春前に咲くカキは万葉の時代から日本人に親しまれてきました。
庶民の樹木、特に実として有名です。ただ枝などはもろいため、折れやすく、木登りを戒めることわざもあります。
すべての小説での出現ランクは7番目ですが、作家の取り上げは5番目でした。
カキの名前を小説に入れた作家は45名います。また1つ以上カキの名前を使った小説としては74の小説でした。
すべての小説での出現回数は344箇所ありました。
カキが一番出現する小説は有吉佐和子の紀ノ川です。
最も出現回数の多い作家は島崎藤村で51箇所、 次は夏目漱石で38箇所です。
以下有吉佐和子の37箇所、長塚節の2137箇所、芥川竜之介の1237箇所、佐藤春夫の1237箇所、水上勉の1237箇所、山本周五郎の937箇所、谷崎潤一郎の937箇所、川端康成の837箇所、太宰治の737箇所でした。(以下省略)
また小説別では、*有吉佐和子紀ノ川」28箇所、長塚節の「土」21箇所、島崎藤村の「夜明け前」19箇所、島崎藤村の「千曲川のスケッチ」18箇所、夏目漱石の「吾輩は猫である」17箇所、佐藤春夫の「田園の憂鬱」12箇所、夏目漱石の「三四郎」9箇所、谷崎潤一郎の「吉野葛」9箇所、夏目漱石の「永日小品」8箇所、芥川竜之介の「猿蟹合戦」8箇所、島崎藤村の「破戒」8箇所、有吉佐和子の「華岡青洲の妻7箇所でした。(以下省略)
以下に面白い、素敵、綺麗な表現のあるものをピックアップします。
**に関する情報と写真はコチラ
- 夏目漱石の「吾輩は猫である」
- ある人はインスピレーションを得る為めに毎日渋柿を十二個ずつ食った。(269頁)
- 表へ出ると星月夜に柿落葉、赤毛布にヴァイオリン。(435頁)
- 夏目漱石の「三四郎」
- 前の家の柿の木と、はいり口の萩だけができている。なかにも柿の木ははなはだ赤くできている。(106頁)
- 夏目漱石の「思い出す事など」
- 人が余に一個の柿を与えて、今日は半分喰え、明日は残りの半分の半分を喰え、(211頁)
- 島崎藤村の「若菜集」
- その口唇にふれたまひ かくも色よき柿ならば などかは早くわれに告げこぬ(31頁)
- 島崎藤村の「千曲川のスケッチ」
- 黄勝な、透明な、柿の若葉のかげを通るのも心地が好い。(23頁)
- 黄ばんだ柿の花は最早到る処に落ちて、香気を放っていた。(29頁)
- 肉の厚い柿の葉は霜のために焼け損なわれたり、縮れたりはしないが、朝日があたって来て霜のゆるむ頃には、重さに堪えないで脆く落ちる。(86頁)
- 深い秋雨のために色づいた柿の葉が面白いように地へ下るのを見た。(86頁)
- 黄ばんだ寒い日光は柿の枯枝を通して籾を積み上げた庭の内を照らして見せた。(165頁)
- 土塀に映る林檎や柿の樹影は何時まで見ていても飽きないほど面白味がある。(182頁)
- 島崎藤村の「破戒」
- 路傍の柿の樹は枝も撓むばかりに黄な珠を見せ、粟は穂を垂れ、(117頁)
- 島崎藤村の「夜明け前」
- 土蔵の前に茂る柿の若葉は今をさかりの生気を呼吸している。(224頁)
- 石を載せた板屋根、色づいた葉の残った柿の梢なぞの木曾路らしいものは、(225頁)
- 彼は土蔵の入り口に近くいて、石段の前の柿の木から通って来る夜風を楽しみながらひとり起きていた。(247頁)
- その年の渋柿の出来のうわさは出ても、京都と江戸の激しい争いなぞはどこにあるかというほど穏やかな日もさして来ている。(273頁)
- 与謝野晶子の「みだれ髪」
- 牛の子を木かげに立たせ絵にうつす君がゆかたに柿の花ちる(50頁)
- 長塚節の「土」
- 彼等を庇護している木が柿の木であれば梢からまだ青い實を投なげて、(134頁)
- やがてそれが稍(やや)黄色味を帶びて来て庭の茂った柿の木や栗の木きにほつかりと陰翳(かげ)を投げた。(149頁)
- 志賀直哉の「暗夜行路」
- 普段下から見上げていた柿の木が、今は足の下にある(11頁)
- 佐藤春夫の「田園の憂鬱」
- 柿の病葉(わくらば)が一枚、ひらひらと舞ひ落ちて、ぼつりとそこに浮ぶ。(163頁)
- 井伏鱒二の「黒い雨」
- 菊の葉や柿の若葉の天麩羅なら戦争このかた何度か食べている。(359頁)
- 川端康成の「雪国」
- 柿の木の幹のように家も朽ち古びていた。雪の斑らな屋根は(51頁)
- 山本周五郎の「あとのない仮名」
- たとえば柿ノ木にしたって、生(な)り年は1年おきで、次の年には休ませなければ木は弱っちまう、(339頁)
- 林芙美子の「浮雲」
- 荒れた狭い庭の柿の木には霜を置いたような小粒な渋柿がいくつか実っていた。(74頁)
- 幸田文の「木」
- 柿は柿の緑を伸ばして、一人前になる。(84頁)
- 小島信夫の「馬」
- 焼けあとからいつのまにか生えてきた一本だけある実のならぬ柿の木のかげにかくれて、(303頁)
- 北杜夫の「楡家の人びと」
- 柿の落葉が軒に当るかすかなひびきまで聞こえてきた。(451頁)
- 有吉佐和子の「紀ノ川」
- 門の中にある柿の木に青葉が繁って、それが陽光に透かされ、冴えた色となって華子を迎えたのである。(273頁)