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ID:
34467
年:
2015
月日:
1214
見出し:
『木工藝 清雅を標に』 須田賢司著
新聞名:
読売新聞
元UR(アドレス):
http://www.yomiuri.co.jp/life/book/review/20151207-OYT8T50091.html
写真:
【写真】
記事
人に、物に歴史あり 幸田露伴は子ども向けの読み物『文明の庫くら』で、いかなる物も突然に生まれた訳ではなく、全ての物には長い歴史があり、人は物を作って生き、作った物で人は生きる、と述べている。
本書を読むと、この露伴の言葉を実感する。 本書の前半は、木工家である著者の作品と、自身が収蔵している木工藝の品々がカラー写真と解説で紹介されている。
副題通り、著者が清く雅みやびな作品を目指し、制作していることはわかるし、収蔵の工藝品も清雅な作品なのもよく理解できる。
その上、現在でも一人の手でこれほどの工藝品が作ら れている事実に驚く。
さらに驚くのは後半に書かれた〈日本木工小史〉。
今まで綴つづられていなかった木工技術史である。 木工には三つの技法がある。
石器時代から木材を石器で切り、彫りこむ技法を刳物くりものという。
次に鉄器が現れ、木材を挽ひく技術が誕生。
これは挽物ひきものという技法。
挽物は弥生時代後期に始まるようだが、確かではない。
続いて轆轤ろくろが生まれ、簡単な旋盤も作られ、『続日本紀』に記された 百万塔は挽物の技法による成果となった。 そして最後の技法が指物さしもの。
棒状の木材に別の木材を指し込み、組み合わせて器物を作る。
この技法で箱などの立体的な物が生まれ、一気に木工藝は隆盛を見る。
正倉院の宝物である厨子ずしなども指物の技法なしでは生まれなかった。 今ではどこにでもある箪笥たんすや机、椅子などの家具も指物技法なしでは作れない。
指物を作る職人は指物師。
著者の祖父も父も指物師で、特に祖父は明治大正期の名人の弟子だった。
そしてその名人もまた、明治期に博覧会と輸出品で名を上げた名人に学んだ。
正まさに作った物で人は生き、人にも 物にも連綿たる歴史がある。 それだけに著者は、研究者と実作者が共に木工史を研究する機会が必要だと繰り返し語る。 著者は毎年、正倉院展に通っては研究し、必要から今は金具造りも行う。
温故知新、日々精進という言葉を今に蘇よみがえらせてくれる一冊だ ◇すだ・けんじ=1954年、東京生まれ。
木工芸作家。
昨年、重要無形文化財「木工芸」保持者に認定される fff:
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創業1911年
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