けてえへん。仕様もないなあ」
242 盆栽 盆栽棚 盆栽棚の鉢も悉く乾いていて、
242 一葉 短く切り揃えた筆で一葉一葉、
249 自分で板を打ち合わせた棺に入れて葬り、
252 格子 格子戸 階下の格子戸が荒々しく開き、
252 梯子 梯子段 梯子段が軋んだと思うと、
260 イチョウ 大銀杏 お稲荷様の大銀杏の梢は闇の中に溶け込んでいるほどに辺りは暗く、
260 イチョウ 大銀杏 大銀杏に棲む夥(おびただ)しい五位鷺の群れも
260 スギ 杉の柾目 杉の柾目の弁当を胸に抱えて、
260 お稲荷様の大銀杏の梢は闇の中に溶け込んでいるほどに辺りは暗く、
261 下駄 下駄 ひくひくと動かしていなければ下駄もろ共、
261 舟板 舟板 力を入れて舟板を填(は)めるたびに鈍い音が
261 柾目 杉の柾目 杉の柾目の弁当を胸に抱えて、
261 門松 門松の支度を終えており、 もう残らず門松の支度を終えており、
262 櫓舟 櫓舟 櫓舟で素人は少々無理であった。
263 橙色 橙いろ カンタラの灯も橙いろにまるく滲んで見える。
264 寄木細工 寄木細工 寄木細工の思い箱が一瞬砕ける濁った音が
264 木片 木片 バラバラに散った木片に混じって、
266 下駄 下駄 下駄を脱いで舟へ移ろうとするのへ
267 胴板 胴板 朱の組紐を留めた胴板が目の前に漂って
274 風呂の薪としている、傍の製材所の挽割線香を膝で二つ折っては、
274 製材所 製材所 風呂の薪としている、傍の製材所の挽割線香を膝で二つ折っては、
274 挽割線香 挽割線香 風呂の薪としている、傍の製材所の挽割線香を膝で二つ折っては、
279 根太 根太 足許の根太が抜け落ちたような心地であった。
279 障子 障子 これでこの家の障子の破れもまた一つ増えたばかりかますます大きくなると思うと、
282 下駄 下駄屋 花園町の下駄屋の職人なら世話が出来る
282 下駄 下駄職 立ち会わせて下駄職の話をしたところ、
283 楊行李 楊行李 楊行李も支那鞄も嫌だという健太郎の為に
286 サクラ 夜桜 高知公園二の丸の夜桜のもとでそいつの鏡を
286 薦樽 薦樽 岩伍の自腹で薦樽(こもだる)を買い、
289 木戸 裏木戸 裏木戸を押して絹が慌ただしく、
289 緑の香 中庭はもういちめん繁って蒸せるほどの緑の香りが立っており、
290 サクラ 小米桜 花も盛りを過ぎた小米桜の枝の蔭に盥(たらい)を出して
290 サクラ 小米桜 小米桜の下枝越しに離れを透かし、
290 下枝 小米桜の下枝越しに離れを透かし、
290 巴旦杏 巴旦杏 菊も凍傷(しもやけ)痕の見える巴旦杏(はたんきょう)のような
290 葉の間 葉の間から溢(こぼ)れ落ちた陽の光が盥(たらい)の中の洗濯物に斑(ふ)を作っている上に、
292 下駄 下駄 天鳶絨(びろんど)横緒の下駄一足買って貰うたぐらいで、
292 木戸 裏木戸 裏木戸から駈け出して行った。
296 障子 戸障子 大貞ま前に立って戸障子を開け放ち、
298 桶の中に重ねていた。
300 龍太郎は殆(ほとん)ど箸をつけていない膳を敷居際に押しやり、
300 龍太郎は殆(ほとん)ど箸をつけていない膳を敷居際に押しやり、
300 敷居 敷居際 龍太郎は殆(ほとん)ど箸をつけていない膳を敷居際に押しやり、
