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- ID:
- 32860
- 年:
- 2015
- 月日:
- 0407
- 見出し:
- 「木と対話」創作の源 彫刻「平櫛田中賞」
- 新聞名:
- 読売新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.yomiuri.co.jp/local/aichi/news/20150406-OYTNT50085.html
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- 【写真】
- 記事
-
近代彫刻界に足跡を残した平櫛田中ひらくしでんちゅう(1872~1979年)にちなみ、優れた彫刻家に贈られる「第27回平櫛田中賞」(主管・岡山県井原市)に、名古屋市中村区の黒蕨壮くろわらびそうさん(64)が選ばれた。
9月に東京で授賞式が行われる予定で、黒蕨さんに受賞の喜びの声を聞いた。
(竹本吉弘)
「愛知県在住者では初の受賞です」と素直に喜びを表す。
腕や衣服などのモチーフで知られ、「人間と彫刻の関係を真摯しんしに追求した」と評価された。
鹿児島県阿久根市の出身。
小学3年生の頃から版画用の彫刻刀で身近にあったクスノキにタカなどを彫っており、高校時代には作品を見た教師に「彫刻家になれ」と言われたことも
高校卒業後、名古屋のコンピューター専門学校を経てコンピューター会社に就職。
金融機関の電算業務を担当し2交代勤務のため、夜勤の時、時間の空いた日中、木彫に打ち込んだ
転機は26歳の時。
課長代理となり、夜勤がなくなり木彫に集中できる時間がなくなった。
独学ながら個展を開くまでになっていた黒蕨さんは「会社を辞めようと思う」と妻の孝子さん(68)に相談。
背中を押され、アルバイトをしながらの彫刻家人生が始まった。
道ばたに落ちていた手袋を木に彫り、脱ぎ捨てられたジーンズもモチーフとなった。
使い捨てられたものに対する愛着が、創作意欲を突き動かした。
1988年の現代日本木刻フェスティバル(ぎふ中部未来博、岐阜県関市)では大賞を受賞。
その時の招待作家の何人かは「平櫛田中賞」を受賞しており、「自分
もいつかは」の思いを強くした。
黒蕨さんの木彫は、木と対話することから始まる。
「木にも人生がある。
赤土で育ったクスノキはピンク色で香りはやや強い。
干ばつ、水害、全て年輪に表れる。
素材と対話し、その木の人格を生かしてあげることが大事」と話す
いま朝9時から夕方5時まで木に向かい、第2、第4日曜日は木彫教室を開く。
「これからも木との対話を深め、好きなものを彫り続けたい」と笑顔を見せた
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