v11.0
- ID:
- 30406
- 年:
- 2014
- 月日:
- 0513
- 見出し:
- 壊れては復活20回(未来への百景)
木津川の流れ橋(京都府南部)
- 新聞名:
- ---
- 元UR(アドレス):
- http://www.nikkei.com/article/DGXNASJB0103J_S4A500C1AA1P00/
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
流されては直し、また流されて直す。
61年間で20回。
京都府南部の木津川にかかる上津屋橋(こうづやばし)は壊れることを前提につくられた木製の「流れ橋」だ。
2011年から3年連続で流出した。
この間に通行できた期間は半分にすぎない
通行可能になった上津屋橋。
地元住民や観光客らが木製の橋上を行き交う
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通行可能になった上津屋橋。
地元住民や観光客らが木製の橋上を行き交う
「府道八幡城陽線、通行止めを解除します」。
4月23日、京都府の山城北土木事務所の職員が宣言すると、渡り初めに集まった人々から拍手と「おめでとう」の声がわき起こった。
昨年9月の台風18号で広い河原が橋板の2メートル上まで水につかった。
この時の流出から7カ月ぶりの開通だ
八幡市と久御山町の両岸から合わせて50人が散歩を楽しんだ。
娘と孫娘を連れてきた70代の男性は30年間、橋の写真を撮りためてきた。
「家族を撮るのと同じ気持ち。
橋板が外れている間は橋が泣いているように見えた」と話す
橋は対岸に向かって真っすぐに延びる木の一本道だ。
所々が新しい木材で補強され、木のにおいがする。
歩くと上下に小さく振動する。
人を渡す機能を取り戻した橋が鼓動しているようでもある。
建設された1953年当時、資材調達が難しかったためコンクリート製ではなく、木製の流れ橋の構造が採用された。
長さは356.5メートル。
両岸の間に柄のないフォークのような橋脚が74基突き刺さり、その上に橋板75枚が1列に並ぶ。
橋板は戸板のようなつくりで幅3.3メートル、長さは4.5~6.5メートルある。
水かさが増すと、載せられただけの橋板が水に浮いて流される。
抵抗を減らして橋脚のダメージを抑える。
橋板はワイヤで橋脚につながれていて、水が減れば回収して使う仕組みだ。
今回の改修費は3600万円。
国と京都府が負担した。
3年連続の改修に「無駄遣い」との批判もある。
ただ、風情のある流れ橋の存続を望む声は強い。
近くで「流橋焼(りゅうきょうやき)」の陶芸工房を構える松田一男さん(58)は「復旧する様子は橋が生き返っていくようだった」という。
かつては時代劇の撮影などによく使われ、俳優の藤田まことは「流れ橋」の石碑を建てた。
八幡市の堀口文昭市長は「自然とほどよく付き合うという昔の人の知恵を再現した遺産」と強調する。
壊れることを前提につくる謙虚さがある限り、「想定外」の事態は起きない。
この橋は流されることで自然の脅威を思い起こさせ、再生することで人々を勇気づける
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