v11.0
- ID:
- 37795
- 年:
- 2017
- 月日:
- 0304
- 見出し:
- 100年、200年先見据え選木 秩父の栃本市有林で
- 新聞名:
- 東京新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201703/CK2017030402000154.html
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
百年後を見据えて優れた木を選び抜く「選木」の作業が、秩父市大滝の栃本市有林であった。
市のほか、県、国、製材会社の担当者ら約三十人が奥秩父の山林を歩き回り、樹木の形や枝ぶりをチェックした。
後世の神社仏閣や文化財の維持のため必要な素材を確保するのが目的だが、一世紀もの年月
を目標とした選木は県内で初めてという。
(出来田敬司)
「根元が少し曲がっている。
ただ途中から上はいいので残すことにしましょうか」
林業の専門家三人が木に手を当てて状態を確かめる。
残すと決めた木の幹には黄色いビニールテープを巻いていく。
作業は休憩を挟んで四時間ほど続いた。
この日の作業は五ヘクタール分で、あと十回以上は必要という
秩父市中心部から西へ約二十キロ。
秩父の最奥部、栃本集落のそばの山地に六十三ヘクタールの市有林が広がる。
全体の九割以上がスギとヒノキで、ほかにサワラやカラマツなど。
スギとヒノキは樹齢九十五~百年だ
選木のポイントは、幹が真っすぐで大きくねじれていない▽くされや傷がない▽幹の片側に枝が集中する「片枝」ではない▽大きな枝までの高さが六メートル以上ある-など。
製材会社の担当者は「百年後にどのような木になるかをイメージすることが大切」と述べた
栃本市有林は、樹齢の高い木がまとまって生育する県内唯一の人工林だ。
ただ樹齢九十~百年の木は一ヘクタール当たり五百八十~八百五十本で、適正とされる四百本を大幅に上回る。
樹高の割に細い木が多く、風や雪で倒れたり折れたりする可能性もある
神社仏閣の建築や文化財の補修には樹齢二百年以上の木が必要だ。
清水寺(京都府)や出雲大社(島根県)は数十年ごとに部分補修があり、二百~三百年に一度は大規模な改修が欠かせない。
秩父地域では年間三百件を超える祭事があり、山車の維持にも不可欠だ
市が森づくりを目指す理由はほかにもある。
私有林で二百年の木を育てようとすれば、六、七世代にわたる管理が求められるが、山間地は急激に人口減少が進んでいる。
公有林で材を確保しなければ、木の文化が途絶えることになりかねない
市環境部の宮崎達也技監は「将来的に木の供給は危ぶまれており、栃本市有林を育てることが大切だ。
ゆくゆくは市民に選木をお願いするなどして、低迷する林業にも目を向けてもらいたい」と話している
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