306 梯子 梯子段 梯子段を上る手間を省いてこんな所に、
308 サクラ 赤の地に観世水と桜を描いた友禅模様の産着は
315 桟橋 桟橋 桟橋でひとりでに泣けて来てん」
321 ツバキ 椿の木 椿の木の根元を振返って砂糖のように細かく光った
321 根元 根元 椿の木の根元を振返って砂糖のように細かく光った
321 植込 植込み 喜和は思わずよろめいて植込みの中に踏込み、
334 イチョウ 銀杏 裏の原っぱの虫採りからお稲荷さんの銀杏拾い、
335 花の板 敷いて作る平らな花の板を、
335 柳行李 柳行李に 今は用の無くなった柳行李に詰めてある
336 丸板 芯に赤を入れた白菊ま丸板や、
337 引扱(ひきしご)けて棒のようになる、
338 バラ 天鳶絨(びろんど) 綾子は薔薇の造花で飾った天鳶絨(びろんど)の帽子を被り、
345 敷居 敷居 家の敷居も跨がない筈が、
346 下駄 下駄 くじりで下駄の台に穴開ける事だけや。
346 下駄 下駄 一人前に下駄すげせれるようになるには
350 裁板 裁板 店の隅に裁板(たちいた)を置いて針を
355 枳棘 枳棘 全身枳棘(いばら)で指されているような苛立(いらだち)たしさから
361 ナシ 新高梨 何よりの好物の朝倉針木の新高梨を最後に口に入れてやりたい事で、
361 ナシ 新高梨 その新高梨は秋も十月に入らなければ
361 ナシ 新高梨 新高梨は土佐針木の今村梨と越後の天の川の高配によって 
361 ナシ 今村梨 新高梨は土佐針木の今村梨と越後の天の川の高配によって 
361 ナシ 梨も桃も皮ごとかぶりついた子供の頃を、
361 モモ 梨も桃も皮ごとかぶりついた子供の頃を、
361 木屑 木屑 それに鉋で削った木屑のように軽い鰹節も添え、
361 楊枝 楊枝 皿に盛って楊枝で食べる行儀よさより、
369 ナシ 新高梨 やっと出廻って来た新高梨を擦り卸し、
376 ヤマモモ 楊梅の木 今はもう実の生らない古い大きな楊梅の木の下に葬ったが、
376 桟敷 桟敷 もう田圃の桟敷にも電気を点け、
376 楊梅の木 今はもう実の生らない古い大きな楊梅の木の下に葬ったが、
378 ヤマモモ 楊梅 十市の楊梅も味噌漉しのまま入り、
379 飯櫃 飯櫃 夏の飯は飯櫃(めしびつ)でなく籠に移すのが慣いだけど、
379 敷居 敷居 敷居のスベりも滑らかで、
379 物干台 物干台 物干台(やぎり)から取込んだばかりの、
381 箸揃 箸揃 宮詣り、箸揃え、節句、
382 藤棚 藤棚 豊かに蔓延った藤棚があり、
387 バラ 薔薇 その衿元の淡い薔薇だけがいつまでも
390 広蓋 広蓋 予て志願の大工の腕を揮って大きな広蓋を拵えそれを上から
390 大工 大工 予て志願の大工の腕を揮って大きな広蓋を拵えそれを上から
390 梯子 梯子 屋根への段梯子は狭い上に背抜きの急勾配と来ており、
391 ユズ 柚子 柚子(ゆのす)を卸した冷やしそうめんのガラス鉢を並べなから、
391 何となく箸が進まないのであった。
396 イチジク 無花果 無花果を潰したような褐色の贓物を岩伍に見せて、
399 ヤナギ 褒められた柳の黒髪が、
400 やっと一人で櫛を使えるようになった頃、
400 暫くは櫛を手控えてはみたけれど、
400 桃割れ 桃割れ 初めて桃割れ結った十三の年、
