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- ID:
- 29394
- 年:
- 2014
- 月日:
- 0105
- 見出し:
- 木材と文明 ヨアヒム・ラートカウ著 森林を活用する人類の歩み
- 新聞名:
- 日本経済新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.nikkei.com/article/DGXDZO64874540U4A100C1MZC001/
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
「現在、木材は、ほぼ二世紀を超える工業化によって放逐された日陰者の存在から再び抜け出しました。
環境と経済の両面で幾つかの発展の筋書きが結び合い、そして、森や木材は再び政治の対象に、大きなテーマになっています」。
木材製品の多様性への評価、木材不足への恐れ、そして環境保護へ
の強力なシグナル
(山縣光晶訳、築地書館・3200円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
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(山縣光晶訳、築地書館・3200円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
本書のメッセージは、ここに集約されている。
その昔、森と木材に照明があたっていたころ、その役割は想像をこえて大きかった。
住居や道具、坑木や船舶の用材として。
あるいは、燃料としてであれば、家庭用はもとより、製鉄や製塩のために、そして製パンからガラス・陶器にむけて薪や炭を提供した。
木材の
故郷である森林は、ドングリとして家畜に飼料をあたえ、あるいはタンニンとして薬品を。
工業資材としてならば、紙パルプの原材料にも姿をかえる。
これほどに万能・万端だっただけに、農民と領主、市民社会と官僚組織とのあいだで、所有と用益をめぐるきわどいせめぎあいもあった。
しかし、「木の時代」である18世紀が過ぎると、「鉄の時代」「石油の時代」へ。
こうして、木材はいったんは日陰者の地位に追いやられる。
けれども、2世紀ののち筋書きは一
転した。
経済調整と環境保全という最大の問題領域にあって、森と木材は最重要の「自然原材料」とみなされるほどに
ドイツをおもな素材として、そのいきさつを諄々(じゅんじゅん)とたどる。
じつに説得的である。
ほんの一例だけひろっておきたい。
わずか十数ページだが、目から鱗(うろこ)のテーマ。
筏(いかだ)の効用である。
河川を利用した貿易の起源であり、鉄道による交通革命にも比することができると。
なにせ、運搬用
の土台と運搬される貨物とが一体化した優れものなのだから
森林と木材には、人類の文明史がたっぷりと積みこまれている。
いったん退場したかにみえるこの主役を、いまどのように評価しなおすか。
わくわくするような問題を提示してくれる数百ページ。
それにしても、あらためての感慨。
ヨーロッパとは、石の文明であるとともに、木の文明なのだと
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