スプルース
解説
英名Spruce (スプルース)
学名 Picea sitchensis (シトカスプルースの場合の学名)
スプルースは40種類以上もあるピセア種の総称で学名のピセアは樹脂を意味している。
樹皮、木、葉、球果にたくさんの樹脂を作り、その量は針葉樹の中では松の次である。
生息地はヨーロッパから、南シベリア、北米まで。
樹高は60mにもなり、多くは日陰に生息し、樹自体もおのずから深い影を作りだす。
日本でなじみ深いのは
シトカスプ-ル-スだろう。
シトカは北米の西海岸側が主な産地名である。
西海岸の北米先住民は、柔軟な根と若い樹の小枝でバスケットや家庭用品を作っていた。
現在では一般建築用、造作建具、合板、楽器材などに用いられている。
無味無臭なので食品梱包用に適した木だ。
木肌が白色で光沢をもつため、最も重要な新聞紙のパルプ原料でもある。
しかし、やや桃色を帯び時間の経過とともにかなり濃色になるものもある。
加工、仕上がりとも良く、乾燥も早く、強度的にも優れるが耐久性はやや低い。
音響特性にも優れ、ギターの表板など弦楽器のトップ材として定番となっている。
ピアノの音のよしあしは木の響板の材質で決まってしまうが、この木は楽器用材の中で一番比重が小さく、音響伝播速度が速い。
そのためピアノ材としても最適で、高級ピアノに利用している。
また、ヤマハのスピーカボックスには、コーン紙に世界で初めてスプルース100%使用した30cmウーファー付きのものがある。
節のないシトカ・スプルースは比重のわり強度が高いといった特徴にも目をむけられ、グライダーの骨組み、ボートのオールやマストなどに使われる。
つい最近までこの木は最も強度が高く、軽くて強い材料だった。
有名なハワードヒューズが製作した世界最大の飛行機スプルース・グースは全幅98mもある木造の飛行艇で、その名のとおりスプルースを使っていた。
オレゴン州ポートランドのエバグリーン社の航空博物館にいまも展示されている。
また、ライト兄弟が人類初の動力飛行機に使った木はスプルースだった。
最近では、読売テレビが主催し琵琶湖畔で開催している鳥人間コンテスト選手権大会にもスプルースを使用した機体をよく見かける。
クリスマスツリーの正体はノルウエイ・スプルース
ホワイトスプルースも北米で原住民の生活に深くかかわった木であり、根が非常に柔軟なのでカヌーを縫い合わせるために使われていた。
バスケット、雪靴などまでも根っこを使って縫っていた。
また、民間医療として樹脂などは雪盲のうずき、火傷、切り傷、ただれ、はれものやおでき、膿瘍の治療にも適用されている。
また、樹皮の内側は傷の悪化したものなどの外傷用薬用材〔包帯〕として使っていた。
ノルウエイ・スプルースは植林に広く使われていて、英国では1500年ごろから植林されている。
スプルースはという名前の由来はこの木にあるとされ、英国にノルウェイスプルースが紹介されたときに、当時の産地のプロシア(Prussia)王国が"プルース"と呼ばれていたことに端を発するという。
しかし日本では「クリスマスツリー=モミ」だと思っている人が多いが、ほとんどはノルウエイ・スプルースが使われている。
ヨーロッパでもクリスマスツリーとして重宝されている。
世界最大の飛行機はスプルース製って、ホント?
エンゲルマンスプルース 北海道大学植物園 2014年9月13日