401 サンゴジュ 珊瑚樹の簪 叮嚀に使い込んだ黄楊の櫛、笄(こうがい)、珊瑚樹の簪、大貞の遺品(かたみ)一切を添え、
401 ツゲ 黄楊の櫛 叮嚀に使い込んだ黄楊の櫛、笄(こうがい)、珊瑚樹の簪、大貞の遺品(かたみ)一切を添え、
401 黄楊の櫛 叮嚀に使い込んだ黄楊の櫛、笄(こうがい)、珊瑚樹の簪、大貞の遺品(かたみ)一切を添え、
403 ネーブル ネーブル ネーブルという臍(へそ)蜜柑を食べやすいよう切って置いてくれたり、
403 ミカン 臍(へそ)蜜柑 ネーブルという臍(へそ)蜜柑を食べやすいよう切って置いてくれたり、
404 「枷(かせ)となるか杖となるか」の駈けがあったけれど、
409 スギ 達磨杉 両側にモダンな達磨杉の植えてある敷石の道
410 桐箱 桐箱 特製最中を桐箱に入れて誂え、
410 薦樽 薦樽 床前に据え薦樽(こまだる)の鏡を抜いて
410 庭樹 庭樹 墨絵のような庭樹の影を映し出す。
412 木の箱 木の箱へ入れられて桃太郎みたいに、
413 樫炭 樫炭 火鉢には樫炭の火種も埋けておかねばならない。
413 移り箸 食べかたは移り箸迷い箸突っつき箸を戒められ、
413 迷い箸 食べかたは移り箸迷い箸突っつき箸を戒められ、
413 突っつき箸 食べかたは移り箸迷い箸突っつき箸を戒められ、
415 大工 大工 連日家へ大工を呼んでは注文をつけているのを
416 マキ 薪屋 東条の将棋屋、入り口も見えぬばかりに大束小束を積み上げてある薪屋、
416 将棋 将棋屋 東条の将棋屋、入り口も見えぬばかりに大束小束を積み上げてある薪屋、
417 住み慣れた身にはその㮰(のき)の高さは
417 サクラ 桜の大木 一抱え以上もある桜の大木を奥へずうーっと運び
417 サクラ 桜の枝 隙間なく巻いた桜の枝を痛めぬよう、
417 サクラ 桜もその内の一本ででもあろうかと
417 雨戸 雨戸 雨戸を閉めてある筈が開口いっぱい
417 桜の枝 隙間なく巻いた桜の枝を痛めぬよう、
417 大工 大工 大工の散らしたままの鉋屑を踏みしだいて法被の男たちが
417 大木 桜の大木 一抱え以上もある桜の大木を奥へずうーっと運び
417 鉋屑 鉋屑 大工の散らしたままの鉋屑を踏みしだいて法被の男たちが
418 サクラ 「この桜は、陽暉桜(ようきろう)の大将がお家へ御祝儀じゃそうに御座いやして」
418 サクラ 鬱金桜 本店別館の庭にある鬱金桜と同じものを贈りたいといい、
418 サクラ 鬱金桜 鬱金桜の大木がそう滅多とあるものではなく、やっと吉野に落ち着いたという。
418 サクラ 吉野 鬱金桜の大木がそう滅多とあるものではなく、やっと吉野に落ち着いたという。
418 太い木 太い木 「けんど植仙さん、こんな太い木が無事ありつきますやろうか?」
418 大木 鬱金桜の大木 鬱金桜の大木がそう滅多とあるものではなく、やっと吉野に落ち着いたという。
418 鉋屑 鉋屑 喜和は鉋屑を足に纏いつけながら家の中を見廻った。
419 サクラ 桜は宿替え後、植え痛みも極く少なく、すぐ葉を拡げ始めたのであった。
419 家の勢いがよけりゃ、こら放(ほ)っちょいてもすんぐ根を下ろします」
419 生木 生木 生木というなあ不思議なもんでがしてね。家の運が傾いたら必ず一緒に立木も枯れる。
