v11.0
- ID:
- [ 2013/03/09 土曜日 15:39 建築・土木 ]
27086
- 年:
- 2013
- 月日:
- 0311
- 見出し:
- 東日本大震災2年 出雲と岩手、縁結ぶ松材
- 新聞名:
- 読売新聞
- 元UR(アドレス):
- http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shimane/news/20130310-OYT8T01020.htm
- 写真:
- 【写真】
- 記事
-
60年に1度の大改修「平成の大遷宮」が進む出雲大社(出雲市)で、本殿の部材に、東日本大震災を乗り越えた岩手県産の2本の松材が使われている。
釜石市の山林で切り出され、大船渡市の工場に保管されていた時に震災が起きた。
壊滅的な状況の中で、同市の製材業者が懸命に製材し、納期に
間に合わせた部材だ。
(佐藤祐理)
大改修では、本殿に上る階段の庇(ひさし)部分「階隠」で予想外に部材が傷んでおり、急きょ、化粧棟木を修理、交換することになった。
長さ約5メートルの良質な松材が2本必要。
他の工程にも影響する部材のため、工事を施工管理する建設会社「清水建設」(東京都)が2011年初め、奈良県下市町の材木商「吉野銘木製造販売」に大急ぎで調達を依頼した。
社寺などに用いられる良質な松材があるのは東北などに限られる。
吉野銘木製造販売の営業課長、澤田常夫さん(49)は「3月半ばまでに間に合わせてほしい」と、以前に千木の松材を頼んだことのある大船渡市の製材業「鹿児島屋」に注文した。
鹿児島屋の工場には、釜石市の山林で伐採した樹齢約300年の松が丸太のまま保管されていた。
社長の及川喜久平さん(67)は、この松を製材して送ろうと考えていた。
ところが3月11日、震災が発生。
大船渡市は大津波に襲われ、街は壊滅状態になった。
◇
電話がつながらない中、澤田さんらは気をもんだ。
しかし、約2週間後、及川さんから吉野銘木製造販売に「松材は無事です」と電話が入った。
松を保管する工場は5年前に高台に新設していたため、津波を免れていた。
しかし、被災地は電気もつかず、道路が寸断されていた。
「これから自家発電機を借りてきて松材を製材する。
納期までに必ず届ける」。
及川さんは澤田さんに伝えた。
及川さんは母親を津波で失っていた。
それでも、約束を守ろうと製材を急いだ。
停電したままの工場で、秋田県のリース会社から借りた自家発電機を使って従業員たちと作業。
整えた松材は、宮城県内の運送会社に配送を頼んだ
◇
間もなく、大船渡から松材を載せたトラックが奈良に到着。
迎えた澤田さんは「感無量」と感じ入った。
積み替えて出雲大社に到着したのは、納期ギリギリの3月31日だった。
改修工事は今月で終わり、5月に本殿遷座祭を迎える。
澤田さんは「山から切り出す人、運ぶ人、大勢の人に助けられてここまで来た」と振り返る。
清水建設の工事長、金久保仁さん(55)は「出雲大社は縁結びの神様。
材料のご縁を運んでもらった気がする。
日本を代表する神社の本殿に使われたことで
、被災地の希望にもなれば」と話す
先月7日、金久保さんと澤田さんは、大船渡市の鹿児島屋を訪れた。
及川さんに直接、感謝の気持ちを伝えた。
及川さんは「関係者に待ってもらってお役に立つことができ、言葉にならないほど感謝している。
出雲大社の神様や亡くなった母に見守られていたような気がする」と話している
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