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- ID:
- 32079
- 年:
- 2014
- 月日:
- 1219
- 見出し:
- 生きている木との触れ合い
- 新聞名:
- 朝日新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW20141219011320001.html
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
フリーランス記者 平田剛士
陽光まぶしい新雪の森に来ている。
これから本物のクリスマスツリーを伐採するのだ
ここは、旭川市と比布町の境界上に横たわる突哨山(とっしょうざん)。
登山口とピーク(標高243メートル)の高低差が100メートルに満たない可愛らしい山だが、手入れの行き届いた遊歩道を数分も進めば、前後左右に深い森がどこまでも広がって見える。
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「この木の名前が分かります? 北海道産のモミの木、トドマツです。
今日はこの森の主役になる木を選んで、それとぶつかっている木を切る『間伐』をします」
良く通る声でレクチャーするのは、NPO法人もりねっと北海道(旭川市)の清水省吾さん(28)。
突哨山は両自治体が所有する「都市緑地」で、2009年から同法人が管理を担っている。
「間伐体験/クリスマスツリーのおすそわけ」は、この時期恒例の人気イベントだ
小学生から年配者まで、ヘルメット姿の参加者約20人は2班に分かれて林道から森の中へ。
35年ほど前に植林されたというトドマツがきれいに整列している。
「さあ、どれを切りましょう。
選び切れない? ではまず空を見上げて」と、同法人理事の山本牧さん(59)が助け舟を出してくれる。
「ほら、枝が重なって天井みたいに塞がっていますよね。
そこに穴を開けましょう。
間伐で暗い森に日光を通すと、森が変わります」
切るべき木の幹に目印のテープを巻き付けたところで、1本ずつ倒しにかかる。
樹高は約18メートル。
周囲を見渡してなるべくスムーズに伐倒(ばっとう)できる方向を見定め、幹の根元のそちら向きの面に「受け口」と呼ぶL字の切り欠きを入れたら、逆方向からノコギリを進める。
直径20センチに満たないとはいえ、「きこり見習い」たちには大木だ。
汗をかきかき残り数ミリの深さに達したら、最後は力任せに幹を押し倒す。
ベキベキという大きな音に続いて、頭上から大量の雪が落ちてきた。
真っ白になったお互いの姿に、全員が大笑いする。
きれいな三角錐(すい)にかたどられたトドマツの頭頂部は、絵本のクリスマスツリーそっくり――おっと、こちらが本物か
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旭川市内の森真利さん(44)は2年続けての参加だという。
「去年、大きなツリーをマンションに飾ったんです。
生きている木ならではのエネルギー感がすごかった」。
娘の七海さん(7)、母の古田清江さん(76)と一緒に今回もお気に入りの1本をゲットした。
「街と森が近接する旭川で、このイベントを冬の風物詩に育てたい」と山本理事。
どの山の木も勝手には切れないが、森作りをNPOが担う突哨山なら大勢の市民が楽しく安全に山仕事に関われる。
魅力あふれる山と人々に出会って、一足早くプレゼントをもらった気分になった
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