419 桜は宿替え後、植え痛みも極く少なく、すぐ葉を拡げ始めたのであった。
419 立木 立木 生木というなあ不思議なもんでがしてね。家の運が傾いたら必ず一緒に立木も枯れる。
420 大工 大工 米は最初から大工志望の事とてこれは本丁筋の
421 行李 行李 親のようにこまごまと行李に詰めてやり、
423 イチョウ
お稲荷さんの大銀杏を仰いだ。
423 若葉 浅緑の若葉 あの透通るような浅緑の若葉にはまだ遠いものの、
423 それでも気のせいかほつほつと膨らんで見える梢は春霞の空にぐっと肩を張って見える。
423 この家のものは柱の傷ひとつ思いの染みていないものはない。
428 サクラ 吉野桜 陽暉桜(ようきろう)から贈られた中央の吉野桜を取巻いて築山、
428 チシャ 青萵苣 手遊びがてら果樹の脇に青萵苣(ちしゃ)など植えていると
428 マツ 東に法師ケ鼻の松が藹々(あいあい)と煙り、西に中之島の柳が嫋々(じょうじょう)と風を受け流している中に、
428 ヤナギ 東に法師ケ鼻の松が藹々(あいあい)と煙り、西に中之島の柳が嫋々(じょうじょう)と風を受け流している中に、
428 果樹 果樹 手遊びがてら果樹の脇に青萵苣(ちしゃ)など植えていると
428 盆栽 盆栽棚 盆栽棚がほど良く配置されてある中下り立ち、
432 敷居 敷居 表の敷居も硝子戸も真白に
432 長い柄の柄杓(ひしゃく)で海水を掬ってはたっぷりと道に湿(しつ)を打つ。
434 ウメ 松竹梅 築山の松竹梅と吉野桜が程よい配置となって風情を添える。
434 グミ 茱萸 鉢植の五葉の松を剪定し、植込みの桃、茱萸、梅桃(ゆすらうめ)などの果樹についた虫獲(むしとり)りなどもする。
434 サクラ 吉野桜 築山の松竹梅と吉野桜が程よい配置となって風情を添える。
434 マツ 松竹梅 築山の松竹梅と吉野桜が程よい配置となって風情を添える。
434 マツ 五葉の松 鉢植の五葉の松を剪定し、植込みの桃、茱萸、梅桃(ゆすらうめ)などの果樹についた虫獲(むしとり)りなどもする。
434 ヤマモモ 梅桃 鉢植の五葉の松を剪定し、植込みの桃、茱萸、梅桃(ゆすらうめ)などの果樹についた虫獲(むしとり)りなどもする。
434 果樹 果樹 鉢植の五葉の松を剪定し、植込みの桃、茱萸、梅桃(ゆすらうめ)などの果樹についた虫獲(むしとり)りなどもする。
434 五葉 五葉の松 鉢植の五葉の松を剪定し、植込みの桃、茱萸、梅桃(ゆすらうめ)などの果樹についた虫獲(むしとり)りなどもする。
434 造作 造作 しょっちゅう大工を招(よ)んで小普請や造作をさせては心からこちらの暮らしを
434 大工 大工 しょっちゅう大工を招(よ)んで小普請や造作をさせては心からこちらの暮らしを
434 庭木 庭木 気晴らしには庭木の手入れに立ち、
434 普請 小普請 しょっちゅう大工を招(よ)んで小普請や造作をさせては心からこちらの暮らしを
434 楊枝 楊枝 こちらでは上衿(うわえり)の掛け目に楊枝など差して
442 カリン かりんの胴 今は店の書類棚脇にこうきの棹(さお)にかりんの胴
442 今は店の書類棚脇にこうきの棹(さお)にかりんの胴
446 センダン 堅い栴檀台 少々重いけれど堅い栴檀台の下駄を穿かせているだけれど、
446 フジ 藤の蔓 子に対する情は岩伍と喜和では松の木と藤の蔓ほどに違い、
