慶応二寅五月十四日暁寅刻頃より木津難波
辺より発起夫より玉造リ天満上町辺
端々より二三百人計リ徒党幾手二相分る東市中
搗米屋来リ白米一斗二斗売呉候やう價銭百
文弐百文差置持帰リ候米屋断候得共一切不聞入
銘々勝手ニ黒白米無差別持帰リ或蔵へ入俵の
まま持帰るる有り相咎候得は却家内打擲ニ及尤
道頓ほり嶋ノ内船場上町川西天満堂嶋一時
ニ相起リ候事不思議の事ニ相聞へ尚両替屋へハ
壱朱銭一貫文ニ替呉弐朱二貫文渡せ杯と無法
申掛彼是争論中多人数相集リ店先の金
銭盗取帰リ申候ものも有鴻善が作杯へハ施行
いたしやう無体申掛大勢乱入合戦の如し
見物の人々捕手の人往来筆紙ニ難尽混乱
其上午ノ時頃よりハ大雨如車軸降り出し如何
成行世の中哉と心痛仕候如斯四方八方動き
立事不思議乱世の魁ニ相見へ候拙店杯も素
戸〆切一切出入相止候事両三日右候付米屋ニ
よりてハ身上仕舞候者も多分有之様子ニて爰ニ天満
十丁目ニ当月十二日新ニ米屋相開立派ニ致