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- ID:
- 34041
- 年:
- 2015
- 月日:
- 1019
- 見出し:
- 木材自給率回復/林業再生へ新需要の開拓を
- 新聞名:
- 河北新報
- 元UR(アドレス):
- http://www.kahoku.co.jp/editorial/20151019_01.html
- 写真:
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- 記事
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まだ低いものの、再生の歩みを物語る数字ではないか
林野庁が発表した2014年の木材自給率である。
国内の木材供給量のうち国産材が占める割合を示す。
02年には18.8%にまで落ち込んだその数字が31.2%と、実に26年ぶりに30%台を回復した
円安に伴う輸入材の価格上昇で国産材の需要が多少増えたことに加え、近年急速に伸びる木質バイオマス発電向けの燃料用チップを統計に算入したことが、その要因だ
わずかな増加ながら国産材への回帰と、新規の需要が自給率を押し上げた形だ
この自給率30%回復を大きなステップと捉え、新たな需要の開拓に向け政府、自治体、地域が連携して取り組み、森林と林業・木材産業の再生を図らなければならない
戦後の拡大造林で植えたスギ中心の人工林が伐採期を迎えている。
木を切って利用するとともに、新たに植林しなければ、災害にも直結する山の荒廃はさらに深刻化する
いまが、そうした危機の克服につながる「木の文化」復権の、いわば最後の機会であることを肝に銘じたい
こうした現実を踏まえ政府は、20年までに自給率を50%に引き上げる目標を掲げる
その柱に据えるのが、直交集成板(CLT)と呼ばれる建材の生産だ。
繊維方向が直角に交わるよう板を互い違いに接着し、何層も重ねた大きなパネル状の集成材である
頑丈で、断熱、耐火性にも優れ、床や天井、壁材として柱代わりにも使えるという
最大の特長は中高層の木造建築が可能になることだ。
先進地の欧州では9階建ての集合住宅や事務所ビルが建つ。
国内でも一戸建て住宅ではなく、同様な用途の3~5階の中層建築での普及を目指す
実証的な建築事例が積み重ねられており、14年度は福島を含む5道県で計8棟が造られノウハウの蓄積が進む。
来年度には建築基準ができ、普及の段階を迎える運びだ
需要を開拓する上で課題となるのは、やはりコストだ
林野庁は24年度までに生産能力を欧州の生産量と同じ年間50万立方メートルに増やす計画。
その暁には現在の半分程度、鉄筋コンクリート構造並みのコストが実現すると見込む
加えて、低コスト化を図る上で不可欠なのは、地域における面的な取り組みだ
スギなら良質材は柱、はりに、中質材をCLTに回し、その残材や低質材はバイオマス発電燃料とする仕組みができれば木を無駄なく使える
こうした効率的な伐採に加え、森林にも消費地にも近い適地にCLT加工場を建て、エネルギーの地産地消につなげるバイオマス発電所を備える。
そうした林業・木材産業の集積を図ることが必要だ
道は険しくとも、その実現に向け、地域は合意形成を通じ一丸となって取り組みたい。
むろん、行政の強力な財政支援と協力は欠かせない
林業・木材産業の再生は中山間地に雇用を生み、地方創生の核となる。
同時に、森林の再生は里山の豊かな生態系をよみがえらせ、国土保全と共に、二酸化炭素吸収といった多面的機能の維持につながることを忘れてはならない
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