446 マツ 松の木 子に対する情は岩伍と喜和では松の木と藤の蔓ほどに違い、
446 下駄 下駄 下駄のちびかたで自分の心得としたものであった。
446 真直ぐに穿いて板のよに減らせて行く。
450 浦戸待ち周辺に楣(のき)を並べる料亭
452 わざと身の廻りに垣を作っているせいかとも、
454 塵箱 塵箱 芥(ごみ)を捨てに往来へ出て塵箱の並んでいる場所
456 格子 小格子 机の前の小格子も細かに指図して建具師に拵(こちらえ)えさせ、
456 建具 建具師 机の前の小格子も細かに指図して建具師に拵(こちらえ)えさせ、
456 塗り箸 剥げた塗り箸で菜を摘まむような、
456 欄干 欄干 二階の欄干(てすり)に靠(もた)れて、
457 ヒノキ 新湯のせいなのか桶の檜の匂いなのかは判らないが、
457 新湯のせいなのか桶の檜の匂いなのかは判らないが、
458 羽目板 羽目板 湯殿の羽目板に突っ張り、
460 薪小屋 庭の隅の薪小屋から束を抱えて風呂の焚口へ歩いて
460 庭の隅の薪小屋から束を抱えて風呂の焚口へ歩いて
460 庭木 庭木 庭木の縞目に重なって呆(ぼ)んやりとその刷り硝子に
462 拍子木 拍子木 遊郭の火の用心の拍子木の音にもすぐ目をさますほど、
463 鉛筆 鉛筆 宵に喜和の削ってやった鉛筆の頭を揃えて入ったまま、
463 鉛筆 鉛筆 夜の鉛筆削りは喜和の物思いの時間となり、
463 襖を開けて茶の間へ出ると長火鉢の前に躙(にじ)り寄って
463 長火鉢 長火鉢 襖を開けて茶の間へ出ると長火鉢の前に躙(にじ)り寄って
463 梯子段 梯子段 梯子段の下の三畳へごそごそと引っ込んでしまうのを
463 猫板 猫板 長火鉢の猫板の上には、火に炙られて
463 猫板 長火鉢 長火鉢の猫板の上には、火に炙られて
463 熱灰 熱灰 つい考え込んで筆入れの縁を熱灰で焼いてしまつたりする。
463 喜和は箸でなおその薬袋を幾度も押しつけて
468 梯子段 梯子段 跫音を忍ばせて暗い梯子段を登って行った。
468 木の実 木の実 喜和は薬袋の木の実を幾粒となく噛んでいるうち
472 子供達の部屋の襖を開けると。
477 さくら 桜の大樹 一際(ひときわ)抽(ぬき)んでて枝ぱかりの桜の大樹が天に向かって伸びているのが見え、
477 さくら 吉野桜 それが家の庭のあの吉野桜なのだとすぐ判る。
477 さくら あの桜 うちのあの桜、学校の帰り道の何処からでもちゃんと見えるよ。
477 さくら 桜の下 今思い返せばこの桜の下に茣蓙(ござ)を拡げ、
477 ヤナギ 大柳 新地遊郭の入口には葉の落ち尽くした枝ぶりのよい大柳があり、
477 ヤナギ 大柳 大柳の脇から遊郭を斜交いに突っ切って田の畦道へ出ると
477 枝ぶり 新地遊郭の入口には葉の落ち尽くした枝ぶりのよい大柳があり、
477 枝ぱかりの 一際(ひときわ)抽(ぬき)んでて枝ぱかりの桜の大樹が天に向かって伸びているのが見え、
477 大樹 桜の大樹 一際(ひときわ)抽(ぬき)んでて枝ぱかりの桜の大樹が天に向かって伸びているのが見え、
477 新地遊郭の入口には葉の落ち尽くした枝ぶりのよい大柳があり、
477 もう凩(こがらし)めいた野分が、
478 さくら 風の中に枝を張る桜は喜和の目に如何にもしょんばりと淋しげに見えた。
