私が現地から帰国したころ、朝日新聞にカラー写真付きで「山が丸裸のような状態」になっている様子が掲載され、日本の商社が木材輸入のためにインドネシアの山を荒らしているとする記事が出ました。
しかし、これは完全に事実と異なります。この報道を見た多くの人が「現地の山々が禿げ山状態になっている」と誤解したことでしょう。実際には、「森をすべて伐採する」ことは行われておらず、道路建設に必要な部分だけが伐採されていました。
インドネシアの森にはさまざまな樹種が生育していますが、そのすべてが木材として利用できるわけではありません。そのため、必要な木だけを選んで伐採するのが効率的です。写真を見ても、伐採されたかどうか分からないほど自然のままに見えることもあります。私の記憶では、1ヘクタール当たりで70立方メートル(リューベ)の木材を産出できれば「良い林区」と言われていました。サッカー場ほどの広さで、5~7本の伐採に相当します。
一方、禿げ山のようになっている地域は、原住民による焼き畑や、パームヤシのプランテーション開発のために皆伐されたものでした。今も昔も、大手メディアが事実とは異なる報道をすることがあると感じます。
確かに、日本の住宅やビル建設のため、インドネシア産のメランティ材は合板の材料として最適でした。また、インドネシアは発展途上国として多くの資金を必要としており、国家として木材輸出を推進していました。そのため、日本とインドネシアの利益は一致していたのです。
その後、インドネシア政府は丸太の輸出を禁止し、自国で製材した木材の輸出に方針を変更しました。さらに、合板の製造・輸出へとシフトしていきました。時代に合わせて資源を有効活用する取り組みだったと思います。