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- ID:
- 29010
- 年:
- 2013
- 月日:
- 1113
- 見出し:
- 匠の末裔:石川モノづくり事情 木のバッグ 木工芸製造・販売会社「谷口」 /石川
- 新聞名:
- 毎日
- 元UR(アドレス):
- http://mainichi.jp/area/ishikawa/news/20131113ddlk17040533000c.html
- 写真:
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- 記事
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顧客意識、伝統工芸守る。
ポスターのように丸められた、表面に木目の浮かぶシートを広げると、優しい木の香りがふんわりと漂う。
シートの薄さは0・12〜0・18ミリ。
新聞紙や薄削りのかつお節ほどしかないが、木材だ。
カキノキ科の広葉樹「クロガキ」特有の焦げ茶色の木目が美しい。
「シートを曲げても折れないようにするために
は、ざっと10年はかかりましたね」。
苦笑する木工芸製造・販売会社「谷口」(金沢市)の谷口正晴社長(62)の表情には、個性ある製品を作り出した自負がにじんだ
能登の木工芸の伝統を受け継ぐ同社は1947年創業。
碁盤や碁石を入れる器、小型のタンスなどの木工芸品を製造してきた。
木地師の修業を積んで谷口社長は89年に就任。
当時はバブル景気の時期で、多少は需要も増えた。
だが、人の暮らしの多様化が進む中で、碁盤など伝統的な製品だけでは
、やがて限界が来ると感じていた。
そこで見直したのが、ベニヤ板の生産などで蓄積していた木を薄く削る技術。
まずは電気スタンドの傘などに用いてみた。
90年代後半、さらに薄くシート状にした木材を、ハンドバッグなど身の回りの小物の表面に張り付け、木目の美しさを生かす新しい製品を作ろうと思い立った。
原料に特に柔軟な木を選び、高温下で作業することできれいに削り出す手法を考案。
曲げへの強度を持たせるため、裏面に牛革などを張り合わせるなど研究を重ね、09年に「木のシート」を完成させた。
折り曲げたり、ミシンで縫い合わせたりすることができる。
谷口社長は「素材としての木の可能性が一
気に広がった」と話す。
現在は、木のシートを使ったカバンや雑貨など一連の製品を「BOIS(ボイス)」というブランド名で展開している。
製品は主に全国の百貨店に並ぶ。
谷口社長は繰り返し各店に足を運び、客と直接、話をすることを心がけている。
技法を凝らした製品を知ってもらうという狙いに加え、自らも含めた伝統工芸の産品の生産者には「客の要望に沿った製品を提供する」という顧客意識が薄いように思えるため、という
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