478 花見 花見 花見をしたのは植えた翌年だったから花も極く少なく
478 根を下ろして 今の時期の移植だったら果たして根を下ろしていたであろうか。
478 木の幹 この木の幹に繋ぐだけになっている此の頃を喜和は思うのであった。
481 普請 普請 梅田橋に妾宅の普請が出来上がるまでの間、
483 衣桁 衣桁 衣桁(いこう)に駈け廻しては皆で賑やかに
483 縁側 縁側 縁側で叮嚀に梳いて肩に垂らしながら
483 普請 普請 梅田橋の普請も出来上がって富田を引揚げるとき、
515 櫛の歯 こうして櫛の歯を引くように富田の古馴染みも散り散りになって行く、
515 雨戸の桟を見に行ったりする。
517 あちこちの枝を折られた植木の蔭には、
517 障子 障子 障子や襖は繕う端からいつも破られていて、
517 植木 植木 あちこちの枝を折られた植木の蔭には、
518 欄干 欄干 北窓の欄干(てすり)に肘を凭(もた)せて庭に目をやると、
519 サクラ 吉野 また一層背が高くなったように思える吉野はもう黒々と濃い葉桜で、
519 ヤナギ 大柳 新地遊郭の入口の大柳には以前藁で拵(こしら)えた人形が
519 ヤナギ 柳の梢 今柳の梢を眺めて藁人形をすぐお照に置き換えて
519 花の芽 今年はこの花の芽も盛りも一切目に映らずに
519 柳の梢 今柳の梢を眺めて藁人形をすぐお照に置き換えて
519 葉桜 葉桜 また一層背が高くなったように思える吉野はもう黒々と濃い葉桜で、
520 葉桜 葉桜 庭の葉桜は濃い蔭を作り、
522 妻楊枝 妻楊枝 軍手の指先縢(かが)りから妻楊枝削り、
524 卓袱台 卓袱台 勉強机にしていた卓袱台(しっぽくだい)を北の部屋に据え、
527 サクラ 桜の花吹雪 毎年春には庭の桜の花吹雪を猪口(ちょこ)に掬(すく)って飯事(ままごと)し、
527 挿木 挿木して 一人の手で挿木して花壇いっぱい咲かせた菊の花を取り、
527 落葉 落葉 いまは障子を擽(くすぐ)って通る落葉の音が終日さやさやと鳴り、
527 落葉 落葉 秋になれば、庭に堆(うずたか)くなる落葉を竹箒で掻き寄せ燐寸で火をつけると
528 サクラ 吉野 それは庭の吉野の倒れる音かも知れん、
528 サクラ 吉野 この吉野を植えた植仙の言葉の、
528 枝を 木は枯れるどころか益々枝を拡げるところだけれど、
528 生木 生木 「生木というなあ、不思議なもんでがしてね」
528 丁々(とうとう)と木を伐るような音が枕に聞こえ、
528 木は枯れるどころか益々枝を拡げるところだけれど、
528 木目 木目 地の木目は風雨に曝(さら)され幾分摩滅して見える。
529 サクラ 吉野 運命の手によって庭の吉野が伐り倒されてゆくのはさらに此の上の悲運に見舞われるかも知れぬと
529 マツ 五葉の松 この蘭と五葉の松だけは二階に上げて
529 盆栽 盆栽棚 庭の盆栽棚の中から、
540 卓袱台 卓袱台 袋貼りしている卓袱台の脇に座り、
541 横板 板に雨垂れ 立て板に水、とまではいかんが、横板に雨垂れぐらいには行く。
541 立て板 立て板に水、とまではいかんが、横板に雨垂れぐらいには行く。
541 板挟 板挟み 岩さんと姐さんの板挟みになって辛がっちょる。
545 愛宕不動に杖をついて毎日詣っている。
