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- ID:
- 26751
- 年:
- 2013
- 月日:
- 0205
- 見出し:
- 人・あきた:なまはげ面彫り師・石川千秋さん
- 新聞名:
- 毎日新聞
- 元UR(アドレス):
- http://mainichi.jp/area/akita/news/20130204ddlk05070002000c.html
- 写真:
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- 記事
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「怖さ」「奇麗さ」を追求
男鹿に伝わる民俗行事なまはげ。
その荒々しい形相の面を彫り続けて四半世紀が過ぎた。
父泰行さん(88)の跡を継ぎ、2代目なまはげ面彫り師として伝統の技を伝えている。
初代の泰行さんが面を作り始めたのは1960年ごろ。
出稼ぎに行かない期間に、入道崎などの観光地でなまはげ姿となり観光客と一緒に写真を撮って販売する商売を考え、自分で装束をこしらえたことが始まりだった。
なまはげ行事で使われる面は色も形も集落ごとに少しずつ違うが、泰行さんは独自に新
たな面のデザインを考え出した。
千秋さんが初めて面作りに関わったのは23歳。
当時は東京で働いていたが、面の注文が相次ぐようになったため、家に戻って手伝った。
一時は面作りを離れたが、30歳を過ぎた頃に本格的に制作を始めた。
幼い頃から自宅にはなまはげの面や道具があったが、作業場には「危ないから」と入れてもらえな
かった。
制作を始めてからも、直接父から作り方を教わったのは仕上げの作業の数回だけ。
父の作業の様子と完成した面を見ながら試行錯誤を重ねた。
一つの面を作るには、木を乾燥させる時間を含め1カ月かかる。
キリの丸太を半分に割った木材を原料に、7種ののみと小刀で表情を彫り出していく。
面は「怖さ」と「奇麗さ」を両立させることにこだわる。
すごみを帯びた表情は繊細なのみ遣いが命だ
最近では県外の幼稚園などからの注文もある。
「悪い子はいねえが」と小さい子供を戒めるなまはげ行事のように使われているといい「教育で大いに役立ててもらいたい」と喜ぶ。
昨年8月には東日本大震災の津波被害を受けた岩手県野田村に、同村に伝わる民俗行事「なもみ」に使う面を作って寄贈した。
「
なもみ」はなまはげと似た行事だが、面が津波で流失し、行事の存続が危ぶまれる事態となっていたためだ
なまはげも継承の危機にある。
地元に残る若者は少なく、なまはげは成り手不足。
受け入れ側も子供のいる家庭が減り、行事を取りやめた集落もある。
「(若者の流出は)仕事がないから仕方がない。
しかし、なまはげは存続させなければ。
今後が心配だ」と思う。
なまはげは09年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産の候補に挙がった。
「なまはげが認められるようになってきた」と感じる。
「怖い面とは何たるかということをこれからも追求していきたい」と意気込む
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