日本万国博覧会と木

ブリティッシュコロンビア州館

参加申し込み・表明 1967年12月15日

館のテーマ
美(うる)わしいブリティッシュ・コロンビアの人と生活 
木とのかかわり
樹齢 270 年、最高 50メートル余のカナダ産のダクラスファー材原木が聳えていた
館スタンプ
イラスト鳥瞰図
この万博で最も異色のデザインで、人目をひいているものでした。カナダや米国からの出展では木材をふんだんに利用したものが多い中、ブリティッシュコロンビア州は林業が盛んで、そのためか館では原木そのものを押し出したものとなっています。
丸太による自然、19本のアルミの角柱がつくる扇形のモニュメントによる科学技術、とブリティッシュコロンビア州を象徴し鮮やかなコントラストを見せていました。
これらの木の樹種はのダクラスファー(Douglas fir 学名 Pseudotsuga menziesii) です。日本では一般に米松(べいまつ) と呼ばれるもので、多くの日本在来工法住宅の梁(はり)や桁(ケタ)に利用される木材です。昭和の高度成長期や平成の時代の日本の住宅では必ず大量に使われる木です。このパピリオンも「モミノ木彫刻」と呼ばれていましたが、正確にはモミではありません。
日本の木で性質が近いのはトガサワラです。
バンクーバー島で伐採された樹齢 270 年前後のもの80本から構成されていますが、このように通直のものを集めるのは大変であったろうと推察できます。また樹皮がついたままで運ばれてきたことも驚きです。
最大長の6本は50メートルもあり、元口は直径1.4メートル、重さは1本で32トン以上もありました。
展示パピリオンとしてのメインは劇場で極端な縦長のスクリーンでした。 劇場の上には220本の丸太が立ち、ちょうど丸太組の中に配置されているようです。また地下展示室、池や滝のある岩山と二つの広場などての3つの部分から構成されていました。
これらの長尺材は現地で運搬するのにトレーラー2台で対応したとのこと。バンクーバーから日本の木材専用船「峰凰丸(ほうおうまる)」1万3000トンに積まれ、神戸港に陸揚げされました。
開催当初は自由に丸太の上に登ることができ、かなりの高所に登りつめた人もいましたが、危険とのことで会期途中から五段目くらいからロープで制限されました。
万博終了後、大阪大正区にあった杭丸太専門業者であった当社にこれらの丸太購入の打診がありましたが、大きさや、金額、専門外だったため辞退しました。結局大阪平林の津田産業さんで引き取ったようです。
また、この木材の製材したものを喫茶店のカウンターにしているお店が2019年5月現在まだ存在します。その名もずばり「もみの木」(阪急十三駅東口より徒歩5分 大阪市淀川区十三東3-21-11)

ダクラスファーの伐採から建設まで

パビリオンの資料より。言葉はそのまま掲載しました。

1.腕の良い木こりがとてつもなく大きなダクラス・ファー(もみ)の木を、傷つけず切り倒すというむずかしい仕事をみごとにやってのけます。


参考

ダクラスファーについて


ダクラスファーにの物理特性ついて


One highly skilled logger is equal to the task of dropping one of the giant Douglas fir tree without damaging it.

2.長い材木になると森から海岸まで運ぶのにトラック二台分の長さのトレーラーが必要です。この材木運搬用トラックはモントリオールで開かれたエキスポ67にブリティッシュ・コロンビア州が展示したものです。
The longest logs required two trucks to transport them from the forest to the sea. This logging truck was part of the British Columbia exhibit at Expo 67 in Montreal.

3.材木の中でも特に長いものは、荷台一杯に積んだ材木の更に上に、運転席の屋根よりも高く積まなければなりません。材木でつながったような形のこのトレーラーを運転して、森からの曲がりくねった道路を走るのは簡単な仕事ではありません。


Some logs were so long that they had to be loaded on top of fully loaded trucks to raise them above the cabs and driving these two log-linked trucks down twisting logging roads was no easy task.

4.海岸に着くと、材木は注意深く海の上に降されます。そしてブリティッシュ・コロンビアの内海を横切り、五〇キロ近く離れたバンクーバー港まで引き船に引かれて行きます。


At tidewater, the logs were carefully lowered into the sea and then towed across some thirty miles of British Columbia's inland sea to the Port of Vancouver.

5.バンクーバー港で「峰凰丸」に積み込まれ、材木は神戸まで長い航海の途につきます。


At Vancouver the timber was loaded onto the decks of the 'Ho-o Maru' to begin the long trip to Kobe.

6.神戸港の岸壁では、害虫予防のために材木をいぶして消毒します。そして夜の高速道路を万博会場へと運ばれて行きます。
One the docks at Kobe they were fumigated as a precaution against insect pests and then hauled at night along the expressway to the Pavilion site at Expo70.

7.ブリティッシュ・コロンビア館が立派にできあがったかげには、すぐれた技術を身につけた日本の作業員の皆さんの惜しまぬ努力と協力のおかげです。技術面だけでなく、長い伝統につちかわれた職人気質をもち、立派な木を愛し、尊敬さえしているこの人達にとって、途方もなく大きな材木を組み合わせて「巨大な木の彫刻」を作り上げるのも手なれた仕事のようでした。


The successful completion of the British Columbia Pavilion is due, to a very large extent, to the skill, dedication and cooperation of the Japanese workmen. With their long tradition of fine craftsmanship, with their love and even reverence for fine wood, they had no trouble in assembling the huge logs into what has been described as a gigantic sculpture in wood.

館の建築データー (面積関係の単位は平方メートルです)

敷地面積 建築面積 高さ 延床面積 主要構造 収容人数 設計 施工 管理
1800 246 50.9m 1143 木造、鉄骨鉄筋造 580人 バクレー・マクラウド 清水建設 ドミニオン建設
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