551 木登 木登り 女のすまじきものに、「抗(あら)がい木登り川渡り」といいそれを綾子にも教えて来たけれど、
552 ミカン 蜜柑 「その蜜柑、うちの」とか「ラジオつけよか」とか
552 下駄 下駄 硝子戸の外にその下駄の音は次第に遠ざかって行くようであった。
556 黒漆 まだつやつやと照りのよい黒漆、
556 卓袱台 卓袱台 綾子の勉強机の卓袱台と青い紗(しゃ)を張ってある本屋など、
557 イチジク 無花果 梅桃(ゆすらうめ)、桃、無花果の木々は健在だけれどこれも根元は枯葉と草で埋まり来年つける実はおぼつかない。
557 サクラ 吉野の幹 最後に吉野の幹に手を掛けて空を仰いだ。
557 ボタン 牡丹の老木 もう芽もつけなくなっている牡丹の老木の廻りの草を㭞ってやった。
557 マモモ 梅桃 梅桃(ゆすらうめ)、桃、無花果の木々は健在だけれどこれも根元は枯葉と草で埋まり来年つける実はおぼつかない。
557 モモ 梅桃(ゆすらうめ)、桃、無花果の木々は健在だけれどこれも根元は枯葉と草で埋まり来年つける実はおぼつかない。
557 吉野の幹 最後に吉野の幹に手を掛けて空を仰いだ。
557 枯葉 枯葉 梅桃(ゆすらうめ)、桃、無花果の木々は健在だけれどこれも根元は枯葉と草で埋まり来年つける実はおぼつかない。
557 根元 根元 梅桃(ゆすらうめ)、桃、無花果の木々は健在だけれどこれも根元は枯葉と草で埋まり来年つける実はおぼつかない。
557 もうすっかり葉を振い尽した梢は気持ちよく透けて色紙のように濃い青の空が見える。
557 薪小屋 薪小屋への道を残して花壇との
557 盆栽 盆栽棚 盆栽棚の鉢はすっかり乾上(ひあが)り、
557 木々 木々 梅桃(ゆすらうめ)、桃、無花果の木々は健在だけれどこれも根元は枯葉と草で埋まり来年つける実はおぼつかない。
557 老木 牡丹の老木 もう芽もつけなくなっている牡丹の老木の廻りの草を㭞ってやった。
558 サクラ 夜毎聞えて来た木を伐る音はこの桜ではなく、
558 サクラ 桜同様 と最後まで頼っていたのにこれも桜同様、
558 炭籠から絶えず炭を継いでいる喜和の向こうに
558 炭籠 炭籠 炭籠から絶えず炭を継いでいる喜和の向こうに
558 木を伐る 夜毎聞えて来た木を伐る音はこの桜ではなく、
564 敷居と柱らしい手触りが襤褸(ぼろ)の奥から
564 敷居 敷居 敷居と柱らしい手触りが襤褸(ぼろ)の奥から
569 吹き込む寒空には襖、障子の代わりに襤褸(ぼろ)の山ょ積み上げて
569 障子 障子 吹き込む寒空には襖、障子の代わりに襤褸(ぼろ)の山ょ積み上げて
573 鋸屑 鋸屑 うどんの大釜の燃料は安くて長保ちする鋸屑を使い、
573 鋸屑 鋸屑 鋸屑は昔常盤町の頃の氷会社の脇にいつも沢山こぼれていたのを想い出し、
573 鋸屑 鋸屑 勝手口の入口には鋸屑の山を囲う為の簡単な庇が取付けてある。
573 勝手口の入口には鋸屑の山を囲う為の簡単な庇が取付けてある。
574 木履 木履 水の流れる料理場に木履(ぼくり)を穿いて立っているのにさして冷え込みもしないのは
576 鋸屑 鋸屑 鋸屑の山を廻って裏口から戻って来る。
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