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日本人と木の文化

第6章 造形材料としての木

11.材料の嗜好調査

 第二章第二節の「材料の遠心的な配列」の中で、私は材料を従来のタテ割り評価とは別に、人間を中心において、親しみやすいものから順次並べていくヨコ割り式の評価も、選択に当たって考慮すべきことではないかと書いた。それに関連する実験をしてみたところ、興味ある結果が得られたので、以下に簡単に紹介しよう。この研究は千葉大学助教授大釜敏正氏との共同で行ったものである(「第三四回日本木材学会大会研究発表要旨集」昭五九)。
 実験の方法は左図の下に書いたように、日常生活の中で使われている建築材料十五種を選んだ。試験材の大きさは二〇×二七×一~ニセンチで、被験者は大学生男女二十五名ずつの計五十名である。まず机の上に十五種の試験材を無作意に並べ、視覚によっていやな感じや違和感の大きい材料の順序に答えさせ、実験者が別な机の上にその順序に並べ換える。次に被験者が直接手で材料に触れながら、自分の嗜好の順序に並んでいるかどうかを確かめる。この操作によって、視覚と触覚による材料の好みの順位を決め、それを記録し計算してみたのである。
 実験の結果は上の図に示すようであった。図のタテ軸の得点というのは、最も違和感の大きい15位のものを0点、違和感の少ない1位のものを100点として、各材料に点数を与え、それを平均して出した数値である。またヨコ軸は各人の順位づけを平均したものである。これから分かることは、木質系のものが右上に集まり、金属系、鉱物系のものが左下に集まっていることである。つまりいちばん好まれるのは木のグループだということである。なお嗜好の判断基準を何によったかを聞いたところ、①明るさ、純粋さ、軽さ、②自然さ、あたたかさ、③感じのよさ、豪華さ、楽しさ、によって順位づけをしたことが分かった。
 実はこのテストをする前は、若い学生を対象にしたので、木の好みはそれほど顕著に出てこないだろうと予想していた。ところが結果は予期に反して木肌への嗜好が大きく現れた。この実験をもう少し熟年の人を対象にして行ったなら、いま述べた傾向はもっと強く現れたかも知れないと思う。日本人は木の好きな民族だと、しみじみ考えさせられた実験であった。
*ケヤキ(柾目) ケヤキ(板目) ヒノキ(柾目) スギ(柾目) ローズウッド(板目) ベイッガ(柾目) ふすま紙(クリーム) ビニールクロス(つや消) 大理石 ビニールクロス(光沢) タイル(白) 樹脂板(床板用) ステンレス モルタル 

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