ヤシ科の総称です。日本では昔からワシュロというのがあり、現在では東北地区にまで栽培されています。高さが10メートルほどになるものもあります。シュロ皮という繊維質がこの木の特徴で、さまざまな物に利用されてきました。
以下に面白い、素敵、綺麗な表現のあるものをピックアップします。
シュロに関する情報と写真はコチラ
- 尾崎紅葉の「金色夜叉」
- 梭櫚の毛を植ゑたりやとも見ゆる口髭を掻拈(かいひね)りて、太短かなる眉を顰(ひそ)むれば、(233頁)
- 泉鏡花 の「国貞えがく」
- 灯は棕櫚の葉風に自(おのず)ずから消えたと覚しく……真の暗がりに、もう何んにも見えなかった。(138頁)
- 岡本かの子の「鮨」
- 二人のいる近くに一本立っている太い棕梠の木の影が、草叢(くさむら)の上にだんだん斜にかかって来た。68頁)
- 夢野久作の「白菊」
- うしてその寝台の裾の床の上には、少女よりも心持ち大きいかと思われる棕梠の毛製の熊が一匹、少女の眠りを守護るかのように、黒い、ビックリした瞳を見開きながら、寝台に倚(より)かかって坐っているのであった。(168頁)
- 芝生ふのはずれには棕櫚の木のかげに、クリイム色に塗った犬小屋があります。(115頁)
- ただ高い棕櫚の木の梢に白い月が一輪浮んでいるだけです。(123頁)
- 堀辰雄 の「菜穂子」
- 何か化け物じみて見える数本の真白な棕梠ごしに、ぼんやりと暮方の雪景色を眺めていた。(158頁)
- 太宰治 の「春の盗賊」
- 棕櫚の葉の如く、両手の指を、ぱっとひろげたまま、活人形のように、ガラス玉の眼を一ぱいに見はったきり、そよとも動かぬ。(261頁)