川嶋 海外では木製じゃないといけないと決まっていて、その市場も産業もある。
なのに日本ではなんでアルミばかりなのかが不思議です
高橋 アルミサッシが出る前の時代、うちの親父が創業したころの建具屋は、大工さんが作った枠に雨戸とかガラス戸とかを作って入れたわけです。
でもそれでは雨や雪が入ってくるし、寒いんですね
そこで高度成長とともに、アルミメーカーが気密性の高いアルミサッシを規格化して出してきた。
アルミサッシの出始めは、建具屋さんが供給されたアルミサッシの部材を組んではめ込んでいたそうです。
うちの親父はやっていませんが
川嶋 住宅の工業化が進む中、アルミサッシ業界も大きなところ3つくらいの寡占状態になった。
そんなこともあって木製サッシはなかなか登場しなかったのかもしれませんね
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目利きも唸る仕上がりは、建具屋として培った木工技術の賜
高橋 木製サッシのことを知ったころは、まだ公共事業の仕事が多くて忙しかったんです。
作りたいと思いながらタイミングをうかがっていました。
川嶋 そのチャンスが訪れたのが2000年なんですね
高橋 はい、中小企業経営革新補助事業に採択されたのがきっかけです。
国と県から計画支援の補助事業に採択されて、木製サッシの性能試験を受けました。
数多くの種類がある木製サッシ加工用の刃物
そのときにドイツから木製サッシ用の機械や刃物などを購入しました。
既存の木工建具の機械でもできないことはないんですが、水溜りができないように加工したり、一発でしっかり組み上げるようなところがうまくいかないんですね
使う部材も大きくなりますし、ちゃんとした機械を使って最初からしっかりしたものを提供していかないとお客さんに認められませんから、思い切って
川嶋 滑り出しはどうでしたか
高橋 最初はなかなか売れませんでした。
いざ作って試験を受けると、フィックス(はめ殺し)でさえ水漏れが起きることが分かったりしまして。
隙間はないはずなのに、気圧をかける試験をすると水が溢れたりするんです
そういう課題を一つひとつクリアしていきました。
そのうちタイミングよく建築家の内藤廣先生の物件に使っていただけた。
それは2001年のことです
2000年に木製サッシを作り始めたとき、雑誌「新建築」編集長の橋本(純)さんが増築されたんですね、そこに3カ所くらい木製窓を使ったんですが、その時の設計が内藤廣先生だったんです
内藤先生や橋本さんとは初対面でしたが、橋本さんの増築を受注したのが山形の升川建設の東京支店で、たまたまそこにいた私の友人が、お前のところで木製サッシを始めたそうじゃないかと声をかけてくれて
川嶋 木製サッシでは北海道にライバルがいましたよね
高橋 ええ。
両方を見てアルスのほうがいいと選んでくださったんです。
内藤先生は木製サッシを頻繁に使っている方なんですけれど、仕上げとコストの両面で評価していただきました。
そんなご縁で内藤先生が設計した栃木県益子町のフォレスト益子という施設の施工などにも関わらせていただきました。
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熟練した職人がアルスの強み
川嶋 他社と比べてどのあたりが違うのか。
そして、どうしてそういう技術が磨かれるんでしょうか
高橋 木工技術の精度ですかね。
ウチの一番のベテランは建具屋の時代からもう45年やってますから、要は木の扱いが違うんです。
それに、建具を作っていたときから、ほかの仕事仲間には負けたくない、一番上でいたいと思ってやってきました。
考え方なんかも含めてですが、何より技術では負けないという思いと、そしてプライドもあった。
東北の建具展なんかに出品して入賞したりもしてましたし。
繊細な作業は得意なわけです
川嶋 お父さんの時代から積み上げてきた、建具屋さんとしての技術の高さということですね
熱貫流率「1」を切る品質。
高断熱の外壁と合わせれば無暖房住宅も
川嶋 木製サッシメーカーとして、御社の技術力は日本一と言っていいわけですね
高橋 品質には全般に自信を持っていますが、特に断熱性で言えばそうですね。
3月の金山杉サミット(PDF)に持っていった3重窓なんかは自信作です。
熱貫流率が1w/m2Kを切りましたから。
具体的にはU=0.94w/m2K*1です(U:熱貫流率)
*1熱貫流率(U値)とは、ガラスの内外の温度差が1度の場合、1時間あたりガラス1m2 を通過する熱量をワットで表したもの。
数値が小さいほど断熱性に優れていることを表す。
単位は「W/m2K(ワット・パー・平米・ケルビン)
川嶋 何か特殊な加工がしてあるんですか
高橋 ガラスの内側にアルゴンガスとダブルローイー(low-E*2:低放射)フィルムが入っています。
そうしないと1は切れません
*2Emissivity(放射率)
川嶋 熱貫流率が1を切るというのはどういうことなんでしょう。
高橋 断熱性能で言えば通常のアルミサッシの3~4倍くらい、熱貫流率は2重窓アルミサッシの3分の1くらいです
ちなみに外壁の熱抵抗値は、200ミリ断熱(一般的な住宅の外壁の断熱材の厚さの2倍)で窓の10倍くらいあります。
つまり、熱を逃がすという意味で窓は家の一番の弱点なんですね。
ドイツのパッシブハウス用のサッシなんか、熱貫流率で言うと0.7くらいが当たり前です
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川嶋 どうしてそんなに低くなるんですか
ドイツ製の機械で加工された窓枠
高橋 作り方が違うんです。
木と木の間に断熱材をはめ込んだりします。
あちらではガラスも熱貫流率0.5のスーパーガラスなんてのがある。
ちょっと胡散臭いんですが(笑)
熱貫流率で国内トップなのは0.8を切る飯田ウッドワークシステムでしょう。
あちらはフレームにもいろいろ工夫されていると思います
川嶋 ドイツのように断熱材や発泡スチロールを入れたり
高橋 かもしれません。
何かしら加えないと出ない数字だと思います。
ウチは木とガラス、そのままの素材ですが、それはコストと健康上の問題を考え合わせてのことです
川嶋 ガラス自体の性能で言うと、日本はまだ遅れているんでしょうか
高橋 いや、ガラスメーカーとして旭硝子は世界一ですし、日本板硝子は3番目です。
技術に遜色はないんですが、最近まで建築分野に断熱用のガラスを持ってきていなかったんです
そもそもアルミサッシじゃ断熱性もへったくれもありませんからね。
ガラスに手をかけても意味がないわけですよ
川嶋 なるほど。
アルミから熱が逃げるから2重窓も3重窓も意味がないわけだ
高橋 そうなんです。
ようやくメーカーがいろんなガラスを用意してきて、トリプルガラスにも対応するようになってきました。
例えば、外壁を200ミリ断熱にしてウチが作ってるようなサッシをつけて、換気にも気をつかえば、東京あたりなら無暖房住宅だってできますよ
川嶋 車に乗るのをやめるとかではなくて、それこそが本当のエコですよね
変化しつつある住宅に対する意識。
今後の課題は規格化、量産化
川嶋 これからの課題は何でしょう。
高橋 やはり価格ですね。
今はすべてオーダーで作っていますので、アルミサッシの3~5倍です。
建築界の方々に話を聞くと、アルミサッシの1.5倍まで下がればどんどん使えるねと言われます
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