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- ID:
- 42790
- 年:
- 2018
- 月日:
- 1007
- 見出し:
- 職人追う「本物の音」 蟹江、ギター製造の現場
- 新聞名:
- 中日新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20181007/CK2018100702000058.html
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- 記事
-
昨年八月に蟹江通信部に赴任したときから、ひそかに気になっていた場所がある。
蟹江町今西にある寺田楽器(本社・名古屋市東区)の蟹江工場だ。
記者はギター演奏はまったくの素人。
だが幼少期に十年以上ピアノを習っていたこともあり、楽器ができる過程はぜひとも見てみたいと思っていた。
今回、同社
にお願いし、ギター製造工場の内部に潜入させてもらった。
社員約六十人のうち、九割ほどがギター職人だという。
アコースティック、エレキのほか、ボディー内部が空洞になっている「フルアコースティックギター」なども製造している。
営業担当の石塚亮さん(39)は、「多種類のギターを同じラインで作っているのは世界的に見てもうちくらいなのでは」と胸を張る。
最初に行うのは、素材となる木材を加工する工程だ。
木は北米や欧州からの輸入品が多く、種類によって音質が異なる。
ギターのどの部位にどの材を使うかは、出したい音によって異なり、ときには数種類の材木を重ね合わせた合板を使う場合も。
合板に熱を加えながらカーブした形状に加工する技術は、
同社が先駆けとなって編み出したのだという。
プロの音楽家を納得させる音質への追求に妥協はない。
自社ブランドの一つ「ROZEO」のブランド責任者である樋口恭大さん(35)によると、ボディーの大きさやネックの長さだけでなく、板材の組みあわせや厚みなどさまざまな条件によって、表現できる音が微妙に違ってくる。
「ミリ単位での調整を重ねること
で、ROZEOのふくよかでハリがある音質が実現できるんです」。
職人同士で議論をぶつけ合うこともしばしばあるのだという。
ボディーやネックなど部位ごとに素材を加工した後、その二つを接着してつなぎ合わせる工程がある。
表面を研磨して十四~十五回にも及ぶ塗装を施していき、フレットやブリッジの取り付けを経て、ようやく一本のギターが完成する。
同社はグレッチやエピフォンなど有名ブランドの受託生産を請け負っており、自社ブランド品も含め、現在はひと月あたり六百五十~七百本のペースで生産する。
寺田章悟社長(64)は言う。
「安いコピー品ではなく“本物”のギターの良さを若者に知ってほしい。
メーカーとしても楽器の裾野を広げるイベントに
協力していくことも大切だ」
安価な外国製品もあふれる昨今。
そんな時代にあらがうかのようにギターに魂を込め続ける職人たちの心意気を見た。
(大野雄一郎)
<寺田楽器> 1916(大正5)年に木工所として名古屋市昭和区に創業。
当初はバイオリン製造を手掛けた。
31年にギター製造を開始。
フォークソングが流行し始めた64年に生産強化のため蟹江工場を立ち上げた。
現在は有名ブランドの受託生産のほか、自社ブランド製品も手掛ける
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